表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は運命を変えるほど俺たちを嫌う  作者: 池田ヒロ
第三章 罪人たちによる奪還戦
57/96

奪回 ③

 何をそこまでして静かな憎悪は燃やされているのだろうか、とケイは思った。


 現在、キリたちは城内の一階倉庫で身を潜めていた。首都内に爆弾が設置されていたということを受けて、大混乱にはなっているのだが――。まさか、ここに来てまで異形生命体がそこら中をうろついているとは予想だにしなかったのだ。


 倉庫外が落ち着くまでここにいるしかないようである。時間がないのに。それに伴って、キリは苛立っていた。もちろん、その穏やかではない雰囲気はケイとワイアットにも伝わっている。いや、ここにいるときからではない。『幽霊さん』と会ったときからだ。


「デベッガ、気張り過ぎるなよ」


 見かねてケイがそう言った。だが、キリは「落ち着いている」と明らかにそうとは思えない口調で言う。


「でも、時間がないんだ」


「それは誰もが思っていることだって。こんな騒ぎになっていりゃ、厳重体制にはなるさ」


「だろうな。だけども、こんなバケモノ兵隊が城内にまでいるなんて誰が予想した?」


 そう、作戦を立てたケイたちは『首都』に異形生命体が現れる可能性があると推測していたが、奪還組が侵入する城内にまで現れるとは思わなかったのだ。この想定外な事実に頭をフル回転させて現状打破を考えてはいるが、何も思いつきそうになかった。


「城内はやつらの巣床になってしまったが、大臣たちが言っていた。姫様がいる場所は少なからず礼拝堂だろう、と」


「式が行われている場所ですよね」


 ケイは頷きながら、ポケットに入れていた城内地図を広げた。


「今の俺たちがいるのは一階の倉庫だ。つまり、城の最南東に位置しているこの場所。片や、礼拝堂は西側にある離れ塔にある」


「向こうに行くまでは一度、この廊下の方に出なければいけないんですかね?」


「渡り廊下で続いているからな……って、おい。デベッガ、話くらいは聞いていろ」


 キリの方を見ると、彼は倉庫にある窓の方を見ていた。まさかとは言うが、外から行くのか。いや、もしも外にあのバケモノがいなければ、不可能というわけではないが――そちらに賭けるか?


「外にあの怪物どもはいるか?」


 そう訊かれたキリは木箱の上に乗って、高い位置にある窓の外をそっと覗き込んだ。今のところはいないように見える。


「行くなら、今がチャンスみたいだ」


「じゃあ、行こう」


 三人は倉庫の窓の外から脱出して、西側に見える離れ塔の礼拝堂へと急いだ。だが、あのバケモノ兵隊がおらずとも人間の兵士はいるのは事実である。


 さて、これをどうするのかとケイが対処法を考えていると――。


「デベッガさん!?」


 ワイアットの声に驚いた。キリは単身で駆け出し、見回りの皇国軍を持っていた歯車の剣で斬り裂いたのだ。そうして、彼は二人を呼び寄せるようにして手を上げる。


「…………」


 どこか、キリの様子がおかしいとケイは思った。こんな風にして行動する人物ではなかったはずなのに――。


――侵攻戦の復讐心でも駆り出されているのか?


 もしも、そうだとするならば、キリの心の底は相当闇深いのかもしれない。


     ◆


 ガズトロキルスとマティルダがヴィンの様子を見に行くと、彼はその場で仰向けになって気絶していた。慌てて駆け寄る二人は声をかける。


「ザイツ! ザイツ!」


「……ん、ああ……」


 ぼんやりと薄目を開けた。眼鏡をしていないから、ぼやけていてよく見えないが、声から察するにガズトロキルスたちなのだろうと判断する。


「オブリクス君たちかい?」


「あっ、よかった」


「ザイツさん、あの男にやられてしまいましたの?」


 ゆっくりと起き上がり、マティルダが差し出してくる眼鏡をかけた。ようやく、視界を取り戻すことができた。


「みたい。想像以上に強かったよ」


 マティルダに襲ってきたあの人物は自分たちの味方ではないことはわかった。だが、どうして自分が無事でいるのかがわからなかった。邪魔者扱いをしていたはずなのに――。


 どうしてだろう、とヴィンは腕を組んで眉根をひそめた。


「どうかしたか?」


「いや、あの人って何者なんだろうなって思ってさ」


「それなら、反軍かコインストの者ですわ。だって、彼は異形生命体を操る者だと前に言っていたのだから」


【私の一言でたくさんのMADたちがあなたたちの眼前に現れるんですよ?】


【MAD!?】


【あなたたちの言葉で言うならば、異形生命体と言えば正しいでしょうね】


 アレンとエマを追いかけ回していたやつ。そして、あの男が言っていた『オリジン計画』とは?


