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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第六十四話 王国誕生

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 「本当にここにするのか? 『死の大地』だぜ。」

 「ローランド・アルスターが邪竜を封印したのは百年も前だ。もう『死の大地』じゃねえよ。」

 無人の荒野に人影が現れた。冒険者のような恰好で武装した男達を先頭に、数十名の大所帯だった。

 「それに、他にないだろう、俺たちが国を作れる場所なんて。」

 彼らはこの無人の地に国を興すために来たようだ。

 「まあ、確かにな。近隣は好戦的な国ばかりだ。新興の弱小国などすぐに滅ぼされるだけか。」

 あまり乗り気でなさそうだった隣の男も首肯する。

 「その点、この場所ならばどの国も怖がって近寄らないからな。当面は安全だろう。邪竜封印されたというのに、臆病な連中だ。」

 「だが、俺達が国を作って普通に生活できると分かれば、いずれちょっかいをかけて来るぞ。」

 「それまでに国を守れるだけの力を付ければいいのさ。どの国も仲が悪いから、協力して攻めてくることはないだろう。」

 強気なことを言う男だったが、その表情を引き締める。

 「それに、俺達は大所帯になりすぎた。戦争で国を追われた連中がたくさんいるんだ。早く安住の地を作らねえと、そろそろ限界だ。」


 場面が変わった。

 無人の荒野だった場所に仮設らしき住居が作られ、畑が広がっていた。

 「順調だな。川があるから水には困らない。野生動物も多いから狩りをすれば肉も取れる。後は十分な穀物が収穫できれば他の連中も呼び寄せられる。」

 男が満足気にその様子を眺めていると、そこへ走り寄る者がいた。

 「大変だ、ルーカス! 地下遺跡らしきものが見つかったぞ。」

 「なんだって!」


 数人の男達が松明を手に地下を進む。先頭はルーカスと呼ばれた男だった。

 「こいつは、相当広いな。」

 「なあ、ルーカス。お前まで一緒になって探索することはないんじゃないか?」

 「何を言う。こんなところにある遺跡だぞ。英雄ローランドや邪竜に関係していないはずがない。俺が調べなくてどうするんだ。」

 「お前、仮にも国王だろ! わざわざ危険に突っ込むなよ。」

 「まだ仮の国王だからな。本格的に国として動き出したら、こんな面白そうなことしている暇は無くなるだろう?」

 「それが本音かよ、おい。」

 「まて、この先に何かいる。」

 男は、その場に全員を待機させると、一人慎重に先へ進んだ。そして、その先の部屋を覗き込むと、また慎重に引き返してきた。

 「駄目だ。あれはやべぇー。たぶん守護者(ガーディアン)ってやつだ。今の俺たちじゃ戦えば全滅する。」

 真面目に語る男に異を唱える者はおらず、全員引き返して別の通路へ向かった。

 その後も男達は別の通路進んで行き、たまに遺跡に入り込んでいた魔物を倒したりしながら探索を進めて行った。

 「お、この部屋は生きているな。」

 男達が入ると、自動的にその部屋の明かりが点いた。

 「よし、室内に危険は無さそうだな。じゃあ、後は頼んだぜ、先生。」

 ルーカスは室内に危険がないことを確認すると、出入口付近で警戒を始めた。代わりに、先生と呼ばれた男が進み出て、室内を調べ始めた。

 「どうやらこの部屋は、この遺跡の施設全体の管理を行っていた場所のようですね。」

 調べ終わったらしく、先生と呼ばれた学者風の男が振り返って話し始める。

 「色々なことができるようですが、現在稼働しているのは瘴気を管理する機能ですね。」

 「瘴気を管理だって!?」

 ルーカスが驚いた声を上げる。瘴気は制御不能な厄介物と言うのが彼らの常識だった。

 「ええ、そうです。現在少量の瘴気を広範囲に放出していますが、その量を調整できるようです。」

 「瘴気の量を調整? どの程度できるんだ?」

 「瘴気の源が邪竜だとすれば、全開にすればこの辺り一帯人が住めなくなるでしょう。逆に、瘴気を吸収することもできるようです。」

 「最大放出したら、邪竜が復活するようなものじゃねえか。古代文明も何を考えてそんな仕組みを作ったんだか……」

 「少量の瘴気ならば戦意と戦力が上がるから戦時にはちょうどよかったんじゃないですか。」

 「まさか、近くの国がどこもかしこもやたらと好戦的なのはこいつのせいか?」

 「可能性はありますね。少量ですが、瘴気は広範囲に満遍なく漂っていますから。」

 「……瘴気を吸収するようにしたら、何か問題は出るのか?」

 「士気が落ちるから軍を作っても弱くなるでしょう。あとは、限界まで吸収したら瘴気が漏れ出る危険はありますが、まあ瘴気の貯蔵量がいっぱいになるまで千年はかかるでしょう。」

 ルーカスはしばし思案した後、決断した。

 「瘴気を吸収するようにしてくれ。できるか?」

 「できると思いますけど、よいのですか? 瘴気が無ければ犯罪も戦争も起こり難くはなりますが、なくなりはしませんよ。他国に攻められた時に困りませんか?」

 「かまわん、やってくれ。長期的にはその方がいいはずだ。何かあったら、その時はその時だ。」


 再び場面が変わる。

 畑が広がり、人が増え、建物も多くなっていた。個人の住居とは思えない大きな建物もいくつかあり、国としての形ができつつあった。

 「ここに俺の家を作るぞ!」

 「いやなんでだよ! お前の家は王宮になるんだぞ、地下遺跡の入り口の上に立ててどうする!」

 「あの古代遺跡は俺達の急所だ。瘴気を全開にするだけでこの地に住めなくなる。王宮で蓋をして誰も立ち入れないようにした方がいい。」

 突然真面目な顔になるルーカスに面食らう男。

 「しかし、瘴気のコントロールに遺跡に入る必要はあるだろう? 戦争が始まったら、多少は瘴気を出さないと勝てないだろう。」

 「いや、遺跡の調査は必要だろうが、今後も瘴気は使わないつもりだ。」

 「ならどうするんだ? そろそろ本格的に防衛用の戦力をどうにかしないと、建国を宣言する前に潰されるぞ。」

 「そのことなんだが、国の周囲に城壁を作ろうと思う。我が国は小さいし、人手も増えてきた。無理ではないだろう。」

 「籠城戦前提か? 確かに戦闘は有利になるだろうが、防戦一方なのもきついんじゃないか?」

 「なに、俺達の国の近くで陣取っていれば、瘴気を抜かれて勝手に士気が落ちるだろうさ。」


 さらに場面が変わる。

 王宮を中心に計画的に作られた街並みが整然と並ぶ。そしてその周囲を囲む城壁できていた。

 「ようやくここまで来たな。」

 「軍備はまだまだ周辺のどの国よりも弱いけどな。」

 「それでも半端な侵略から国を守ることくらいはできるさ。そろそろやるぞ、建国の宣言を!」

 「そうだな、そろそろ正式に周知した方が、互いに牽制し合ってこちらに手を出し難くなるだろう。それで、国名はどうするんだ?」

 「この地は英雄ローランドが邪竜から解放した場所だ。彼の英雄にあやかって、アルスター王国にしよう。俺はこれから、ルーカス・アルスターを名乗るぞ!」


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