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悪役令嬢に転生した元サムライ ~ゴミを宝に、宝をゴミに変える価値観革命~  作者: 竹屋 兼衛門


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第九話 ゲームにない攻略法

ミークがひとしきり泣き終えるまで、ワシは黙って待っていた。


それほど長い時間ではなかった。


やがてミークは袖で目元を拭う。


「……もう大丈夫」


「そうですか」


ならば――。


まず、どうしても聞いておかねばならぬことがある。


ワシは手にした勇者の剣アリオスを見た。


先ほどまで美しく輝いていた剣は、今や見る影もない。


灰色で、重く、まるで石の塊だ。


「まずミークさん」


「何よ」


「これをお返ししますわ」


ワシは勇者の剣アリオスの柄をミークに向け差し出した。


「しかし……これは、どういうことですの?」


ミークが呆れた顔をした。


「そこから?」


「当然でしょう。決闘の褒美ですもの」


それに――。


気になることがもう一つある。


「貴女、先ほど『たとえ私が勇者じゃなくなっても』と仰いましたでしょう?」


「言ったけど」


「もし私が触れたことで、貴女から勇者の資格まで奪ってしまったのであれば、謝罪せねばなりません」


「……ああ」


ミークはようやく合点がいったらしい。


「それなら謝る必要はないわ」


ミークがワシからアリオスを受け取る。


すると――。


「おお?」


石のようだった剣に、再び光が宿った。


灰色だった刀身が輝きを取り戻し、施された装飾まで鮮やかに浮かび上がる。


先ほどまでの石ころが嘘のようだ。


「これは……」


「『勇者の血統』よ」


ミークはアリオスを掲げた。


「この剣は、勇者の血を継ぐ者しか装備できないの。

 資格のない人間が持つと『封印モード』になって、重くて硬いだけの塊になる」


「ほう」


面白い。


血筋を選ぶ剣か。


「私が生まれた村は、その勇者の血統を受け継ぐ人たちの村なの」


「なるほど。では私が貴女から勇者を奪ったわけではないのですね」


「そういうこと」


それならば一安心だ。


「あんまり良いもんじゃないんだけどね」


ミークは輝きを取り戻したアリオスを見つめた。


「政争に負けて、貴族の位を剥奪された哀れな勇者の末裔よ」


ほう。


落人の家か。


「王家と争い、敗れたのですか?」


「分からない。公式には書かれていなかった」


ミークは肩をすくめた。


「考察では、勇者が王になり替わろうとしたからとか言われてたわ。他には、政治ができなかった武力バカだったとか……」


公式とか考察とか、よくは分からんが……。


王の統治の正当性を奪いかねない活躍をしたのであろうな。


王家を恨みこそすれ、守ろうとは思わぬものかと思ったが……。


「それでも、この国を守りたいのですか?」


「私は転生者よ? 元がどうとか関係ないし……」


確かに、それはワシも同じだ。


今の身の生まれや立場とは別のところから、この国を見ている。


「同じ村の人たちは良い人たちだし、それに、この国の人だって悪い人ばかりじゃないもの」


ミークの声が少し柔らかくなった。


そうだな。


ワシも守りたいと思う気持ちの源泉は、そこだろう。


ミークの、この国を守りたい気持ちは本物なのだろうな。


しかし――。


「では、この剣を賭けた意味は?」


「……この国を滅ぼしたいなら、勇者がいたら邪魔でしょ?」


「確かに。私が裏切り者なら、これを封じるだけでも価値はあるかもしれませんね」


「……裏切り者!?」


「考えていなかったような驚き方ですわね」


「裏切り者って言葉が意外だっただけ。敵国のスパイとか……そういうのを考えていたから」


「なるほど」


ミークは少しばつが悪そうに目を逸らした。


「だから私は、アンタがわざとこの国を滅亡へ向かわせてるんじゃないかって疑ってた」


納得できる理由だ。


この国を滅ぼすのに邪魔になる勇者の剣を取り上げようとする。


そう考えていたわけか。


だったら――。


あの殺意も、少しは納得できる。


――


さて。


