パラマス号⑥流星体粒子流のお話
自動操縦で目的地へ向かうパラマス号は半永久動力炉のメンテナンスを兼ねて、動力を天然物質で賄いながら運航していた。
いつも静かな船内には、久しぶりに動力炉から振動と駆動音が響いている。
雨か──
艦長室に一つだけ取り付けられた小窓から真っ黒な宙に幾つもの流星体粒子流が、まるで何かに導かれるように流れている。尾っぽに特徴をもつそれは、宇宙に時間が存在していることを示すかのように、消えては生まれることを繰り返す。
闇が持つ恐怖は闇によって作られ支配される。宇宙が静かな闇の中に存在し時間もまたその中で生まれる。概念と秩序を守り、あらゆる事象を兼ね備える宇宙は無限の可能性を持つと同時に全てをさらけ出すことを、拒み続けるのもまた宇宙なのである。
流星体粒子流は淡いブルー系がほとんどだが、その中にまれに金色に輝く流星がある。
光の概念(前々回登場した話)がその発光体を間近で見ることは、まず不可能な確率であるのだが、星崎一世はもう幾度も、それを目撃していた。
──チッ。電子音が鳴り、
バウンス美沙子から通信が入る。
「艦長、動力装置異常ありません。定期メンテナンス終了いたしました」
通信端末はOFFのままで、無機質な音声のみが、静まり返った艦長室に響いた。
「ご苦労様、皆にそう伝えてくれ」
「はい、それでは」
異常なしか。星崎一世はそう心で呟いた。目の端に黄金に輝く流星を捉えて、横になっていたリクライニングチェアから起き上がり、鼻先が小窓につくくらい近づき、反射した自分自身が窓に映って見えた。
時間と光の概念がお互いを共有している。
闇の干渉など受け付けぬということなのか?流星の意識の方が強いという訳か──
なるほど。
星崎一世はモニター上部に映る時刻に目をやる。
またこの時間なのか、今まで見た時間帯とほぼ同じ。(星崎一世の時間軸)
私の分岐点がこの時刻と関係があるかもしれん。
黄金色の流星が消えた後には、プラズマ粒子の環がまるでそこを基準にワープしたかのように、異質な窪み(闇と光の反物質)がみてとれた。
12時12分に時間軸を揃えさえすれば、8回目の転生が可能ということなのだろう。星崎一世はようやく時間軸の基準点を見つけ出したのだった。
安堵していることが落ち着きをもたらす。
流星が消え、煙草に火をつける。
ゆっくり吸い込み、肺に入れ、吐き出す。眠気が強さを増した。
煙が流動しながら渦を巻き消え、匂いだけが残り漂っていた。
おわり




