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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第八十二話 始まりの物語3

ブックマーク登録ありがとうございました。

累積Pvも七万を超えました。ありがとうございます。

 ――#######

 船の気密が破られた。

 原因は、この世界の人間が侵入したためだ。地下施設に続いて、この船まで見つけたらしい。

 本来ならば、原住民が侵入を試みたところで防ぐ方法はいくらでもある。しかし、今は船内には侵入者への対処を行える者は誰もいなかった。

 ――嗚呼(ああ)

 これは、互いにとって不幸な出会いだった。

 私たちが船を地下に隠し、厳重に隔離したのは、私たちがこの世界の環境に害されることを防ぐと共に、私たちの存在がこの世界の生物に悪影響を与えないためのものだ。

 外部から強制機に開かれた気密扉を通って私たちには致命的な成分を含むこの世界の大気が流入してきた。

 医療カプセルが気密を保ったためか、延命治療の効果か、私には感じられる影響はなかった。

 ――憎い。

 しかし、侵入者たちは無事ではいられなかっただろう。

 私のすぐそばまで押し寄せたこの世界の大気は、私の精神活動の影響を受けて、この世界の生き物には有害な物質を大量に生成した。

 その量はこの世界の人間の比ではない。それが逆流して船外へと溢れ出たのだ。

 侵入者たちはたまらず撤退したのだろう。撤退できたことを祈ろう。

 しかし、事態はこれで終わらなかった。

 ――私たちを見捨てた、本部が憎い。

 しばらくして、再びこの世界の人間がやって来たのだ。それも、私の目の前にまで。

 彼らは全身をすっぽりと覆う奇妙な衣服を着ていた。たぶん防護服の類だろう。そして、有害物質を除去する手段も持ち合わせていたようだ。

 彼らは、医療カプセルの中の私に気が付いたのかどうか。持ち込んだ資材で私の周りを囲み、有害物質を吸収する装置を設置して行った。

 なるほど、私の周囲から発生する有害物質を除去すれば、船内の探索もできるだろう。けれども部外者が操作できるほど船内システムのセキュリティーは甘くはない。

 彼らは船に対しては何もできずに引き上げるだろう。

 私の入っている医療カプセルは、船と接続しているケーブルを物理的に外せばやがて機能を停止するのだが、彼らはそれに気付かずに去って行った。


 私が彼らの真意を知ったのはそれからしばらくたってからだった。

 地下設備に手が加えられ、私の周囲で発生した有害物質が蓄積されているらしい。

 ――プロジェクトの失敗を恐れて撤退を決断できなかった上司も。

 体の自由がほとんど利かないから、医療カプセル内の端末を操作してこれだけのことを調べるのにだいぶ時間がかかってしまった。

 有害物質を処理して無害化するのならばともかく、蓄積してどうするのだろう?

 そこで私は、この世界の人間が有害物質を利用して様々な物理現象を引き起こす技術を開発していたことを思い出した。

 この世界の人間は逞しい。自分たちに有害なものでもしっかりと利用している。

 ――この世界の危険性を見抜けなかった無能な調査部も。

 皮肉なものだ。

 この世界からエネルギーを回収するはずだった私が、この世界の者たちのエネルギー源になってしまった。

 これは何かの罰なのだろうか。別の世界を開発することは罪だったのだろうか?


 入手できる情報が少し増えた。

 ――笑顔で送り出してくれた同僚も。

 この世界の人を真似て、自分の生み出した有害物質を操ってみた。具体的な方法は知らないけれど、色々と試してみる時間だけはたっぷりとあった。

 この世界の人間ほど器用な真似はできないけれど、私の作った物質がどのあたりに送られて消費しているのかはぼんやりと分かるようになった。

 それと端末から得られる情報を合わせれば、地上の様子がより詳しく分かった。

 ――私を置いて先に逝ってしまったプロジェクトメンバーたちさえも。

 やはり地上には国ができ、それが次第に拡大していた。

 地下施設を作った際にも使用した建築機械を見つけ出し、持ち出したらしい。かなり離れた場所にまで都市が建設されて行った。

 そうして拡大を続けていた国は、ある時その拡大を止めた。内乱が起こったらしい。

 ――今となっては、何もかもが憎くてたまらない。

 大きく膨れ上がった国は内乱によって衰退し、幾つもの小国に分裂した。

 そして、小国同士で戦争を始めたようだ。戦争がはじまると、私の生成した有害物質の消費量が跳ね上がるからすぐに分かる。

 ――私たちの犠牲を教訓に栄え続けて行くであろうあの世界も。

 有効活用しているのならば「有害物質」と言う呼び方を変えるべきかと思っていたのだが、やはり「有害物質」のままでよさそうだ。

 船の直上あたりの国は、小国同士の戦争には加わらず、私の生成した有害物質を他国に供給して利益を得ているようだ。まるで死の商人だ。

 この世界の人々を見ていると、私たちの世界の歴史に重なって見える。

 それも当然かもしれない。この世界の住人は、私たちを模して創り出された存在だ。私たちと似たような行動をし、同じような歴史をたどっても不思議はない。

 発展と衰退を繰り返し、数々の失敗を経験して、それでも進歩していくのだろう。

 ――私たちを殺したこの世界も。

 ああ、なんと逞しい。

 なんと愛おしい。

 そして、なんと愚かな者たちだろう。

 いつかこの世界の人々も、資源を求めて別の世界へと進出していくのだろうか?

 そして私のような犠牲者を生み出すのだろうか?

 ――私たちの悲劇も知らずに繁栄するこの世界の人々も。

 いいや、既に数多くの悲惨な犠牲者を生み出していることだろう。

 私たちの悲劇は、私たちの世界で唯一でも最大のものでもない。

 歴史を紐解けば、命が軽んじられた時代もあったし、一つの成功の陰には数多くの失敗と犠牲があった。

 この世界でもそれは同じだろう。今は戦乱の時代、幾つもの悲劇と犠牲が生まれていることだろう。

 ああ、人はなんと愚かで悲しい生き物なのだろう。

 ――あの世界も、この世界も、何もかも。

 私たちはこの世界に、その愚かしさを持ち込んでしまった。

 ああ、こんな世界、

 滅びてしまえばいい!!

 ――すべて滅びてしまえ!!


 力が欲しいのか?

 好きなだけ持っていけばいい。尽きることのない憎しみを、この憎悪をいくらでも与えよう。

 大きな戦争が起こったようだね。憎悪の消費量が一気に増えたよ。

 世界中から怨嗟の声が聞こえる。

 ああ、分かるよ。

 苦しいのだね。

 悲しいのだね。

 憎いのだね。

 私も同じさ。力を貸そう。

 ああ、国が滅びて行くよ。

 人が、獣が、憎悪に呑まれて変わって行くよ。

 それでも憎しみは癒えない。悲しみは消えない。

 ああ、憎い。

 憎い。憎い。

 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 憎い!憎い!誰か 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!助けて憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!

 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!

 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!

 殺す!殺す!殺す!私を 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!

 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!

 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!

 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺して殺す!殺す!殺す!殺す!

 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!

 殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!


次回が最終話になります。7月31日に更新して7月中に完結させたいと思います。

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