剣の謎は解けた。


ならば次だ。


こちらの方は、これからについて重要である。


「それで……先ほどから仰っている『げーむ』というのは、いったい何なのです?」


「…………」


またミークが固まった。


「本当に知らないの?」


「存じませんわ」


「ゲームよ? ゲーム」


「ですから、その『げーむ』とは?」


「コンシューマーじゃなくったって、スマホのアプリとかでもあるでしょ?」


「こんしゅーまー?」


「……」


「すまほ?」


「…………」


ミークがワシをじっと見た。


「極度のデジタルオンチ?」


「でじたる?」


「ああもう!」


ミークが頭を抱えた。


何をそんなに苦しんでおるのだ。


「えーっと……」


しばらく考え込んだ末、ミークが口を開く。


「物語があって、その中の登場人物を自分で動かすの」


「即興芝居ですの?」


「違う」


「ふーむ?」


「自分が何をするかによって、物語の展開が分岐するのよ」


「…………」


なるほど。


「予言の書のようなものですか?」


「え?」


「これから起こることが記されている。しかし、登場人物の行動によって未来が変わる」


ミークは何とも言えぬ顔をした。


「……もう、それでいい」


「では、その予言の書が『破滅の国の救世姫』?」


「そうよ」


ようやく話が見えてきた。


つまりミークは――。


この世界でこれから起きることを、ある程度知っている。


だからこそ、あれほど必死だったのだ。


「では、貴女が仰っていた、この国が滅びるという話も?」


「そこに書かれていた未来よ」


「本当に起こるのでしょうか?」


「起こる」


ミークは即答した。


「そのために私は鍛えたのよ」


……。


確かに。


この娘は強い。


尋常ではないほどに。


ワシより若い娘が、あれほどの力を得るまで鍛えたのだ。


ただの妄想を信じて出来ることではあるまい。


ならば――。


聞かねばなるまい。


ワシが知らぬ、この国の未来を。


――


「ミークさん」


「何?」


「貴女は、この国が滅びると仰っていましたが……」


少々聞くのが怖い。


「私のしたことは、それに繋がるような行動で……相当に不味かったのですか?」


「不味いってもんじゃないわよ!」


即答された。


そんなにか。


「二年後、魔王軍が攻めてくるの」


「二年後?」


思ったより近い。


「それはまた急ですわね。この国の周囲には中立国がいくつもあるはずですが」


「なくなるわ」


「はい?」


「一年後には全部、魔王軍に無血降伏する」


「…………」


それは――。


にわかには信じ難い。


「それほど魔王軍は強大なのですか?」


「強いわ。そして、それ以上に魔王本人が強い」


「ならば、この国も無血降伏すればよいのでは?」


ミークの顔が曇った。


「できない」


「なぜ?」


「魔王がこの国を攻める第一の目的は――先代魔王を殺したこの国への復讐。中でも、勇者の剣と勇者の血統が最大の標的だから」


ワシはミークを見る。


なるほど。


この娘が狙われるのか。


しかし――。


「第一の目的?」


「……よく気づくわね」


「第一があるなら、第二もあるのでしょう?」


ミークは少し黙ってから答えた。


「降伏した人間の数を減らすためよ」


「……食料でも足りないのですか?」


「違う」


ミークは首を振った。


「魔王国は、人間、エルフ、ドワーフ、鬼、オーク、ゴブリン――様々な人類が暮らす多種族国家なの」


多種族。


なるほど。


「一勢力だけ数が多すぎれば、国内の均衡が崩れる」


「……」


「ゆえに人間の数を減らして、他種族との均衡を取ろうとしている?」


ミークが嫌そうな顔をした。


「魔王がシナリオで、だいたいそんなこと言うわ」


「ほう」


なかなか現実的な御仁だ。


「私には理解できない理屈だったわ」


ミークは不満そうに眉を寄せた。


「言葉が通じるなら、話し合えば良いと思わない?」


ワシはミークを見た。


「それ、私を殺そうとしていた方の言葉かしら?」


「うぐぐ」


ミークがたじろぐ。


「だから今、話しているんじゃない!」


