幕間
あのお茶会から、会えない時でもお互いを知るためにとお二人で文通を始めたようで、たまに惚気られるが、順調にいっているようで安心している。
殿下のダイエットならぬ運動や剣術の訓練等も続いており、背が伸び、体は引き締まり、私がいうのもなんだが、非常に格好がよい。ちなみに、それに付き合わされている私もなかなかの良い身体付きになったので、誰か褒めてほしい。
幼かった殿下も、まもなく15歳。
春からは学園に通うこととなる。
なんだかあっという間だったなぁ……。
「おい、ヴィル。聞いているのか?」
「……聞いていましたよ。」
「聞いていないだろう!」
「惚気はお腹いっぱいなんですよ……」
「な!の、惚気てなどいない!」
「アリティア嬢のことが本当に好きなのだと、これでもかってくらい、こちらに嫌ってほど伝わってきていますので。」
「ま、まぁ、あれだ、それは、あれだな。否定はせん……」
「いつかヴァイオリンとピアノのセッションをすると約束もされたのですよね。結婚式の後の披露宴とかでもいいですよね。」
「け、結婚?!気が早すぎないか!?」
「照れなくてもいいですよ?エスコート時はさておき、まだ手も繋げていない奥手すぎるミシェイル殿下。頑張ってくださいね?」
「ぐっ…うぅ……ティアが可愛すぎるのが悪い……」
「ハイハイ、ソーデスネ。殿下がヘタレなわけではないですよねー」
「ヘタレとかいうな!!」
「ヘタレはさておき、まもなく学園に入学ですね。ご準備の方は如何ですか?私も殿下のフォローとして学園に行きますので、何かございましたらお手伝いさせて頂きます。」
「ヘタレはやめろ。そして学園の入学にあたっては現状、特に問題はない。基本的に平日は寮で週1回は城に戻る形だな。お前も来てくれるのなら、心強いよ。」
心強いとか嬉しいことを言ってくれるなぁ。こういう素直なところは本当、昔から変わらないなこの方は。
「ありがとうございます。しっかりとサポートさせて頂きます。アリティア嬢とのティータイムの確保もお任せ下さい。」
「……うむ、それもよろしく頼む。俺からも彼女をお茶に誘おう。今年は俺が首席、次席がティアだったな。は!他の男共がティアに近づいたら嫌だな……なるべく一緒に行動するか…?いや、彼女にも彼女の交友関係が……」
「殿下、残念な思考が漏れていますよ。今までの各種パーティーで殿下がアリティア嬢を溺愛していることは、まぁまぁ周知されておりますので心配は不要かと。」
「は!そうか…それなら安心…ってえ!?バレている?」
「えぇ、アリティア嬢にだけとてもとても優しい笑顔をお見せになるので。」
「恥ずかしすぎる」
「今更ですか」
「キリッとしているつもりだった」
ぶはっ!筋肉ゆるゆるでしたけど?!
「頬の筋肉どうなってるんですか。デレデレでしたよ」
「そういう時は一言声をかけてくれよ!」
「まぁ、幸せそうですし、アリティア嬢にだけなので問題はないかなと」
「あぁ、ティアがいれば何でもいいからな」
「あまりの惚気に目眩がしてきました」
「うるさい」
そんな会話をしつつ入学に向けての準備も済み、これからの執務の打ち合わせをしながら夜は更けていった。
これからも平穏な日が続けばいいと思っていたが、とある平民の女(もう、女生徒ではなく女でいい)がほんの少し面倒事を起こすと、この時は全く予想もしていなかった。