「あいつらを操るやつだって?」


 ヴィンが片眉を上げ、段々と表情が青ざめてきた。そして、彼はシャツの下にあるはずの物の確認をするのだが――。


「ない!?」そう、声を荒げた。


「ない、ない、ない!?」


 そこにないならば、全部の服のポケットの中やベレー帽子の中にないか手探りで探していく。


「何がないんですの?」


「未来のコンパスが!」


 ヴィンのその一言に二人は顔を見合わせた。なんなのだ、その未来のコンパスとは。


「絶対に、あいつだ! あいつが盗ったんだ!」


「ちょ、ちょっと待てよ。その未来のコンパスってなんだ?」


「この世のすべての未来を視ることができる代物なんだ! ほら、彼らが持っている過去の歯車があるだろ? あれと対になっているんだ!」


 キリとターネラが持つ過去の歯車と同列の物だと知ると、目を皿にした。何かの冗談であって欲しい。あれと対になる代物で、未来を視ることができるだと?


「なっ、なんでそんな大層な物をあなたが所有していたんですか!?」


「私は所有なんてしていない! ただ、持っていただけなんだ!」


「仮に所有をしていなかったとしてもだよ。落ち着けって」


 そう冷静に言うガズトロキルスにヴィンは一度深呼吸をして、落ち着きを取り戻そうとした。


「私の兄弟子であるキャリー姉さんの形見なんだよ」


「もしかして、オハラさんという方?」


 ヴィンは頷く。だが、キャリーの存在をガズトロキルスは知らないため、首を傾げていた。


「皇国に来る際、師匠のもとに立ち寄ったんだ。そのときに姉さんが死んだ知らせを受けてね。姉さんの遺言には私が持っておくようにって言う文章があったんだ。所有権は持たないように、って」


 ヴィンは悔しそうな表情を見せていた。


「ボールドウィンさんの言うことは間違いないよ。あいつ、反軍とかコインストだ。特に過激派キイ教信者は未来のコンパスを狙っていた。多分、過去の歯車も……」


「それって、何が目的なんだ? ライアンを攫ったことにも何か関係しているのか?」


「オリジン計画という物ですわ。ガズ様、覚えていませんか? エマちゃんたちを追いかけ回していた――」


 あの自分を褒めた人か、と思い出した。確か去り際に何かしら言っていたようなこともあることはないのかもしれないが、そこら辺の記憶が曖昧で――。


「でも、その目的とメアリー様の関連性は低いと思いまして」


「そうなの?」


「ええ、メアリー様を狙っているのはハイン皇子ただ一人だけですわ。メアリー様宛てに何百通もの手紙が彼から来ておりましたから」


 何百通という単語を聞いて二人は苦笑いをした。


「そんなに?」


「元々、文通をしようという約束をしていたらしいのですが、あんな事件の後に殺人犯と自身の娘に手紙のやり取りをさせたい親がどこにいるとでも言うんですの?」


 それはもっともな話ではある。


「とにかく、今はここでおしゃべりをしているヒマはありません。もうじきケイたちがメアリー様を奪還しているはずでしょうから、私たちは地下水道路を通って隣町の方までに行きましょう!」


 まずは作戦を成功させることが先決だとでも言わんばかりに、マティルダが周りの状況を確認しながら皇国軍の電波情報をキャッチさせようとしていると――妙な信号をキャッチした。これに思わず彼女は声を上げる。


「どうかしたか?」


「いえ、何か妙な電波が取れたみたいですわ」


「妙な電波が? 皇国軍のかい?」


「いいえ」


 ともかく、その電波信号を確認するために音を再生した。


《応答せよ、応答せよ、青の王国軍よ。こちら白の公国軍。現在黒の皇国の北東エリアを制圧した。これより首都方面へと進攻致す。以上》


《了解した。こちら、青の王国軍。現在は南と東エリア双方とも制圧完了。こちらも直ちに首都へと進攻致す。以上》


 何かの冗談かと思った。三人はマティルダが持つ連絡通信端末機を見て、顔を見合わせる。青の王国軍と白の公国軍が黒の皇国の領土に侵攻してきている? どうして? いや、考えられるのは、と彼女は空の方を見た。この二つの国が手を結んでこちらにやって来るというのは――理由はわかっている。


 エブラハムがハインの結婚相手を知ったから。それは前日の最終作戦会議でエレノアから聞いた事実。こちらに侵攻してくる準備をしていると。


「これは?」


「国王様の命よ。でも、私たちが聞いていた話とは違いますわ!」


「知っていたの?」


 ヴィンの言葉にマティルダは頷いた。


「両国同時侵攻作戦は私たちの作戦のときにとエレノア様から情報が入ったわ。それを知っているのは私とケイ、ワイアットにレナータの四人だけ。エレノア様は作戦開始時にまで来ることはないはずだから。他のみんなには混乱するだろうから口外するなって……」