「まあ、転生者で前世は男というのは正解していましたし、許してさしあげますわ」


「……ごめん」


ワシは前世の頃を少し思い出す。


家同士の因縁で、いつまでも憎しみ合う家もあった。


同じ陣営についても、それは変わらなかった。


功績を競うならまだしも、足の引っ張り合いをして、本当に邪魔だった。


「話し合いでなんとかなるなら、戦は要りませんわ」


ミークが呆れたようにワシを見る。


「アンタ、魔王側に転生した方が適性あったんじゃない?」


「ふふふ。魔王の人柄には少々親近感を覚えますわ」


「呆れる……」


そこでミークは――。


少し離れたところにいるキルロットへ視線を向けた。


「最初にこの国へ攻め込んでくるのは、魔王国の軍じゃない」


「では、誰が?」


「人間よ」


「……人間?」


「魔王に降伏した周辺国の人間たちが、第一陣として攻めてくるの」


ミークはキルロットを見た。


そして――。


一瞬、言葉を詰まらせる。


「キルロットは死ぬの」


「…………」


ワシもキルロットを見る。


今は黒凪の様子を面白そうに眺めている。


あのキルロットが。


死ぬ。


そして――。


ナインスター。


人間を信じる、あの馬。


敵もまた人間ならば。


なるほど。


人間を愛するナインスターには、あまりにも酷な戦場だ。


「……そういうことでしたか」


「何が?」


「いえ」


ワシが黒凪を選んだことで。


キルロットが黒凪の価値を知ったことで。


あの二人の未来も、変わったのかもしれない。


――


「ならば」


一つ、単純な疑問が浮かぶ。


「今から皆に修行を課してはいかがです?」


「……それは私も考えてたわよ」


「それなら――」


「でも、いきなり『二年後に魔王軍が来るから鍛えてください』なんて言って、誰が信じるのよ!」


なるほど。


それもそうか。


「だから、まず攻略対象たちと仲良くなるつもりだったの」


「攻略対象?」


「戦争で中心戦力になる男たちよ」


「ほう」


「仲良くなって、信頼されて。それから少しずつ鍛えていく予定だった」


理には適っている。


「では、そうすればよいのでは?」


「できないの!」


「なぜ?」


「アンタのせいよ!」


ワシ?


「攻略対象との出会いイベントが全部消えてるの!」


「……はい?」


ミークが指を立てた。


「悪役令嬢に主人公が虐められる!」


「はい」


「そこへ攻略対象が現れて、主人公を助ける!」


「はい」


「それが悪役令嬢との婚約破棄のキッカケになって――」


「え?」


「攻略対象との自由恋愛が始まるの!」


「なんと!?」


「それがセオリーなの!」


「なるほど」


「なのに!」


ミークがワシを指差した。


「アンタが悪役令嬢をみんな幸せにしちゃったから、誰も私を虐めてくれないのよ!」


「…………」


「…………」


何と申せばよいのだろう。


「それは……申し訳ないことをしましたわね」


「謝られても困るのよ!」


ミークの目に、また涙が浮かんだ。


「私だって頑張ったのよ……」


「はい」


「入学したら、あそこで虐められる、ここで嫌がらせされるって覚悟して……」


「はい」


「なのに誰も来ない!」


「……」


「イベント場所に行っても誰もいない!」


「……」


「アンタのせいで悪役令嬢が誰も悪役令嬢してないのよ!」


泣かれてしまった。


善行を責められるというのは、なかなか珍しい経験だ。


――


「しかし」


まだ分からぬことがある。


「今からでも攻略対象とやらに事情を話し、鍛えるだけでは足りないのですか?」


ミークは目元を拭った。


「足りない」


今度は、はっきりと言った。


「魔王は強すぎるの」


「それほどまでに?」


「まともに戦ったら、勝つまでに何百万人死ぬか分からない」


「……」


「初期ステータスを最大にするチートまで使ったRTAでも、犠牲者三百万人が最少記録だったわ」


「ちーと? あーるてぃーえー?」


「ああ、もう!」


ミークが再び頭を抱えた。


「予言の書を書き換えて、みんなを強くしたってこと!」


「予言の書を書き換える?」


そんなことが出来るのか?


