罪人
――自分が犯した過ちは……。
仰向けになりながら、夜空に輝く色とりどりの星を眺める。じっと見ていれば見ているほど、自分がいかにちっぽけな存在であるかが知らしめられる。冷たいと生温かな風が混じりながら体をなでてくる。キラキラ、キラキラと己が悩んでいることを嘲笑うかのようにして星々は輝いていた。
「…………」
星空に見飽きて起き上がった。周りを見ると、欝蒼とした木々が立っている。背中についた土埃や草を掃う。
眼前にある山を見た。それは世界で一番高い山と称されている山だ。頂上付近には丸い穴が空いており、そこから月が覗かせていた。まるで目玉みたいだ。金色に輝く目。もしも、その山を登りきったらば、己自身の目に映る景色はどう見えるんだろうなと実現することができないような妄想を働かせる。誰もが言うだろう。感動するに決まっている、と。それは世間一般の答えである。
山に背を向けて、下の方へと続く山道を歩き出すも、追い風がその足を止めさせようとした。あの山から風が吹き下りてきているようだ。
「懺悔しろ、自分の罪を背負い続けろ」と、山の風がそのようなことを自分に言っている気がした。そう言ってくる風に苛立ちを覚える。忘れたくても頭にこびりついた『それ』は一生取れないだろう。今更になって、隠し続けてきた『それ』はすべてではないが、ボロボロとこぼれ落ちそうなほどにまで人の目にさらされている。山の風が自分に皮肉っているようにも見えていた。
――くだらない。
「……ははっ」
面白くもなんともないのに、笑い声が込み上げてきた。後悔しても遅いと風が笑ってきた。ばかにしているのかと少しばかりの怒りは隠せないが、その辺の自然相手に怒鳴り散らしても自身に得るものなど何もないのは百も承知。
「クソったれ」
眉間にしわを寄せた。山に舌打ちをすると、下山していく。歩を進めても、進めても視界には同じような木々がそびえ立つ。それがなぜか腹ただしい。本当に自分は自然にばかにされているらしい。
――何が裁きだ。
木々がざわついている。
――何がルールだ。
ふと、その場に立ち止まって空を見上げた。木々に囲まれた夜空は狭かった。まるで今の自分には空に映る少ししか見えない星の数ほどの選択肢しかないと言われているようである。
前を見た。そこには自分にとって忌々しい少女が立っていた。彼女は無表情でこちらを見ている。
「すべてはあんたが悪い」
その言葉に拳を握りしめる。
「違う」
否定をしたかったから、否定をした。だが、少女はそれを許さない。
「あたしが死ねないのもあんたのせい」
「違う」
勝手に自分が死ねないのをこちらのせいにしないで欲しかった。己にも少女にもすべてのものにもうんざりする。元凶は自分ではないと大声で否定したかった。
――俺が悪いんじゃない。
五億九千八十九回の運命を送る少女は、眼前にいる白髪の青年が自身の非を吐くまでひたすら待ち続けるのである。