「要は予定より早まったのか」


「はい、そのようで」


「じゃあ、ますます時間がないってことだよね? 私たち、彼らに姫様と一緒にいるところ発見されたら危険だよね?」


「その通りよ! 私たちは青の王国軍でもなければ、黒でも白でもない。何でもないただの孤軍よ!」


     ◆


 勢いよく扉を開かれた先にいたのは書斎で公務をするエブラハムである。そして、扉を開けたのはエレノアだ。眉間にしわを寄せて中へと入ってきた。それに彼は「なんですか」といかがわしそうに訊ねた。


「なんですか、じゃないよ」


 わかっているくせに。エレノアは机の上を両手で叩いた。重々しい緊迫とした空気が漂っており、見張りの王国軍は気まずそうにしているようだ。


「軍の侵攻をなぜに予定よりも早めた?」


 エレノアの低い声が耳に入ってくるが、書類作成の手を止めようとはせずにいる。


「気に食わないからですよ」


「あ?」


 机を叩いてきたお返しに、とエブラハムもまた両手で机を強く叩いた。エレノアよりも大きい音を部屋に作る。


「気に食わないからに決まっているでしょう? 『犯罪者』がメアリーを助けるなんて、私は許さない!」


 エブラハムは知っていた。昨日のエレノアの部屋での出来事を。結婚式は今日。彼らが助けるのも今日。だからこそ――。


「許さないだと? 貴様、メアリーの友人があの子のために命を賭して戦おうとしているのに!」


「何が友人なものかっ! 誰一人としてあの子を助けることができなかったくせに! なぜにそこまでして母上は彼らの味方をするんですか!?」


「孫たちの味方してやらんババアがどこにいるっていうんだね!? 貴様も貴様だ! あの子たちが可愛くないのかい!?」


「違うっ!」


 あまりの憤りさにエブラハムは拳を握りしめた。強く握っているからか、手が震えている。だが、ここは堪えて、落ち着いて――彼は一度深呼吸をした。


「……ああ、もういいです。本音言います。私はあなたのやり方が気に食わないんですよ。あの過去の歯車の所有者とメアリーを結婚させようとしたでしょう!? 素性もあまり不明で、何を考えているのか、わからない者にっ! しかも、従兄弟たちも同じように――」


「それがどうしたって言うんだね!? 人が誰かを好きになることのどこがおかしいんだい!?」


「おかしくも何も貴族は貴族、平民は平民という天秤があるんですよ!? これ以上までにない、釣り合わない組を作ってこの国が安泰できると思っているんですか!?」


「私はあの子たちを貴族でも平民でも軍人でもないし、普通の人間として見ているだけだよ」


 今まで叫びに叫び続けてきたエレノアは静かにそう言った。その静かな物言いにエブラハムはたじろぐ。


「確かにあの子たちは貴族と一般人だ。でも、そうである前に一人の人間なんだ。あの子らが選択する思考を持つのは当然のこと」


「しかし――」


 納得しない我が息子にエレノアは苛立つ。もう一度、机を強く叩いた。


「えぇい、貴様は頭が固いねっ! こういうときだけ旦那の面倒な性格が似てくるとは思わなかったよ!」


「父上のことは、今は関係ないでしょう!? 私は身分相応を弁えろと言いたいんですよ! そりゃ、彼らが自ら選択することも必要ですが――」


――ああ、もうっ! この子は何もわかっちゃいない!


「じゃあ、今の自分の身分を捨てろっ!!」


 部屋中にエレノアの怒声が響き渡る。あまりにも大き過ぎて、開けっ放しの扉より騒ぎを聞きつけてきた使用人たちや王国軍たちが顔を見合わせながら、傍観していた。


「貴様はメアリーを助けたいんだろう!? 可愛い、愛しい娘を助けたいんだろう!? それならば、身分捨ててただの親父として行くぞっ! 私も身分捨てて、ただのババアとして行くぞっ!」


 さっさと、行く準備をしろ。エブラハムにそう促した。これに彼は瞠目する。突然、何を言い出すのか。自分の仕事はまだまだ終わらないのに。今日中に目を通しておかなければならない書類は山ほどあるのに。


「早くしろ。今から皇国に行くよ」


「な、何を……」


「メアリーに会いに行くに決まっているじゃないか。こぉんなところで踏ん反り返って、あの子の帰りを待つ気かい? ひどい父親がここにいるものだね」


「…………」


 エレノアは扉前で呆然としている使用人たちに二人の着替えを要請した。そして、王国軍人にはジェット機を回すように促す。着々と準備をして行こうとする彼女にエブラハムは静止をかけた。