「そこはどうでもいいの!」


どうでもいいらしい。


「とにかく、味方をどれだけ強くしても、三百万人くらいが犠牲を減らせる限界なの」


ミークの表情が険しくなる。


「だからイベントを発生させて、魔王本人を弱体化させないといけないの」


「また『いべんと』ですか」


「予言の書に書かれた、特定の行動によって起こる事件よ」


なるほど。


それなら分かる。


「それが?」


ミークが少し言いづらそうな顔をした。


「……魔王誘惑イベント」


「誘惑?」


「男性攻略対象たちの魅力で、魔王に『恋』のデバフをかけるの」


「…………」


何を言っておる?


「それで魔王が弱くなる?」


「そう」


「そうですか……魔王は女性でしたか……」


「いいえ。男性よ」


「…………」


ミークがこちらを見る。


「驚いた?」


「なるほど」


ワシは頷いた。


「衆道か」


「…………」


何だ、その顔は。


「ゲームは知らないのに、そういう方面には理解が早いのね」


「珍しい話でも無いでしょう?」


「アンタがこの世界に転生した理由、ちょっと分かった気がする」


「……なぜですの?」


話が分かったらこの態度。


この娘も分からぬ。


「魔王は昔、女性に酷く裏切られたの。それで女嫌いになった」


「なるほど」


「だから男性攻略対象との恋愛イベントなら発生する」


「しかし、それがなぜ婚約破棄と?」


「攻略対象の誰か一人でも婚約していると、魔王が引くのよ」


「……律儀ですわね」


「そういう設定なの!」


設定か。


予言の書には、魔王の記述は少ないのかもしれない。


「それで、その『魔王誘惑イベント』まで成功させれば?」


ミークの表情が曇った。


「……同じ条件なら、犠牲者八十万人。それが最少記録」


「八十万人……」


それほど魔王個人が強力なのか……。


ようやく分かった。


ミークがなぜ、あれほど婚約破棄に拘っていたのか。


エンラも。


グラシアーナも。


キルロットも。


彼女たちを不幸にしたかったわけではない。


むしろ逆だ。


もっと多くの者を救うため。


ゲームに記された最善の道を歩もうとしていた。


そのためには――。


今ここにいる者たちの幸せを、壊さねばならなかった。


「なるほど」


「……何よ」


「ようやく分かりましたわ」


ワシはミークを見る。


「貴女は、未来で大勢を救うために――今ここにいる者たちへ、不幸になることを求めていたのですね」


「違う!」


ミークが声を上げる。


「好きでやってるんじゃない!」


「ええ」


それはもう分かっている。


「でも起きるの!」


ミークは拳を握り締めた。


「戦争は起きる! 絶対に!」


「ええ」


「全員助かるルートなんて、ゲームにはないの!」


ミークの握った拳が震えている。


「だから私は――一番多く生き残れるエンドを選ぶしかないのよ!!」


ワシは、その言葉に少し引っかかった。


「ゲームには、ですか?」


「そうよ!」


ミークが声を荒らげる。


「だから、その前に準備するのよ!!」


「では――」


ワシは首を傾げた。


「その戦が起こる前に、どうにかすればよいのでは?」


「…………は?」


「原因は魔王なのでしょう?」


「そう……だけど」


「ならば簡単な話ですわ」


「何が?」


ワシは笑った。


「私が魔王を攻略するのですよ」


「…………」


ミークの口が開いたままになった。


「八十万人で満足する必要などありませんわ」


ワシはミークを見た。


「誰も死なぬ道を探しましょう」


――


話を終えて戻ると、キルロットたちが待っていた。


当然――。


エンラもグラシアーナもいる。


「ザリー様!」


やはり来たか。


エンラが詰め寄ってくる。


「ちょっと! お二人で何を話していましたの!?」


何故そんなに怒っておる。


「まあまあ、エンラさん」


グラシアーナが宥めている。


キルロットは腕を組み、何やら一人で納得したように頷いていた。


さて。


ミークの話では、攻略対象とやらの彼らと出会えないことも問題だったらしい。


ならば。


