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星よきいてくれ  作者: 陸一じゅん
三節【特急リオン号王都行き】

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3 ハイドタウン駅②

 ヴァイオレットの提案で、別れて関所に入ることになった。

 つまり、ヴァイオレットは普通に関所を通り、アルヴィンは、夜明けの人気が無い時間帯と場所を選んで朝日に紛れて塀を越える、といった感じだ。


 アルヴィンは提案に少しためらったが、ヴァイオレットが相対するとしたら、関所のおじさんたちなのである。

 アルヴィンはヴァイオレットの護衛のつもりで一緒にいるが、ただの人間相手ならアルヴィンの力は過剰すぎる。そうなればうっかり殺してしまうかもしれない自覚が、アルヴィンを頷かせた。

 アルヴィンに預けられた外套は、一時ヴァイオレットの手元に戻された。

「明日の朝、駅舎の前で落ち合いましょ」

 影が濃く伸びる夕暮れの中、外套を目深にかぶったヴァイオレットが関所に消える。

 アルヴィンはそれを、梢の隙間から胸の炎を小さくして見届けた。


 ◇



 王都の一駅前、ハイドタウンにも、二日前から木枯らしが吹き始めた。年の瀬まで一月を切った初頭の朝である。

 駅舎の前に椅子を置いて、腹の出た駅員が新聞を広げてストーブに当たっている。ストーブに置かれた薬缶から、もうもうと白い湯気が上がって、その一角だけ霧がかかったようになっていた。

「あのう……」

 駅員は新聞から目線だけ上げて見せた。

 朝日に照らされて瞳孔が浮き上がった藍色の瞳と目が合った。赤毛の少女が立っている。見慣れない顔だから、よそからの旅行者だろう。

「始発まであと二時間あるよ」

「その新聞、どこで買えますか? 」

 駅員は無言で駅舎の中を指差す。軒下で準備を始めた仕出しの弁当屋だった。

「ありがとうございます! 」

 駆けていく少女の姿を見送り、駅員はまた視線を新聞に落す。

 太い指で、ていねいにめくったその見出しには、『ラブリュス魔術学院対岸で山火事/火付けしたのは魔人か』とあった。



 ◇



 一晩中気をもんだアルヴィンは、朝日に照らされてこちらへ歩いてくるヴァイオレットの姿に、無い胸を撫でおろす気分だった。

 路地裏に身を隠していたアルヴィンは、手元にある新聞に夢中で通りすぎかけた外套のフードを慌てて引っ張る。

 不思議そうに首を回したヴァイオレットの目がようやく青い火の玉を見つけて、ぱっと瞬いた。

「合流できてよかったわ! 」

 ベッドだけある小さな宿屋で、さっそく彼女は、新しいコートとブーツ、つばの広い帽子を広げてみせた。色は当たりさわりのない紺やブラウンで、全体的に暗い色彩だった。

「ちょうど昨日古着の露店がやっててね、もう今日は終わりだって言われたんだけどー、売れ残りを買い取るから安くしてくれって言ったらだいぶ値切れたのよねー。どう? どう? (たけ)は問題ないかなって思うんだけど」

 頷いたアルヴィンの頭の上で、帽子が傾く。ヴァイオレットは「これであなたの『ハイ』と『イイエ』がわかりやすくなったわ! 」と喜んだ。

「それだけでも外には出られる格好になったけど、手袋もほしいところよ。今日買いに行きましょ。あ、朝ごはんはもう食べたの。さっき駅舎でね、ひさしぶりに料理っぽいの買って食べたわ。焼きたてパンだって。昼食もそのへんで買って歩きながらにしましょ。さあしゅっぱーつ! 」

『きみってじっとしてないよね』

「それって欠点? 」

『現状は長所だ。でもその前に、きみも着替えたほうがいいと思う』

「……そんなに変? 」

『1.寒そう。2.変わってる。3.汚れてる。総評→すごく目立つ』

「あたし、体質的にそんなに寒くないんだけど……『変身』するとき袖があると違和感あるし……」


 気まずげに肩をすぼめるヴァイオレットの肩から背中はむき出しである。宿屋についた昨夜のうちに少しは拭ったようだが、一週間近いサバイバル生活で、補いきれない汚れにまみれている。


『お金の余裕があるなら、普通の服を買うべきだと思う』

「……あなたって、これはって意見はしっかり書くわよね。教授のレポートみたい」

『欠点かな? 』

「かなりいいことだと思う。長所よ」

『ありがとう』

 (きみのおかげだよ)とは、この新しい友達相手にはこっ恥ずかしくて書けなかった。

 そんなアルヴィンの手にある石板と小石を見て、ヴァイオレットがひとつ手を打つ。


「あなたにノートと筆記用具も必要ね! 石板も街中じゃあ目立つもの。街でも森でもやることはおんなじだわ」

『現地調達? 』

「そう。なんだかワクワクしてきたわ。森は好きだけど、たまには街もいいもんだわね」

前の話でつけ忘れていたハロウィンイラストでぇす!

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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