「お待ちください。私が行くにあたって、この国はどうなるというんですか?」


「なんだい貴様、政治に関して頼れる友人がいないのかい? いるだろうが、翠政統褒章のやつが」


「いや、そうではなく。この国に君主がいなければ、誰が統率するんですか?」


「こんな戦状況の中で、貴様がここにいる意義はなんだい? ただの政治だけだろ? 貴様は今回の同時侵攻戦のこの国の総指揮監督なんだろう? だったら、もう行くしかないだろ」


 もはや、強引と言ってもいいほどにエレノアはエブラハムを率いて黒の皇国の方へと出発して行くのだった。


     ◆


 喚くイヴァン。そんな彼は黒いロープで縛られており、その間からはおびただしいほどの血が出ていた。ダラダラと垂れ流す中、必死にそこから抜け出そうとする。


「解けっ!」


「……半年前と同じような状況だな」


 ラトウィッジは黒い爪の壁の中へと入ってきて、見下した。銀色の目で睨みつけているその目はハイチ捕獲のときと重なって見えている。


「連行しろ」


「はっ」


 青の王国軍の戦車の方へと強制的に連行されるイヴァン。


 一方で逃げないように手を押さえつけられたアイリを一瞥した。彼女は不貞腐れた様子で大人しくしているようではあるのだが――。


 もう片方の二人組を見た。セロとハイネだ。彼らとアイリが接触しているのには何か意味があるのか。そして、連れていかれた彼はハイチ――にしては声が何か違う。本物ではない?


 ラトウィッジはアイリの方をもう一度見て訊ねる。


「彼は誰だ? ハイチ・キンバーか? そうでなければ、やつをどこへ隠した?」


 その設問にセロとハイネが反応を見せた。その答えが知りたいとばかりに、アイリを見てくる。二人の視線に彼女は一瞬だけ彼らを見ると、ラトウィッジの方へと向き直った。


「あの人はこの町のどこかにいますよ。多分、あっち。東の方の宿の方に戻っているんじゃないっスかぁ?」


「そうか、情報ありがとう。と礼の前に、アイリ・ハルマチ。貴様には『MAD計画』の企画者として『逮捕状』が出ている」


 アイリの目の前に逮捕状を見せた。これに彼女は深く眉間にしわを寄せる。そこから読み取れる表情は悔しさか、それとも困惑か。その答えは後者だった。


「MAD計画? って、あれ? なんだっけ。どっかで聞いたことがあるような」


「とぼけても無駄だ。貴様は三年前、自身の師匠の実験を自分でまとめて学会で発表しただろうが」


「はぁ? あたしがぁ? 学会って?」


 どうやら、しらを切るつもりらしい。だが、証拠は腐るほどあるのだ。ここで逃げるつもりだろうが、逃がしは絶対にしない。


――よかろう。ならば、今ここにあるすべての証拠を突きつけてやる。もはや、逃れられんぞ。


 ラトウィッジはアイリの前に数冊のファイルを投げ置くようにした。これが何かわからない彼女はそれと彼を交互に見る。


「何これ」


「MAD計画の論文だ。こうして、貴様の名前も載っているし、ウンベルト・バグスターの名もある」


 そう言うと、その内一冊のファイルのページを開いて見せた。


「はぁ? 誰それぇ?」


「自分の師匠の名前もとぼけたふりするか? 安心しろ、やつは捕えてやった。今頃王国の牢獄の中にいるだろう」


「……あぁ、へぇ」


 どうでもよさそうな反応を見せてくる。それが腹立たしいと思った。正直な話、これらの論文を探すのに随分と苦労しのに。軍のデータベース内の片っ端から探しまくったのに。更には生物学会の敷地内でも随分と捜索したのだから。ようやく見つけたデータはこのファイルの数冊だけだったが――。


『【MAD計画推進について】:アイリ・ハルマチ著』


「あぁ、確かにあたしの名前が載っているねぇ」


 全く悔しそうな表情を見せない。むしろ、どんな状況なのか理解していないように見えるし、どうでもよさげな反応を見せていた。


「自分が研究したものなのだぞ?」


「いや、だからってこんな危なっかしいことしませんって」


「ほう。ではなぜ、インフェルノで処分予定だったハイチ・キンバーを助け、白の公国の方へと逃亡した?」


 その発言にセロとハイネは大きく反応をした。今、なんと言った? 処分? ラトウィッジはハイチを処分しようとしていたというのか? そんな話は一度も聞いていない。捕縛した。だが、逃げられた。それしか聞いていないはずなのに。


