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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第二十四話 幻のポーターを見つけました

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

2021/06/12 誤字修正

誤字報告ありがとうございました。

 モンスターハウスの大部屋を通り過ぎると、再び同じような通路になっていた。

 『骸骨通りスケルトン・ストリート』と同じように一本道の通路の左右に、十メートル毎に小部屋がある。その小部屋にモンスターがいるところまで同じだ。

 違うのは小部屋にいるモンスターがゾンビだというところくらいだ。さしずめ、『屍者通り(ゾンビ・ストリート)』と言ったところか。

 それにしても、困った。未知の領域を探索しているのに、全然ワクワクしないよ!

 『骸骨通りスケルトン・ストリート』の時も思ったけど、完全に作業になっちゃってるよ。ゾンビを殺すだけの簡単なお仕事です。

 実際にアレクやカレンさんは無造作にゾンビを切り捨てているし、僕も武器が新しくなってからは一撃で仕留められるようになった。動きの鈍いゾンビではジェシカさんのスピードに付いて行けずに一方的に斬り倒される。

 油断も慢心もするつもりはないけど、部屋に入って一瞬で制圧。後れを取る隙がない。一応、毎回小部屋の中の様子を調べてから入っているんだけど、ゾンビしかいないんだよね。

 戦闘よりも、その後の調査の方が時間がかかっているくらいだ。初めて人が入る場所だから、念入りにやっている。

 僕の斥候(スカウト)としての技術、ジェシカさんの獣人としての鋭敏な感覚、エレノアさんの魔術による探知と三重にチェックしているのだけど何もなかった。

 宝箱とか、隠し扉とか、謎のスイッチとか、一切なし。まあ、摩核だけはいっぱい手に入ったけどね。スケルトンとゾンビ合わせて三百個以上回収したんじゃないかな。うわっ、これだけで軽く金貨三十枚を超えるよ。

 並の冒険者だったらここまで来る前に死ぬね。モンスターに殺されなくても過労死するよ。

 たぶん、アレクとカレンさんの二人だけで半数を以上倒している。エレノアさんも魔術一発で百体以上か。それでいて、まだまだ余裕があるからね。


 さて、『屍者通り(ゾンビ・ストリート)』の端まで来て角を曲がると、その先も通路が真直ぐに続いていた。

 モンスターいっぱいの大部屋も、通路の左右に付随する小部屋もなく、進んだ先にあったのは小さな部屋だった。

 その部屋にはモンスターはおらず、代わりにあったのが帰還用の『ポーター』だった。

 空白地帯に新たな『ポーター』を発見……え、違う!

 「こ、これは、幻の『昇り8番ポーター』だ!」

 皆がきょとんとする中、僕は一人で叫んでいた。


 第二階層から第三階層に降りる『ポーターの出口』から帰還用の昇りの『ポーター』が七つ、第四階層に降りる降りの『ポーター』が八つ、そこまでの最短ルートがこの階層では見つかっている。

 しかし、実は第三階層にはもう一つ帰還用の『ポーター』が存在することが判明していた。それが、幻の『昇り8番ポーター』である。

 空白地帯の多い第三階層には、未知の『ポーター』が存在することは予想されていた。

 そんな中、唯一空白地帯に存在することが確認されていたのがこの『昇り8番ポーター』なのである。実際近くの壁に、『第三階層昇り8番』と書いてあるから間違いない。

 空白地帯の只中にある『ポーター』がなぜ確認されているかと言うと、この『ポーター』、実は第三階層の探索中に発見されたものではなくて、第四階層から帰る途中に見つけられたものなのだ。

 このダンジョンの『ポーター』には一定の法則がある。

 深い階層に移動する降りの『ポーター』は幾つもある『ポーターの出口』の中からランダムでどこかに出る。一応使用する『ポーター』によって出やすい場所や絶対に出ない場所などがあるらしい。

 帰還用の昇りの『ポーター』は、第一階層に出る場合を除いて、必ずさらに上の階層へ向かう昇りの『ポーター』の側に出る。

 この規則性があるため、昇りの『ポーター』さえ見つければダンジョンから脱出することは容易だ。しかし、昇りの『ポーター』でも、上の階層のどの『ポーター』の近くに出るかはランダムなのだ。

 ある時、第四階層から第三階層に昇って来た冒険者がふと気が付いた。その『ポーター』には番号を記したマークが付けられていないことを。

 ダンジョンの壁や床に書き残すことのできるマーカーペン開発されてからは、『ポーター』及び『ポーターの出口』には可能な限り番号を書き記すようになった。特に第二階層や第三階層の既知の『ポーター』には全て書き記されている。

 だから、第三階層で番号が記されていない『ポーター』はこれまで未発見のものである可能性が高かった。しかし、帰還途中だったその冒険者はそれ以上調べることはせずに、番号だけ記してその場を後にした。

 報告を受けた冒険者ギルドでは、第三階層を探索する冒険者に協力を依頼して情報を集めた。たまたま書かれていた番号を見落としたか、何かのはずみで消えてしまっていた可能性もあるからだ。

 しかし、第三階層で既知の帰還用の『ポーター』には全て1番から7番までの番号が振られており、その冒険者が記したという8番の番号はどこにも書かれていなかった。

 このことから、空白地帯に存在すると予想されていた昇りの『ポーター』のいずれかに出たのだろうという結論になった。

 このことがあって以来、冒険者ギルドではダンジョンから帰還ルート――各階層でどの『ポーター』を使用して帰還したかという情報も集めるようになったのだけど、いまだに第三階層の8番『ポーター』で帰還したという報告はない。

 そんなわけで、今では実在が疑われるほどに幻の存在となった『ポーター』だったのだけど、今回の空白地帯の探索でその実在が証明されただけでなく場所まで特定されたのだ。これは歴史的快挙と言ってもよい。

 僕はそんなことをみんなに説明した。

 「なるほど、つまり帰りもどこの『ポーター』に出たのかを確認して、場合によってはそこで探索した方が良いのか。」

 「余裕があったらね。」

 帰りの『ポーター』でも未探索の空白地帯やその近くに出る可能性はある。そういう場所に出たのならば、アレクの言うようにそこから探索を行う手もある。

 しかし、冒険者ギルドも帰還する際に使用した『ポーター』の情報は求めても、それ以上のことは求めていない。帰還中の冒険者にそんな余裕がない場合がほとんどだからだ。

 ダンジョンに潜る冒険者は、効率を上げるために、目的の階層で拠点を確保したら粘れるだけ粘って金目のものを収集してから帰還する。そうでない場合は仲間がけがをしたなどで緊急避難的に帰還する。いずれにしても途中で寄り道する余裕はない。

 魔法鞄(マジックバッグ)を持ったアレクはかなり余裕があるはずだけど、制約が全くないわけではない。ギリギリまで粘るという探索を行えば帰り道に寄り道をする余裕がなくなることに変わりはないのだ。


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