鎹君の欲求不満 vorbesc.鎹
※前書きは(出来れば)必ずお読み(頂いた方がいいかと思ったり思わなかったりするのでお読み)下さい。
さてさて。前書きをすっ飛ばそうとしていた皆々様。ちゃんと読んでくれていますか?
これから書く前書きを読まないと、後悔する人がいたりいなかったりするかもしれないので、確実に目を通して下さいね?
では本題に。
この話は18禁すれすれのお話です。いえ、そこまで18禁18禁はしていないと思うのですが、保険のために言っておきます。
なので、その手の話が苦手な方は回れ右をして下さい。お願いします。
そして、この話はvorbesc.鎹です。登場人物は鎹君と進藤さん。そしてオプションで小日向君、です。
鎹君が進藤さんにあれやそれやするのを見るのが嫌な方(そんな奴はこのばんぱいあ自体読んでないだろと思いますが嫌な方)は、振り向かずにお引き取り下さい。お願いします。
そもそも鎹君に憐れみを抱いている方は、鎹君にさらに強い憐れみを抱き、可哀想な鎹の奴にエールを贈ってしまう恐れがあるかもしれませんので、この話を見なかった事にして頭の中から抹消し、健全(?)なばんぱいあだけをお楽しみ下さい。お願いします。
さてさて。
それでも私は読みますけど?と言われる方。
そんな方は、この一点を守りこの作品に目を通して下さい。
『読み始めたら最後の一文まで確実に完全に読了し、その後、こんな鎹君の夢に思いを馳せてあげる』
鎹君のために、上記お約束下さい。
お願いします。
ではでは。
前書きを終わります。
進藤がソファーで寝ていた。
「進藤っ、おい、進藤ってば!」
ソファーの上、毛布をかけて横向きの状態で気持ち良さそうに寝ている進藤を起こそうと、俺は進藤の肩を揺さぶり声をかける。が、進藤は起きない。これで通算何度目の奮闘だろうか。
「しんどーっ!」
ガクガクと更に激しく揺さぶれば、進藤が薄く目を開ける。やっと起きたか、と思った俺だったが進藤の薄く開かれた瞼は襲い来る眠気に堪える事が出来ず、またゆっくりと落ちていった。
暫くすると、すーすーと言う進藤の安らかな寝息が聞こえ始める。よほど疲れているのだろうか。
「…………」
ここは進藤の仕事場の従業員部屋内のソファー。入ってくるのは身内のみなのだが、さすがにここにこのままの状態で進藤を放置して行く訳にはいかない。そう思い奮闘すること数分。進藤の眠りはかなり深いようだ。だが、そこまで疲れているのなら家に帰ってちゃんとした自身のベッドで寝た方がいいだろう。疲れもその方がとれるだろうし。
「しんどーう」
もう一回チャレンジして見るが、進藤は起きなかった。相当だ。これだけやっても起きないって、どれだけ眠りが深いのか。
俺は進藤の頬に張り付く、短くなってしまった髪の毛を取り払ってやる。昔は長かったが今は短い。短くなってしまった。
俺が頬に触れていても進藤は微動だにしない。
「…………」
掌で包み込む様にして頬に触れる。指で優しく撫でる。さらりとした肌。ずっと触っていたくなる様な肌の上、指を移動させて唇に軽く触れ、すっ、と撫でる。柔らかい感触。ふにふにと触る。進藤が少し身動いだ。だけど、起きる気配はない。
俺は手を離しからだを移動させる。ソファーで眠る進藤の上。見下ろす様にして、片足だけソファーに乗っけて片手で背もたれを掴み、体が倒れないように支える。
もう片方の手は進藤の顔のすぐ横。少しだけあるそのスペースに陣取る。
「進藤?」
顔を近づけもう一度だけ名前を呼び、反応が無いことを確かめ、俺は進藤の頬に軽く口付けた。
当たり前だが進藤は身動ぎもしない。
寝返りをうち、仰向けになる進藤に俺は体勢を移動させ、体ごとソファーに乗っかる。狭いソファー。進藤の脚の間になんとか脚を乗っける。狭い。