「死なれては困る人だったから」


 アイリの答えに誰もが注目する。彼女の目とラトウィッジの目がぶつかり合った。


「師匠が、自分が作り上げた作品だからだろう?」


 その質問にアイリは不機嫌そうになる。


「違う」


「では、なぜに死なれては困るのだ?」


「言ってどうすんの。何? なんか手伝ってくれんの?」


「誰が貴様のような外道に手を貸すものか。どの道、その野望はここで潰えるのだよ」


「うわっ、それは本気でヤバいやつじゃん。どうしよぉ」


 珍しくアイリが焦ったような声音が聞こえた。表情はそうでもなさそうであるが、誰とも視線を合わせずに黒い壁の方を向いて何かを考えているようではあった。


「認めろ。貴様がハイチ・キンバーを半異形生命体に改造した加担者だと!」


「だから、違うって言ってんの! あたし『は』MAD計画も企てていなければ、あんなやつの体を改造するかっ!」


 怒り爆発、とでも言うようにアイリはラトウィッジを睨みつけてきた。敵意むき出しで歯を立てている。


「なんで? なんで、あたしが? ばかばかしい。本当にあんたらも反軍もコインストもみんなばかじゃん!? そんなの興味ないし!」


「ならば、どうしてトルーマン隊長を騙して学徒隊に編入してきた? やつに近付くためなんだろう?」


「騙してなんかない! 向こうが勝手に同情してきたのがいけないんでしょ!? あたしはただ、金なし宿なしで行く宛てもないという事実を言っただけなのに!?」


 そんな理由でエドワードが編入隊の許可をするものかとアイリを見た。反抗的な目、それが気に食わないとラトウィッジは思う。


「そんなに否定するならば、今ここで証言を述べろっ! 貴様がMAD計画を企画していない、という理由を洗い浚い、すべてを言え!」


 アイリに怒声を上げるラトウィッジ。彼女はそれに腹が立ったようで思いっきり舌打ちをした。もう逃げられない。どうしようもないとでも見切ったのか、盛大にため息をついてきた。


「あぁ……だったら、言ってやるよ。そんなに知りたいなら教えてやるよ」


 途端に口が悪くなった。目付きも悪い。とうとう本性を現したか。これで証拠はおろか、証言すらも整う。ヴォイス・レコーダーの録音の準備をした。



「あたしは『アイリ・ハルマチ』じゃない」



 予想と違った発言に誰もが眉をひそめた。彼女がアイリ・ハルマチでなければ、眼前にいる人物は一体誰なのだ。


「……仮に貴様がアイリ・ハルマチでないとするならば、貴様は誰だ」


 ラトウィッジは戸惑いながらも問う。すぐさま答えてくれた。


「名なし」


 名なしと自称する彼女は鼻でそう一蹴した。あの黒ずくめの男が彼女に言い放った言葉、『名なし』をセロとハイネは覚えている。


「……ディース?」


 ふと、ディースのことを思い出した。彼女は異形生命体を操っていたが――まさか、そんなことはあるまいと考えていたハイネに名なしは「正解」と言ってくる。


「どっちに対して言ったのかわからないけど、ディース『が』本物のアイリ・ハルマチだね」


「な、なんで?」


「なんで、なんでねぇ。そりゃ、なんででしょ? ただ、あたしはディースから名前その物と記憶を盗んだだけ。だから、MAD計画も立てていないし、あんなばかばかしいこともしていない」


「キリ君の気持ちは?」


 その発言に名なしはハイネの方を見た。じっと黒い目が彼女を見据えている。


「本物」


 名なしは微笑んだ。そして、ラトウィッジの方を見る。


「だから、解放してくれない?」


「ハイチ・キンバーのところまで案内するならばな」


「構いませんけどねぇ」


 一応は信じてくれてはいるらしいが、まだ疑心は解けない。そもそも、他人の名前を盗むとはいかがなるものなのか。


     ◆


――許さない。


 その思いがハイチの頭の中で埋め尽くされていることに気付いたのは黒い鎧を身にまとった女の異形生命体の頭を掴み、地面に叩きつけたとき。自分と同じように思考はある人型らしい。


「あっ……!」


 レナータの声が聞こえた。彼女の方を見ると、ひどい怯えようだった。体中に傷痕がある。ああ、痛々しい。可哀想に。自分のせいでこうなってしまった。


「よそ見してんじゃねぇよ!」


 女の黒い拳が強烈にあごに当たる。そのままレナータの方へと飛ばされてしまった。異形なる者、異形生命体の拳を受け止めてもなお、ハイチは立ち上がった。もしも、これが普通の人間であるならば、あごを粉砕骨折し、脳震盪を起こしていることだろう。


 地面へと鼻から、口から血が垂れていく。ハイチはレナータを庇うようにして、黒い鎧のバケモノを見た。


「てめぇ、よく見たら……」


 改めて女の顔を見れば、見知った顔だった。


【お兄さんがハイネを笑わせればいいんですよぅ】


 サバイバル・シミュレーションで少ししか交流はなかったものの、この女を知っている。彼女はヤナだった。


「その格好、無様だ腕なしよ。お前はコインストで有能なやつだと――」


「その先は言うなっ!!」


 聞かれたくない。その思いでハイチは声を荒げる。まだ彼は腕なしとしての力を使っていなかった。ある、手袋は手に収まっている。だから、見られたくない。レナータには腕なしとしての姿を見せたくなかった。それは何も彼女だけに限った話ではない。ハイネもセロにも見せたくない、醜い本当の己の姿。


