第六十五話 古代遺跡を探索します2
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「今のって、やっぱり……」
「ああ、アルスター王国建国の物語だろう。王家に伝わる伝承とも一致するものがある。」
ああ、やっぱり。でも、初代の国王様って、ずいぶんと親しみやすいと言うか、茶目っ気がある人だったんだね。
「あの王都を囲んでいる城壁は、建国前からあったんですね。驚きました。」
ジェシカさんは別のことで驚いていた。僕たちには見慣れたものだけれど、ジェシカさんやカレンさんのように他国から来た人は王都を囲む城壁に驚くらしい。
大きな都市をまるごと囲む城壁などというものは、魔物の多い危険な場所くらいでしか作られないのだそうだ。
そう言われると、魔物の少ないアルスター王国の王都にどうして城壁が? と疑問が湧くけど、そうか普通に他国からの防衛用だったんだね。
「いや、今ある城壁はダンジョン対策として新しく作られたものだ。最初の城壁は王都の拡張に伴って撤去されている。今の中央環状大通りの辺りだ。」
中央環状線大通りと言うのは、王宮のある王都の中心部と城壁のある外周部のちょうど中間あたりにあり、王都をぐるっと一周回る環状の大きな通りのことだ。
勇者のお披露目パレードにも使われた道だけど、古い城壁を取り壊した跡だったのか。
「後気になんのは、守護者ゆうとったやっちゃな。」
「そうだな、先ほどの場面は王宮側から入ったものだからここからは遠いだろうが、他にも守護者がいるかもしれない。」
ダンジョンにモンスターがいるように、古代遺跡には守護者が出る、ことがある。
守護者は古代遺跡がまだ現役で使われていたころに、重要な設備を守るために作られた魔法生物の一種と考えられている。
古代遺跡を探索する冒険者にとって、守護者はモンスター以上に危険な敵であり、そして倒した先には希少なお宝が眠っている可能性が高いのだそうだ。
「せやけど、守護者の強さはよう判らんかったな。あの面子で全滅するゆうても、あまり強そうやなかったし。」
「装備も貧弱。魔術師もいなかった。」
「確かに戦闘よりも調査向けの編成だったな。ただ、初代アルスター国王は数多くの戦いを生き抜いてきた強者だ。守護者は相当強いと見た方が良いだろう。」
そんなおっかないものまで、王宮近くの地下にいるんだね。知らぬが仏だよ。……邪竜がいる時点で誤差かもしれないけど。
「話に出た守護者はたぶん拠点防衛用のもの。近付かなければ問題ない。」
ロシュヴィルの冒険者が古代遺跡を探索する機会はまずない。この辺りはエレノアさんの方が詳しかった。
「けれども、守護者がいるなら拠点防衛だけでなく、巡回して警備しているものがいてもおかしくない。」
ダンジョンで例えると、特定の場所で待ち構えている中ボスのモンスターと、通路を徘徊するモンスターみたいなものだろうか。
これまでは出くわさなかったけれど、警備目的ならば重要な場所に近付けば出てくる可能性がある。
「どちらのタイプでも守護者は防衛用。守備範囲の外までは追ってこない。ただし、遺跡全体が守備範囲に入っている可能性もある。」
いずれにしても、情報が足りない。ダンジョンのモンスターのように弱い順に出て来るとは限らない。慎重に見極めながら進むしかなかった。
ずいぶんと古いものなのだから、故障するなり死に絶えるなりしていてくれれば助かるのだけど、それはあまり期待できない。遺跡そのものが結構生きているからね。
どうやらこの古代遺跡は周囲で起きた出来事を記録しているらしい。
最初にエグバートの記録が出て来た時には、エグバートが古代遺跡の機能を利用して記録を残したのかとも思ったけれど、どうやらそれは違うようだ。
初代アルスター国王が古代遺跡に入ったのは王宮近くの入り口からで、ここからはかなり離れている。国王自ら記録を残したとは思えなかった。古代遺跡が自動的に記録したのだろう。
アルスター王国の歴史を仔細漏らさず記録しているというわけでもなさそうなので、何らかの基準で取捨選択していると考えられる。やっぱり、遺跡に関係したことを記録しているのかな?
こんな風に周囲の出来事を自動的に記録し、再生するというのは古代遺跡一般の仕様ではないそうだ。エレノアさんも色々と調べているけれど、この記録がどういう仕組みで何を意図しているのか、今のところ分からないらしい。
「本来一つの再生装置で全ての記録を再現できたはず。ただ遺跡全体の劣化で一つの装置で再現できる記録が制限されているのだと思う。」
古代遺跡の古代というのは「どれだけ古いのか分からない」くらい昔なのだそうだ。いまだに守護者が動き回っている方が不思議で、さして重要でない機能は生きていても何らかの不具合があることが多いそうだ。
「このまま持ち帰れれば研究が捗るのに……無念。」
エレノアさんは色々と調べて記録の再生手順までは判明していた。けれど、この場所から持ち出すと記録の再生ができなくなるらしい。
確かに持ち帰ることができれば古代文明だけでなく、アルスター王国の歴史の研究にも役立つだろう。アルスター王国建国秘話とか、歴史家が大喜びするだろう。
でも、魔王エグバートの真実とかは間違いなく国家機密だ。アレク内心持ち帰れなくてほっとしているんじゃないかな。
「この様子なら、探索を続けていれば他にも様々な記録が見つかるだろう。」
「せやな、守護者や邪竜についてもなんや分かるかもしれへんな。」
勇者ローランド・アルスターが邪竜を討伐(実際には封印)したのがアルスター王国建国の百年くらい前の話。古代遺跡が現役だった時代はそれよりもさらに前のことだ。邪竜が猛威を振るっていた当時の記録もあるかもしれない。
僕たちは更に探索を進めることにした。




