第2話
「君…ひどい怪我をしているでしょう。…はじめて会ったときから気づいていたけど。
話してくれないし、秘密にしておきたかったんだと思って。」
確かに俺はロアに怪我をしていることを言っていない。……じゃあなんで知ってんだ!?初めて会ったときには気付いてたって…俺は怪我してるとこは全部服で覆っておいたのに。
何がなんだかわかんなくて、冷や汗がとぎれることなく体中からあふれてくる。
「だから、怪我なんてしてるのに酸性雨の中歩いちゃダメだよ。…この前もアレが君の限界だったでしょ。」
すべて見透かされている。ロアには隠し事なんてできないんだ。……恐い。ロアは俺のことをどこまで知っているんだ?さっきは俺の住んでいた村をあてた。…もしかして、コイツ!
「確実に死ぬのに…君は行くの?怪我は悪化して、化膿して、空腹に耐えて、必死に歩き続けて。」
次の言葉を聞くのが恐い。コイツは知っているんだ!俺は思わず両耳をふさいでうつむいた。聞きたくなかった。
「そこまでする価値があるのかい?……君の村の人々は…。」ロアの顔は見えない。…でも笑っている気がする。
やっぱり知っていた。わからせるような仕草をしたつもりはない。なんだコイツは。
「ねぇ。聞いてる?」
ロアが俺の肩に手を置いた。驚くほどに冷たい手だった。ふいにロアの手を払い除けた。
触れられるのさえイヤだと感じた。
「うるせぇよ。…お前に関係、ねぇっつぅの。」
俺が必死に言ったことでさえ、ロアにとってどうでもいいことなんだ。
「関係あるよ。一緒に住んでるじゃないか。」今度はロアの顔が見えていた。確かに、“笑っていた”。
「強制じゃん。」やさぐれていると言っていい俺の言葉を聞いて、ロアは再びため息をついた。
そして俺から少し離れると面白がりながら言った。
「じゃあ、君がなんで死ぬ思いをしてまでここに来たのかをもっと詳しく教えてよ。
さっき僕が言ったことなんて全部勘なんだからね。」
ウソツケ。俺は心の中で呟いた。ついでに、現実ではけなせない分、心の中でおもいっきりけなしてやった!
っと…それどころじゃない!条件もなく自分の…自分の村の秘密を話すなんて絶対にゴメンだ!
「話したら、行かせてくれるのか?」とロアに聞いてみた。
「……まぁね。」至極曖昧な返答だ。しかし話さなかったらこのまま何にも変わらない。それなら話す他に道はないさ。
俺は覚悟をきめた。