 鼻血と口元から血を垂らしながらヤナを形相の睨みを利かせる。その姿があまりにも滑稽過ぎたとでも思ったのか、彼女は引き笑いをした。


「何がおかしい!?」


 ヤナに対して身構えると、彼女は急に真顔になった。先ほどまでの笑いはなんだったのだろうか。そう思わせるような急な静けさに、ハイチは口元を引きしめた。それにまた笑い始める。


「ぶわぁか! あれぇ? もしかしてぇ腕なしさん、隠したいの? 隠したいのぉ? ひひっ、人でなしのお前が隠せるわけないだろ」


 目にも止まらぬ速さでハイチのもとに近付いてきた。ヤナは腕を剣状の形に変え、彼の腕を斬り落とす。その光景を後ろから見て、レナータは目を大きく見開いた。いや、それだけで驚いてもらっては困るぞ。なんせ、ただの人間が驚くのはここからなのだから。


 切断口からあふれ出す鮮血。周りには血が飛び散っているように見えるが、徐々にその傷口は収まる。やがて、ないはずの手がその切り口から生え出してきた。


「ひっ!?」


 レナータの悲鳴に反応するかのように、ハイチは振り向きたくても振り向けなかった。明らかに自分を人として見ていないだろうから。


 生えてきた手はヤナと同様の黒い鎧と同じような真っ黒な手があった。その手が震えてくる。今の自分を受け入られそうにないから。


「あ、ああ……!」


 絶望的表情を見せるハイチの頭を掴んで、レナータにその顔を見せた。もちろん、それは彼女が今感じ取っている感情を、表情を読み取ることができた。


 レナータは自分を人として、さっきまでの自分以外の別物としての視線を向けていた。その青い目から窺えるものはただ一つ。恐怖だ。こっちを見るな、そのバケモノの目でこっちを見ないで。彼女の視線のすべてが物語っている。わかりたくもなかったレナータの本音。知りたくもなかった、その顔。


 同時にハイチにもレナータに対する恐怖心が増してきていた。今まで、恋焦がれていた相手をそうとは思えなくなってしまう。彼女は人間で、自分はバケモノ。


「ちゃあんと、見てあげなよぅ? 二人とも」


 アイリのことをカムラ女と呼んでいた。その理由は腹が見えない上に、何かにつけて唆そうとする人物だったから。カムラはキイ教に出てくる人々を欲の深淵へと叩きのめす悪魔。まさしく悪の権化となった悪神。マトヴェイ曰く、カムラは存在するべきだと言った。悪も必要だと言っていたから。それに否定はしない。そういう考え方もあるんだなと思っていたから。だから、アイリ――カムラ女は存在しても構わないと考えるようになった。たまに腹立つ言行するけど。


 しかし、そんなアイリよりもヤナの方が、上回っているような気がした。ハイチは思う、カムラ女以上に最低最悪化身がこの世に存在する、と。


 動くことがままならないレナータにハイチを近付けた。それに彼女は涙を目に浮かべている。それが傷付く。心に。もうあの笑顔を自分に向けてはくれない。これからはその顔しか見せてくれないだろう。つまりはあの至福の時間は二度と永遠にやってこない。


――俺は嫌われたんだ。


 レナータの怯えよう。ああ、哀しきかな。


――ああ、そうかい。


 心の奥底で自分自身が己を笑っている気がした。自棄という言葉が一番似合いそうでたまらない。そう、それが余りにもおかしくて――。


 笑い声が漏れた。


「おかしい?」


 ハイチの声を聞いて、ヤナはにやにやと笑ってくる。その質問に彼は「ああ」と肯定の言葉を口に出した。


「どうでもよくなった」


     ◆


『幽霊さん』とイダンは礼拝堂へと続く渡り廊下の近くの部屋に隠れ込んでいた。廊下にはあまりにも異形生命体の数が多過ぎて、突破できない状況になっているからである。こんなものに遭遇して万全の状態でハイン殺害なんてできるはずがない。


「弱りましたなぁ」


「しかし、妙なやつらばっかりですねぇ。この時代はあんな生物兵器がいるのか」


「……あの、幽霊さん。あなたって、いつの時代の方なんですか?」


 自身のことを幽霊と言ったり、まるで、このご時世以外は異形生命体がいないとでも宣言しているようだ。そんな『幽霊さん』は青の王国の人物ではあるとはわかっているが、年代が特定できそうになかった。服装を見る限りだと王国の民族衣装だとはわかる。薄い黄色が混ざった白い服に、青色の九分丈のズボン。足下は茶色いサンダルである。そこに濃い青色のマントに腰は軍刀が提げられていた。推測で判るのは数百年前辺りの格好をした人だということ。


