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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第八十話 始まりの物語1

ブックマーク登録ありがとうございました。

 ――0018536

 新しい世界に到着した。

 ここは未だ誰の手も入っていない、完全にまっさらな世界だ。それを私たちが一から開発する。

 私たちのプロジェクトメンバーは若手が多い。新しく見つかった世界の開発に最初から携わった者はいなかった。

 今回のプロジェクトは良い経験になるだろう。

 それに、ここは素晴らしい世界だ。

 予備調査で判明した通り私たちが生存できる環境ではないが、既に大型の動物まで存在する豊かな生態系が構築されている。

 開発に成功すれば、多くの利益を得られるだろう。

 私たちのプロジェクトチームの評価も一気に上がるに違いない。


 ――0018572

 最初の現地調査が終了した。

 結果は芳しくない。

 この世界の環境は予想以上に厳しかった。無人の予備調査ではここまで厳しいとは分からなかった。

 開発する前は私たちが生存できない世界は多い。しかしこの世界は格別だ。生身で外へ出れば即死、最高レベルの隔離措置を取らなければこの世界に留まることも難しいだろう。

 さらに悪いことに、私たちの生命活動がこの世界の生物に対して悪影響があるらしい。私たちの呼気に、この世界の生物に対する毒が含まれているような状態だった。

 このままでは、開発が始まる前にこの世界の生態系を乱してしまう。それはまずい。

 この事実が判明した時点で調査は一旦終了し、今後の方針を見直すことにした。

 全く、新しい世界とは何が起こるか分からない。


 ――0018735

 私たちは船を地中深く沈めることにした。今その作業が終わったところだ。

 これで私たち自身と私たちがこの世界に持ち込んだ物は全て地下に隔離した。

 私たちがこの世界の環境に害される恐れも、私たちがこの世界の生態系を狂わせる危険も最低限に減らすことができた。

 さらに、地中で採取した鉱物資源を利用して、作業機械を作成することにした。この世界の物質で作られた機械ならば、この世界への影響も最小で済むだろう。

 だいぶ回り道になるが、これが最善だろう。未知の世界に対しては慎重に慎重を重ねるくらいでちょうどよい。

 今回の件は私たちにとって良い教訓になるだろう。


 ――0018821

 ようやく第二次調査が開始された。

 地上へ送り出されて行く作業機械をスクリーン越しに見送る。

 これで一歩前進だ。

 この世界の生物の仕組みを詳しく調べ、生態系に悪影響を与えないように注意しながら環境を変えて行く。

 そして私たちに悪影響のある要素をこの世界の環境から取り除き、また私たちの生命活動に悪影響を受けないように生態系を修正できれば後は速い。

 そこまで行けば、私たちも地上に出て、この世界の自然を満喫することができるのだ。


 ――0018934

 調査の結果が出始めた。

 私たちにとっては猛毒にしかならないような極限の環境で、この世界の生き物はしっかりと適応して繁栄している。

 他に類を見ない希少な事例だろう。

 大発見なのかもしれない。

 しかし、その分注意が必要だ。参考にできる類似の事例が少ないから、ほとんど自分たちで考えて手探りで進めなければならない。

 環境改善の手順を間違えると生態系を狂わせて大量絶滅を引き起こしてしまいかねない。

 念入りに調査を行い、慎重に影響を見極めながら開発していかなければならない。


 ――0019082

 調査結果が次々と上がって来る。しかし、内容はあまり好ましいものではなかった。

 この世界の生き物は、過酷な環境に耐えているだけではなかった。

 私たちにとっては猛毒にしかならない物質が、この世界では生き物共通の代謝機能に組み込まれていた。

 私たちの良く見知った動植物と似ているようで、全く異なる生き物だったのだ。

 この世界の環境から私たちに有害なものを除去して行けば、多くの生き物が死滅してしまうだろう。

 私たちの知る数多くの世界の中でもここにしかいない生物資源を絶滅させてしまうのは大いなる損失だし、一度生態系をリセットして再開発するとなるとコストも時間もかかりすぎる。

