番外編 第3部より 奏さんは大変です
3部の一ノ瀬家のほのぼのとしたお話です( ´˘` )
ある日の朝。
「奏ー!はやくー!」
玄関先でランドセルを背負った結が、両手を口元に添えて叫んでいた。
「朝から元気すぎません?結さん……」
眠そうな顔で現れた奏は、大きなあくびをしながら靴を履く。
「パパみたいにのんびりしてたら遅れるよ!」
「旦那はのんびりじゃなくて、朝5時から庭の草むしりしてます」
一ノ瀬家の庭では、蓮が黙々と花壇の手入れをしていた。
「……結、走るな。転ぶぞ」
「だいじょーぶ!」
そう言って走り出した結は、見事に玄関先でつまずいた。
「あぶなっ!」
奏が慌てて抱き上げる。
「ほら見ろ」
蓮が呆れ顔で近づいてくる。
「旦那、朝からフラグ回収早いっすね」
「うるせぇ」
結は奏の腕の中でけらけら笑っていた。
「しゅっぱーつ!」
「はいはい、お嬢様」
奏が結を下ろし、2人で歩き出す。
後ろから陽葵が手を振っていた。
「いってらっしゃーい!」
「いってきまーす!」
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通学路。
「奏、きょうね、さんすうのテストあるの」
「へぇ、100点取れそうですか?」
「たぶん98点!」
「絶妙にリアルですね」
「2点はねむいからむり!」
「その2点取りに行ってください」
結は笑いながら奏の手を引っ張る。
「ねぇ、奏」
「なんです?」
「奏って、なんでずっとおうちにいるの?」
「刺さる質問しますねぇ……」
奏は遠い目をした。
「俺はですね、皆さんを守るスーパーエリート執事なんですよ」
「ふーん」
「信じてませんね?」
「うん!」
即答だった。
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学校前。
「じゃ、帰りも迎えに来る?」
「もちろん」
「じゃあ、アイス買ってきて」
「条件追加されてる」
「チョコね!」
「人の話聞いてました?」
結は笑って校門へ走っていく。
その背中を見送りながら、奏はふっと笑った。
「……元気が一番ですね」
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放課後。
約束通り校門前で待っていた奏の姿を見つけると、結は全力で走ってきた。
「奏ーーー!」
「危ない危ない、止まって!」
飛び込んできた結を受け止める奏。
「ただいま!」
「まだ家じゃないです」
「じゃあ、おかえり!」
「会話が自由すぎる」
結はきょろきょろ辺りを見回した。
「アイスは?」
「まずそこですか」
奏はポケットから小さなチョコアイスを取り出した。
「やったぁ!」
「約束は守る男なんで」
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帰宅後。
リビングでアイスを食べる結を見て、蓮が眉をひそめた。
「……なんで食ってんだ」
「奏がくれた!」
「お前……夕飯前だぞ」
「旦那、器小さいっすねぇ」
「誰のせいだと思ってんだ」
陽葵はくすくす笑いながら紅茶を置いた。
「奏くん、いつもありがとう」
「いえいえ。俺も楽しいんで」
結はアイスを食べながら、にこっと笑った。
「奏、またあしたね!」
「ええ、明日も明後日も大変そうです」
「やったー!」
蓮は深いため息をついた。
「……お前、甘やかしすぎなんだよ」
「旦那よりはマシです」
「なんだと?」
「結さーん、旦那がうるさいんで避難しましょう」
「さんせーい!」
2人は手を繋いで逃げていく。
「おい、待てコラ!」
追いかける蓮。
その様子を見ながら、陽葵は優しく微笑んだ。
「……平和だなぁ」
その一言に、誰も異論はなかった。