片手は進藤の顔のすぐ横に置いたままで、もう片方の手で進藤の顎をそっと掴む。
そのまま進藤に顔をゆっくりと近づけて行き寸前、一応の意味で俺は進藤に問いかける。
「進藤、キスしていい?」
少しだけ待つが進藤からの返事はない。返事がないからいいよな、と思った。駄目だとは言われてないわけだし。
俺は進藤の顎を掴んだまま進藤のその柔らかな唇に口付けた。唇を重ね、ぺろりと舌で舐め上げれば進藤の口許が僅かに開く。俺は角度を変え、また唇を重ねて僅かに空いたそこから今度は深く口付けていく。
舌を差し込み進藤を探す。すぐに見付けて絡ませる。進藤が少しだけ呻くが起きる様子はない。甘い余韻を楽しみつつ俺は唇をゆっくりと離した。
「……進藤、起きないのか?」
少し身動いだ進藤に声をかけるがやはり起きないらしい。嫌がる様に顔が横を向く。
「そろそろ起きないと、危ないぞ。お前」
聞いていないのに自分を擁護するためそんな言葉を吐いて、俺は進藤の首筋に顔を埋めに行く。顔を横に向け、乱れた毛布から見える進藤の首もとは顕わで綺麗。ちゅ、と軽くキスしてから下へ下へと自身の唇を這わせて行く。進藤の従業員制服のシャツのボタンが行く先の邪魔をする。
上体を起こし、俺は進藤のそのシャツのボタンに手をかけ外していく。一つ、二つ、三つ。そこまで来てから手の動きを止めた。
「…………」
進藤の肩を掴んで揺さぶる。
「おいっ、進藤!起きろっ!!」
むぅーっ、と唸ったが進藤は起きない。
はぁ、とため息。俺は進藤の顎を掴み、眠る進藤にまた唇を重ねた。すぐに舌を差し込み進藤の口内中を動き回ってやる。ピクリと揺れ身動ぐ進藤が逃げないように、顎を掴む手に力を込め、また角度を変え深く唇を重ね合わせ口付ける。眠りの中、無意識に逃げ様とする進藤に、深く深く舌を絡ませキスを貪る。苦しそうに進藤が呻いたがキスはやめなかった。
「……っ……ぅ」
進藤が首を振って逃れようとする。
多分、そろそろ起きるだろう。そう思ってさらにより深く唇を重ね合わせた。ギシリ、とソファーが軋む音。深く口付ければ、酸素を求めて俺から逃れようとする進藤の口の端から、俺のか進藤のか分からない唾液が流れて落ちる。進藤の手が宙を掻くように僅かに動く。もしかしたら溺れてる夢でも見ているのかもしれない。
宙を掻く進藤の手が俺の服に届き、掴む。助けを請うようにぎゅっ、と握りしめられるが俺は重ねた唇を離してはやらなかった。
「…ぅ……やっ……」
顔を背けようとする進藤の顎を再度掴み直し唇を重ね続ける。唾液による水音と俺の吐息と進藤の苦しそうに呻く声。さすがに俺の息もあがってくる。そんな中、進藤がようやっと薄く目を開けた。
俺はようやく進藤の唇から自身の唇を離す事が出来た。は、と一息。
そして進藤に静かに声をかける。
「進藤?」
「……ぅ」
トロンとした進藤の目はまだ半覚醒状態なのだろう。焦点のあってない視線で、じっ、と上にいる俺を見たまま少しも動かない。
だけど「起きたか?」と聞く俺に「……起きた……」との返事。
だがこの進藤、果たして今の今まで自分が何をされていたのか理解しているのだろうか。進藤の腕が動いて唾液がつく口を拭った。唾液の付いた自分の手を見る。ちなみにそれ、お前だけの唾液じゃないからな。
そうしてまた進藤は俺を見上げ、「かすがい、くん?」と意識朦朧に口にする。そうだよ。鎹君ですよ。
「何だよ」
「……何で、ここにいるの……?」
言うに事欠いてソレ。
俺は盛大にため息。進藤は多分、今自分が何をされていたのか気付いていない。まだ頭が回らないのか。まだ寝惚けているのか。
「進藤、お前もっと大事なこと聞いた方がいいぞ」
「…………?」
「例えば、何で俺がお前の上に乗っかってるのか、とかさ」
