第三章 其ノ参
「この島は昔『鬼ヶ島』と呼ばれていました。もちろん、言葉通りの意味です。ただ、全ての住民が鬼という訳ではなく、鬼と人間が共存をしていました——」
佐々木は淡々と、島に鬼がいる理由を話してくれた。
歴史から、現代に至るまでのこと。
島にかけられた『呪い』のこと。
そして、その鬼によって円香や村の住人が殺されたこと。
基子は愕然とした。
そんなものはアニメや漫画の中の話だと思っていた。
しかし、現実に自分の身の回りで起きていた。
「でも——双子が産まれるとどっちかが鬼になるなんて、そんなむちゃくちゃなことがありえるんですか?」
佐々木が言った話が本当であれば、鬼である妹は基子の『双子の妹』になる。
「自分も最初はそう思っていました。今の時代、双子もそう珍しくはないですから」
そう言った佐々木は難しい顔をした。
「ただ、恐らくですが今回の件に直接双子は関与してないんですよ」
「えっと、それはどういう?」
基子の質問に佐々木は頭をガシガシと掻いた。
基子が恭平から聞いた話では、基子の妹と名乗る『源薫』が事件を起こした。
彼女が鬼ならば『双子』であることは間違いないはずである。
「最初に断っておきます。これはあくまでも私自身の考察です。状況や情報からそうだろうと思っただけなので、もしかしたら真実は違うのかもしれない。それと——これを伝えることを恭平は望んでないと思いますが、私からしたら猿渡さんが知らないことの方が悔しいのでお伝えします」
基子はゴクリと喉を鳴らした。
「まず、猿渡さんの言っている妹さんですが、これは——貴方自身です」
心臓がドクンと跳ねた。
「正確には、猿渡さんに憑依した鬼のオボシナサマの仕業です」
「え、えっと——」
言葉が出てこなかった。
自分の中で起きていた異変。
確かに、目を覚ます度に覚えのない場所にいたり、服装さえも変わっていたり、基子自身もなんとなく違和感は感じていたが考えないようにしていた。
佐々木から告げられたことが事実であれば、基子の中に居るオボシナサマが身体を乗っ取り、多くの村人達を……
「とりあえず、落ち着いて聞いてください。これはあなたを咎めたいわけではないんです。それに憑依したオボシナサマですが、既に封印済みなのでもう問題ないかと思います」
「封印済み?」
佐々木はにこりと微笑んだ。
「先程渡したお守りです」
「お守り——あっ!」
基子はポケットからペンダントを取りだし、恐る恐るそれを眺めた。
「勝手に出てきて憑依することはないので大丈夫ですよ」
そんな基子の心中を察したのか、佐々木は言った。