「俺? 俺はね、いつ頃死んだっけか」


 どうやら、自分が死んだ年代を覚えていないらしい。


「確か、あのときは……そう、思い出した。俺、食中毒で死んだんだ」


「食中毒ですか?」


「うんうん、嫁が作った飯がなぁ。時間経って、腐っていたんだろうね」


「そ、そうですか」


 なんとも悲惨な死因だな、とイダンは鼻白んだ。『幽霊さん』は幽霊だ。死因は覚えていたとしても、思念体のような物だから自分が生きていた時代なんて覚えていないんだろうと諦めようとしていたが――。


「でも、嫁って目付きが悪いときもあるけど、基本可愛いんだよなぁ」


 生きていた頃を思い出し始めたのか、そんなことをののほんと言い始めた。


「こう、なんて言うの? 背が小さいのに何もかも一所懸命でさぁ。メアリーに似ているのなんのって」


 そう言っているが、イダンは眼前にいる『幽霊さん』の方がメアリーに似ていると思っていた。そして、そのことを思わず口に出す。


「でもあなたにも似ていらっしゃいますよね。その面影があなたにありますし……」


 もしかしたら、自分の妻とメアリーを重ねているのかもしれない。そういう別の思案を思い浮かべていると――。


「そりゃ、顔が似ているのは当然だろ? 俺の子孫なんだし」


 鼻水が出そうになる。まさかのカミングアウト。ということは――。


「あ、青の国王……?」


「うん、一応俺、初代」


 まさかのヒューイット家初代が目の前にいるとは。今まで色んな国の王に会ってきたイダンでさえも恐れ多き人物である。それは数百年も前に青の王国を建国したライアン・ヒューイットなのであるから。


「ほ、本物ですか? えっ? 幽――ヒューイット様? 青の王は失礼ですけど、亡くなられたのって随分お年召されたときですよね?」


 自分の記憶が間違っていなければ『幽霊さん』――ライアンは七十八歳で亡くなっているはずだ。死因は知らなかったが。


「……うーん、俺もよくわかっていなくてね。気がついたときはウィルソンが王位についたときからずっとこの姿だったと思うけど」


「ちなみに、その王は何代目でしょうか?」


「えっと、ありっ? いくつだっけか? メアリーのひいじいちゃんだったはずよ」


 そうとなると、現在の青の国王が四十三代目だから――逆算すると四十一代目となる。


「とにかく、俺はこの姿になったときから王国とその子孫たちを助けたいからこうして、ね……」


「お気持ち察し致します。――やはり、廊下は無理ですかね?」


 話が脱線し過ぎてしまった。今一度にイダンは扉の鍵穴から廊下を覗く。駄目だ、開けることさえできない。うようよと異形生命体がひしめき合っている。まるで、礼拝堂には行かせないぞ、とでも言うようなこの鉄壁の守り。


