願い
「あぁもう!間違えたぁ…」
僕はひたすらに走りながら悪態をつく。
愛花ちゃんがいる市までは乗り換えが必要だ。
初めて行くところなので注意して電工掲示板を見たつもりだったが、勘違いをしていたようだ。
もと来た道を引き返す。ようやく階段を登り終えた頃には、僕の乗りたかった電車は扉を固く閉じていた。
まだかなぁ駿くん…
ちょっと寂しい気持ちになる。
何せ待ち合わせ場所であるこの駅前では、多くの人が出会い、別れを繰り返している。家族、友達、恋人…
私もはやく駿くんに会いたい。と私は思う。
必ず来るって言ってたけど、やっぱり怖じ気づいたのじゃないだろうか?隣の市にいくだけとはいえ、かなり遠い。
駿くんからしたら大冒険だ。だから、怖じけ付いて…
そこまで考えて、いや…と頭をふる。駿くんは…私と共に過ごした駿くんはそんな子じゃない。大丈夫、きっと来る。
何か来れない理由があるだけだわ。必ず来る!
私は、青い空を眺めて無事に駿くんがたどり着けますようにと願いをこめた。
僕は電車に揺られている。
ポケットに手を突っ込み、愛花ちゃんから届いた何枚かの手紙に触れる。
待ち合わせの場所にいるはずの愛花ちゃん。
ひとりぼっちで寂しい思いをしてるに違いない。
はやく着いて愛花ちゃんに会いたい。
そう思うのだが車内アナウンスが無慈悲にまだ遠いことを告げていた。
そんな私たちが出会えたのは待ち合わせ時間から1時間過ぎた頃だった。
「愛花ちゃん。遅くなってごめんなさい。」
駿くんがしょんぼりとして謝ってくる。
私は自然と笑顔になる。
「ううん。よく来れたね」
私の笑顔に安心したのか駿くんも笑顔になる。
「さすがに迷子になりそうになった」
「さっ行こうか」
私たちはお互いが迷子にならないように手を繋ぐと歩き始めた。




