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頷く

 一瞬魅入られたかのようなロッド王子の袖を、デイジー嬢が引っ張っている。

 私はそこでデイジー嬢に、


「それで、私の汚名をそそぐには、貴方が私の言っていたことが本当は正しかったと、認めてもらうのが一番早いわ」

「し、信じられません。だって貴方は、もっと打算的な……」

「そうね、私は頭がいいから色々計算するわ。でもね、だからって感情が何もないわけではないの」

「それ、は……」

「私は今、怒っているの。王子様もそれは、お分かりになりまして?」


 囁くように優しい声音でロッド王子にそう告げると、ロッド王子がびくりと震える。

 私を怒らせる、それは公爵家の敵に回る事。

 しかも婚約破棄は誤解によるものだとしても、私自身を“悪者”に貶めようとした事実は変わらない。


 そして証拠すらもある(だろう)この状況。

 分が悪いのはロッド王子の方。

 そして彼女の傍にいるデイジー嬢も、同罪だ。


 けれど例えばここで、


「けれど、ここで私はロッド王子、貴方との婚約破棄をそのままにしてあげてもいい。但し、幾つか条件があるけれど」

「な、何だ」

「簡単な話よ。今日私は貴方との話で誤解を解いた、けれど私はデイジー嬢と王子が深く愛し合っているのを知り、身を引いた。そういった話をすればいいの」

「……分かった、それで他の条件は?」 

「ずいぶんと呑み込みがいいわね」

「アニス嬢と公爵家を敵に回すのは我々としても本意ではないのです。……貴方は気づいていないようですがとても魅力的で、これを機会にお近づきになりたいと思っている男性も多いのですよ」

「その割にはアプローチが少ない気がするけれど、では、宝物庫にある“砂霧の夢”が欲しい、それがもう一つの条件」


 それを聞いてロッド王子が目を瞬かせて、


「そんなものでいいのですか?」

「ええ、そう。それで許してあげる程度には私は、まだ貴方の事が好きだったのよ」

「……」

「それで、こちらの提案を飲んでくれるかしら」


 そう告げた私の目の前でデイジーと王子は顔を見合わせてから、頷いたのだった。

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