「そっちはダメでも子どもたちは外から行こうとしているね」


 ライアンは窓の外を見る。イダンもつられてそちらを見ると、キリを筆頭にケイとワイアットが走って礼拝堂の方へと向かっていた。


「ああ、あの子は過去の歯車をお持ちですよね。もう一つ、あるんでしたっけか?」


「さあ? この世には過去の歯車も未来のコンパスも『二つ』存在しているらしい」


「彼は黒の王国時代に盗みに入った方の子孫ですかね?」


「じゃないみたいよ。彼の先祖は、むむっ……見えにくいなぁ。複雑過ぎて、混ざり過ぎて……」


「混血児だからと言って、今時は珍しいわけではありませんしね」


「いや、そうじゃなくて、あの子の心情だよ」


 ライアンのその言葉にイダンはどういうことだ、と訊ねた。先祖を調べるのに心情を見なくてはならないとでも言うのか。


「いやいや、先祖はわからん。だから、代わりにバンダさんの手伝いを拒否した心情を知ろうとしたんだけど」


「それは別に構いませんよ。青の王国の方々が黒の皇国を嫌うのがわからなくはないので」


「そぉ? んー……でも気になるなぁ」


「あっ」


 突然、イダンが声を上げる。それにライアンが「どうした?」と声をかけた。正直な話、唐突に声を上げてきたからびっくりしたぞ。俺、幽霊だけど。


「いえ、思い出しました。ここからあのMADたちに見つからずして礼拝堂へ行く方法を」


 イダンはそう言いながら、床に敷いていた絨毯を捲り上げた。むき出しになって現れた白い床には一つの扉があった。


「これは?」


「礼拝堂の地下へとつながる地下通路でございます」


「へぇ、こんなのがあったんだ」


「私も早くに気付いていればよかったんですが、今の皇国内では派閥関係によりすっかり忘れていたんです。さあ、行きましょう」


 そうイダンは言うと、扉を開けた。懐に一本のナイフを隠し持ち、明かりを手にして中へと入っていく。それに続くようにしてライアンも向かった。


「礼拝堂の地下につながるんだよな?」


「ええ、そうですよ」


 明かりなしでは前が全く見えない、人一人がようやく通れるほどの狭い通路。イダンを先頭に歩いていく。


「メアリー、礼拝堂の地下にいたんだ」


「そうなんですか!? ならば、そちらの方にもいかねば――」


「そう、そこでバンダさんにお願いがあるんだ」


 ライアンのその一言に立ち止まった。彼は先ほどよりも透けて見えるではないか。


「俺は元々キイ教信者ではないから、この先の礼拝堂には行けない」


「そうですか」


 それならば仕方あるまい、とイダンは小さく嘆いた。


「でも、メアリーはまだ諦めていない。家に帰るんだって俺と約束をしたんだ」


 話を聞きつつ、イダンは相槌を打つ。


「それはメアリーがあんたに恩があるから、まだ希望を持っているんだ。どうか、あの子を……子どもたちを助けて欲しいんだ」


 ライアンのその切実な願いにイダンは黒の皇国民としてあるまじき行動を取った。それは青の王国式の敬礼である。


「かしこまりましたっ」


     ◆


「痛いっ!」


 強引に礼拝堂地下から礼拝堂へと連れてこられたメアリー。この場には彼女とハイン以外、誰もいない。ただ、周りに血が飛び散っており、普段は厳かで華美ある場所のはずが不気味な場所としか思えなかった。


「何をするんですか」


「何だって? 僕は疑問しか思い浮かばないよ。訊いてもいいかい? 僕たちは今日で何になる?」


 仮面を外そうとしない、ハインは軍刀の刃先をメアリーに向けていた。下手すれば、彼は自身の首を刎ねるだろう。そんな不安があるが、恐れてはいけないと思っていた。純白のドレスを握りしめ、ハインを見上げる。


「私たちは何にもなりません! まだ、文通すらしていない友人未満なのにっ!」


 逆上したハインはその軍刀を椅子の背もたれに向けて振り落とした。そこに挟まったまま、柄から手を放す。早々と足音を立てながら、メアリーの逃げる隙も与えずに顔を掴んだ。


「手紙は貴様が返信すら寄越さねぇからだろうがっ!」


 そう吐き捨てると、突き放した。その拍子にメアリーは尻餅をつく。床にあるまだ乾いていない血が、彼女のドレスを赤茶色に汚していった。


「えぇ? 最初の数通は届いていないと思ったから、同じ内容を何度も何度も書いてやったというのにっ!」


「あれは父が――」


「言い訳するなっ!」


 ハインの大声がその場に響いた。椅子の背もたれに叩きつけて、そのままの軍刀を抜いた音が聞こえる。ゆっくりと近付いてくる音が聞こえる。怖くて顔を上げることができやしない。ただ、血がこびりついた床を見つめるだけ。


「貴様が文通をしようと言ったのはただの戯言か?」


 ゴツゴツとした、首筋に鳥肌が立つような足音。


「人の気も知れないで、貴様は毎日送ったあの手紙を破り捨てていたのか?」


 低く、不気味な声が耳に入ってくる。足音が止まった。ハインとは至近距離になる。そっと、顔の方を見た。見下すは無表情の仮面。思い出すは南地域の保護地区より出現した異形なる者――腕なし。


 フラッシュバックする草木についた血。死にかけのキリ。美しく淡い光を帯びた剣。ハインの手には不気味に光る銀色の偃月刀。よみがえってくる、死の恐怖。


「ははっ、これだから青の民は情なしか。その愚民どもを束ねるトップの遺伝を持つ貴様なら、なおさらだろうよっ!!」


 そう罵声を飛ばすハインが軍刀を真上に掲げた瞬間――。


 礼拝堂の窓から、扉から誰かが踊り込んできた。ガラスの割れる音、ドアの開けられる音に反応したハインは手を止めたまま双方を見る。


「大臣、なぜここに」


 扉からはナイフを手にしたイダンが。そして、ガラスを三枚割って侵入してきたのは拳銃とナイフを手にしたケイとワイアット――その二人の後ろにはメアリーが誰よりもずっと会いたかった人物がいた。その人物の手には淡くて美しき光を帯びて、歯車みたいな錆びた剣を手にしていた。


 ハインは不思議な剣を手にする伸びきった茶髪の少年に対して軍刀を差した。


「……貴様、何者だ?」


 差されたお礼に、と少年は光がまとう剣先を向けた。


「俺は青の王国軍の元学徒隊にして三銃士軍団員のキリ・デベッガだ」


 少年――キリはハインをその薄くて青い目で睨みつけた。


「俺たちの友人、ライアンを返してもらうっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