決定的言葉を吐いたのに、進藤はぼんやりしたまま動かない。通常時じゃ絶対に考えられないそのあまりにも無防備な進藤の首筋に手を添え顔を近づけていく。進藤の顔は俺からは見えなくなる。
「まだ……、気付かないのか?」
そのまま首に唇を這わせる。
這わせて滑らせ、啄む。そうしてしばらく、進藤が気付いた。
ガシッ、と俺の肩を掴んで押し上げる。俺は素直にそれに従う。俺の眼下に広がるのは完全に起きたらしい俺の下にいる進藤の、怒ったような恥ずかしいような歯を食い縛り何かに耐えるような、そんな顔。
「気付いた?」
「……っ!!」
そう言ってやれば、進藤は俺を睨み付け顔を赤くする。
「進藤、お前全然起きないのな」
「……っ!!つ、疲れてたんだよっ!!」
必死に俺を退かそうと肩を押すのだが、俺は退く気はなかった。足も動かしたいのだろうが、俺の足が間にあって動かせないらしい。狭いソファーの上。進藤は動けない。そんな進藤を見下ろす。
俺にここまでさせたんだ。少しぐらい苛めてもいいだろうか。いいだろう。きっと。
首筋に指先で優しく触れ滑らせる。それだけでビクリと肩を跳ねさせる進藤。さっきとは偉い違いだ。
「ずっとキスしてたのに起きなかったぞ」
「……っ、なっ!!」
かっ、と赤くなる進藤の頬に触れる。さっき触れていた時にはなかった進藤からの反応がある。俺の手を横目で見やる進藤の顔は逃げたくて逃げたくて堪らない、いつもの進藤のそんな顔。
「こうやって触ってたのに、全く起きなかったぞ」
「…っ…か、鎹君っ!」
頬に触れる俺の手を退かせようと進藤が意地で顔を背けようとするが、俺はしっかりと片手を添えたまま。進藤はどうにかして退かせようと奮闘するが、俺の手は微動だにしない。
「こうやって、触ってたのに気付かなかった」
頬に添えた指で、俺が先程まで口付けていた進藤のその柔らかかった唇を優しくゆっくりと撫ぜ上げる。
「――――っ!!」
ばしっ、とすぐに俺の手を払いのけ、進藤は自身の顔を見えない様に両腕で塞ぐ。
「進藤」
「……っ、もういいってばっ!!」
苛め過ぎたらしい。
俺は苦笑する。何がもういいのか分からない。
「進藤」
「……もういいっ」
「進藤って」
両手で顔を隠したままの進藤に呼びかけ続けるが進藤の手がそこから動く事はない。顔を見せないように。表情を隠すように進藤は自身の顔を被う。
俺は仕方なくそんな進藤の肌を指で撫でる。ボタンを開けて露になったそこに指を滑らせ、服を横に割ろうとしたら進藤が動いた。
「……っぅ!!」
涙目の進藤。
必死に俺の手をガシリと掴む。俺の手を止める。進藤の顔が見えた。
「しんどー?」
「……っう、ぅ!!」
涙目で睨み付けてくる進藤のあまりの可愛さに俺は自分が相当ヤバイ事を知る。俺の口許は歪む。
「なぁ進藤。俺の事、好き?」
「……っ!!」
知っている。
彼女が俺を好きなことなど、ずっと前から気付いてる。だけど、その言葉はまだ貰えてない。
「ねぇ、進藤。俺の事好き?」
「……っ!……っ!」
問いかける俺に睨み付けてくる進藤。意地でも口は開かないつもりだろう。このままだと平行線。だから俺は動く。
すっ、と進藤の肩口シャツをズラす。さすがに進藤もそれは止める事が出来なかった。細い肩が露になる。下着の紐が見え、俺はそれに手をかけ弄ぶ。進藤がそれに可哀想なぐらい怯む。
そうして俺は進藤に笑顔を向け。
「なぁ、進藤。俺の事……好き?」
涙目の進藤に脅すようにしてそう言った。
――――――――
僕の目の前。
鎹君が両手を顔に当て、表情を隠すようにして口を閉ざし黙り混み項垂れる。
「鎹君……」
「お、俺っ、もし進藤が寝てる所見かけたら自分を抑えられる自信ないっ!」
何だかもう泣いちゃいそうな鎹君は、今もまだそんな夢を見てしまった自分を責めて責めて自己嫌悪中だ。
僕は鎹君の夢の話を聞いてこう思った。
鎹君の限界は近いな、と。




