最後の記憶
貴方だった記憶がある、そう告げた私にロゼッタが目を輝かせた。
「や、やっぱり。それで私、これからどうなるのですか!?」
「……普通に幼馴染とデートをする約束をしていたような気がするわ」
「……あいつと? デート?」
微妙な顔になるが、それでもデートにドキドキしていたのを私は知っている。
素直ではないのがなかなか見ていて楽しかった気が……。
「見ていた?」
そこで私は違和感を感じた。
そうなのだ。
私はロゼッタを見ていたのだ。
俯瞰するように、何かを通してみるように。
今更ながら感じた奇妙な違和感に、私は戸惑う。
そこでロゼッタが、
「どうされたのですか?」
「え、ええ。私は本当にロゼッタだったのかしら」
「? 違うのですか?」
「でも、知っているのよね。そして私のこの運命も、知っていた」
混乱する私に、そこでロゼッタがエーデルと顔を見合わせた。
そしてエーデルが、
「一度に二つの記憶を持っている、という事ですか?」
「ええそうよ。私の今の運命もロゼッタの運命も、見ていた」
「それはおかしいです。普通に一人の人間が持っている記憶は、一つ前の一つだけですから。それがこの世界の、“システム”だそうです」
「“システム”?」
「規則のようなものだそうです。正確には、予想していなかった綻び、だそうですが。でも今の話を聞いていると、そのアニスさんの前世は特殊な物かもしれません。試しに他にロゼッタに関して思い出せますか? 一番最後の記憶でいいですから」
「一番最後の記憶」
そう聞かれて、ロゼッタの記憶で覚えている一番最後のものは……。
……。
噴出してきた、その記憶に、私は震えた。
オズワルドが私の肩を抱きしめるようにする。
それだけで私は、ほんの少し落ち着いてくる。
血の気が引くようなその記憶が、私の脳裏によぎる。
そして一番の当事者であるロゼッタが私に不安そうに、
「ど、どうされたのですか?」
「……食い殺された」
「え?」
「妖精に、食い殺されたの。最後、ロゼッタは」
私はそう、震える唇で答えたのだった。