 しかし、何度シミュレーションしても、環境改善の途中で九割近い生物が死滅してしまう。

 完全に手詰まりだった。

 この件は、これまでの調査結果を添えて本部の判断を仰ぐことになった。


 ――0019167

 本部からの返信があった。

 この世界の環境には手を付けず、エネルギーと情報資源のみを回収する。

 それが本部の指示だった。

 合理的な判断だと思う。

 この世界の生物相を惜しむならば、この世界の環境を大きく変えることはできない。

 しかし、この世界の環境で得られたものは、鉱物資源であろうと生物資源であろうと、私たちには危険で有害な物質を含んでいる。

 この世界から物を持ち帰ろうとすれば、非常に大きなコストをかけて除染する必要がある。

 けれども、物質でなければその制限は無くなる。エネルギーや情報だけならば毒物を持ち込む恐れはない。

 これは前例のない開発になる。

 問題は山積みだった。

 単なる調査だけならば今ある自動機械でも可能だ。それで多少の情報資源も得られる。だがそれだけではプロジェクトとしての採算がとれない。

 継続的にエネルギーと情報資源を収集するためには、私たちに変わってこの世界で活動する存在が必要だった。

 この世界に知的生命体を生み出す。

 プロジェクトの今後の方針が決まった。


 ――0019343

 最初に行われたのが、原生動物の知能の強化だった。

 この世界には既に大型の動物が生息していた。自律的に行動し、ある程度の判断力・問題解決能力を有する動物たち。

 その知能を引き上げ、私たちと会話をして意思疎通を図れるようにする。

 ここまでは特に問題なく進んだ。

 強化された動物たちは知性を得、言葉を話すようになった。

 だが、それだけだった。

 彼らは知性を得ても文明を作らなかった。言葉を得ても語ろうとしなかった。

 思索にふけるでもなく、策謀をめぐらすでもなく、社会を作るでもなく、知識を継承するでもなく。

 彼らは最後まで動物であり続けた。

 そして、世代を経る毎に与えた知性も薄れて行くことが判明し、この計画は中止となった。


 ――0019728

 原生動物に知性を与えてもうまく行かないため、今度は新しい知的種族を創り出すことにした。

 私たちと同じような姿や性質を持っている方が意思の疎通もしやすいだろうと、私たち自身をベースにした。

 もちろん私たちのような生物をそのまま創ってもこの世界では生きていけない。そこで、この世界の原生動物の遺伝情報を解析し、そこに私たちの特徴を再現する因子を埋め込む形で実現した。

 こうして誕生した第一世代は、私たちの姿と原生動物の特徴を併せ持つ不思議な生物になった。

 試験的にいろいろな動物を使用して創り出したため、同じ種族とは思えないほどバラエティ豊かな容姿になった。

 ただ、基本的に二足歩行で、手で道具を扱うことができること。高い知性を持ち、言葉を操れること。それらの特徴が次世代へと受け継がれることなどが確認できた。

 原生動物の特性も色濃く受け継いでいるため、大きな文明や国家を築けるか不安はあるが、彼らはプロトタイプだ。

 大きく繁栄するのは別の種族でも構わない。


 ――0019794

 新たな事実が判明した。

 この世界の生き物に対して、私たちの生命活動が悪影響を与えると考えていたが少し違ったようだ。

 正しくは私たちの精神活動が悪影響を与えていたらしい。

 この世界の大気は、私たちの精神活動に反応してこの世界の生物に影響を与える特殊な物質を生成する。その詳しいプロセスについてはまだ不明だ。

 ただ、その反応は私たちから少し離れた場所でも発生し、遮蔽する方法は今のところない。

 気密服を着て作業していたにも関わらず、この世界の生き物に影響を与えてしまった原因がこれだった。

 この厄介な反応は、私たちが知性強化した原生動物や創造した新生物の精神活動にも微弱ながら見られた。

 知性強化した動物たちがその知性を活用しない原因もこれだろう。知的な精神活動が微弱ながら有害物質を生成していることをどこかで感知しているのかもしれない。

 一方、私たちが設計して生み出した生物は、私たちの因子が入っているためかある程度の耐性があるようだ。自身の精神活動で発生した程度ならば大きな悪影響は見られなかった。


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