表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それなら、こいつと手を組みます ーー詐欺師扱いされて追放されたので、怨霊と手を組んで独立しましたーー  作者: sirosugi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/42

30 旅は道連れ、世は情けとはいかないらしい。

旅の始まりのちょっとした話。

 思い立ったが吉日、兵は拙速を尊ぶと言ったものだろうか、依頼を受けた翌朝には馬車と馬を用意されていた。そして、そのまま街を出発し、半日車窓の景色はだいぶ変わっていた。


 平原といっても、すべてが平らというわけではない。なだらな起伏の丘や盆地などはあるし、意外なところに森や沼などがあるため、一時間と進むと景色が変わっているのが面白い。ただ街道がなければ絶対迷っている自信がある。その街道だって、街から離れればしょぼい。目印代わりに岩が置かれているだけで、長い歴史の中で踏み固められた簡素な物でしかない。雨が降ったらぬかるんで通り抜けるには時間がかかるだろう。


「すいません。今日はこの先にある寄合所で、一泊しようと思いますがいいですか。」

「任せますー。」

『なんなら夜通しでも構わんぞ。わっちとこやつらなら余裕じゃ。」

「ひひーん。」

「ありがたいですが、すいません。それは最後の手段でお願いします。あまり目立つのはちょっと。」

『そうか、残念じゃのう。』 


 御者台の窓ごしにそんなやりとりをしながら、俺は地図で現在地と目的地を確認していた。もっとも分かっているのは、最初の目的地とそこに至るまでによる予定の休憩地点だけで、移動はタチアナさん達に丸投げしている。見た目は馬車の客室でくつろぐダメ男だが、ホントにやることがないのでしょうがない。

 で、最初の目的地は、オフツァーという街だ。ザパートオチアスからは馬車で五日ほどの距離にある町で、酪農が盛んで、俺が依頼を受けるきっかけとなったチーズやバターはこの街で作られたものらしい。別に観光とか仕入れのためではない、なんでもこの街では一か月ほど前から妙な霊障と事件が続いていて、産業に影響がでているらしい。ただ、命に関わるほどではなく、最初は後回しにされるはずだった。だが、呪いが食事にも込められることを危惧したロッド様は、最優先でこの街の調査を依頼された。

 そこを皮切りに、国を一周する仕事は、途中では王都にも寄ることになるらしい。


「すごいなー、広いなー。」

『お主、現在地は分かっておるか?』

「ぜんぜんー。」


 正確な地図など存在しないこの大陸に置いて、地図を読むスキルは貴重で贅沢なものだ。長距離の旅をするのは商人か貴族様ぐらいで、傭兵は護衛や依頼で付き添うことはあっても先導をすることはない。そもそも、自分たちの拠点とする街や地域から離れることは稀で、商人や旅人は街ごとに新しい護衛を雇うのが一般的だ。

 それこそ北部では俺のように唯一の街であるヴォルロート周辺とノースピートンまでの道しか知らないなんて傭兵がほとんどだった。

 ゆえに、俺たちの旅の話を聞いてロッド様達がドン引きした理由がすぐには理解できなかった。


「なるほど、これだけ離れてたわけかー。」

『ざっと500キロといったところじゃな。』

 500キロという距離はピンとこない。

 本来、辺境であるザパートオチアスからはサウスピートンまでは2週間以上かかる。これは直線距離の話で、補給などのために各地の宿場町や都市などを経由していくと1か月近くかかることもあるそうだ。それを魔法によるごり押しがあったとはいえ、半日で駆け抜けたと言われればドン引きだろう。

 道中は目立たないように、緊急時以外は使わないことを念押しされたっけ。


『しかし、こやつらはやる気じゃぞ。さきの大返しもこやつらの高い忠誠があってこそじゃった。』

「ひひーーん。」

 

 ちなみに、今回の旅でタチアナさんが用意した馬車と馬は、そのときのものだ。なんでも家の秘蔵脳馬車と馬だったらしく、タチアナさんの独り立ちを祝って贈られたものらしい。幼いころから調教されているので忠誠心も根性もいい馬で、エミリーや驚異的な魔法を前にしても職務を遂行する名馬らしい。


「正直、商売をするには不向きな馬車なんですけど、この子たちはこれしか引いてくれないんですよね。」

「ひひーん。」


 タチアナさんの不満に対して、当然だとばかりに非難の鳴き声をあげる馬たち。賢くて実に頼りになることだ。南部の馬は有能なんだなーって思っていたが彼らが特別だったらしい。 

 辺境伯の一人娘の案内に、辺境伯家秘蔵の馬車と馬。でよく見ると、その娘さんの腕輪と似たような雰囲気の装飾品が馬にも馬車にも備え付けられている。馬車には詳しくないが、サウスピートンで乗ったときには、なかったものがいくつもある。

 それだけ、ロッド様が俺たちに期待してくれているということなんだろうけど・・・。


『あからさまな贔屓。ここに至って、わっちらを囮にするつもりじゃろうな、あの御人。』

「ですよねー。」


 俺としては目立たずひっそりと旅をしたいのだけれども、どうにも悪目立ちは避けられないらしい。まあ、それは南部へ来た時点で覚悟はしていた。祓い屋を専門にする傭兵が職業として成立しない南部で、俺は嫌でも目立つ。いや、それ以前にメシのタネに困ってしまっていただろう。

 そうなれば、どの道、どこかでこんな形に落ち着いたと思えばあきらめがつくというものだ。



スカル 「街っ子なので、地図とか読めなくても生きてこれた。」

エミリー『それ以前の話じゃがな。」


ザパートオチアスとサウスピートンの距離は約500キロメートル、東京大阪間ぐらいです。

江戸時代の徒歩旅だと2か月。飛脚とかは3日ほどらしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