少し手伝ってやるとするか。


「実はですわね」


ワシは悲しげに目元を押さえた。


「ミークさんとゴルディアン様を賭けて決闘をいたしまして……」


「え?」


ミークがこちらを見る。


「私、奪われてしまいましたの。しくしく」


「ちょっと!?」


エンラの顔色が変わった。


「ミークさん! ザリー様になんてことを!」


「違う! いや、違わないけど違う!」


「まあ!」


グラシアーナまで口元を押さえている。


ワシは慌てるミークへ顔を寄せ、小さく囁いた。


「しー……」


「何よ!」


「貴女の言う『攻略対象との出会い』は、出来ましてよ」


「……」


ミークが固まった。


確かに。


ゲームとは違う。


だが――。


悪役令嬢に虐められた。


攻略対象がいる。


出会った。


条件だけ見れば、それらしい。


ミークの顔が引きつった。


「……こんなのアリ?」


知らん。


――


それにしても。


ザリーは魔王を攻略すると言った。


私には、まだ信じられない。


女嫌いの魔王を?


確かに、それができれば戦争そのものを未然に防げるかもしれない。


でも。


無理に決まっている。


そもそも『破滅の国の救世姫』に、そんなルートは存在しない。


魔王に用意されているのは、男性攻略対象たちとのBLデバフイベントくらいだ。


女主人公が魔王を攻略するルートなんてない。


なのに――。


「絶対に無理」


そう言い切れない自分がいた。


エンラも。


グラシアーナも。


キルロットも。


ザリーは、ゲームではあり得なかったことを何度も起こしている。


だったら――。


魔王だって?


ザリーを見ていると。


何故だろう。


本当に出来るような気がしてくる。


「ところでザリー様」


エンラが口を開いた。


「はい?」


「ゴルディアン様との婚約、破棄されたのですよね?」


「……そういうことになりますわね。まあ、仕方ありませんわ」


ザリーは涼しい顔で言った。


「あれほどの愛を向ける方が現れたのですもの。二人の幸せのためには、身を引くしかありませんでしょう?」


エンラの目が輝いた。


「では」


嫌な予感がした。


「ザリー様は今、フリーということですわよね?」


「ふりー?」


ザリーが首を傾げる。


「うーん……婚約者がいないという意味でしたら、そういうことになりますわね」


「でしたら!」


エンラが胸の前で手を組んだ。


「私も婚約を破棄いたしますわ!」


「はぁ?」


「そして――」


一歩。


エンラがザリーへ踏み出す。


「ザリー様!」


「はい?」


「私と婚約してください!」


「…………」


ザリーが固まった。


「……どういうことですの???」


エンラは頬を染めた。


「私、決めましたの」


そして――。


何故か覚悟を決めた顔で言った。


「貴女とは、生まれた日は違えども――死ぬ時は、同じ日、同じ時と誓いますわ!」


「なんですの!? その桃園の誓いもどきは!?」


「とうえん?」


「えーと……伝説の英雄たちが交わした誓いですわ」


ザリーが慌てて説明する。


「それに、その誓いは三人でするものです!」


「え?」


エンラが周囲を見る。


そして――。


キルロットと目が合った。


「では三人目はキルロット?」


「なにっ!?」


キルロットが目を見開く。


「ザリー! まさか僕のことを、そんな風に――」


「ちっがーう!!」


ザリーの絶叫が草原に響いた。


その横でグラシアーナが、にこにこと微笑んでいる。


「あらあら」


「グラシアーナさん! 貴女も何か言ってくださいまし!」


「ええ。では――」


グラシアーナは優雅に一礼した。


「その時は私が、皆様の葬儀を取り仕切りますわ」


「そっちに参加しますの!?」


騒がしい。


本当に騒がしい。


私はそんな四人を眺めた。


……。


魔王を攻略する。


ゲームには存在しないルート。


そんなもの――。


普通に考えれば、無理に決まっている。


でも。


エンラがザリーに抱きつこうとして。


ザリーが逃げて。


何故かキルロットまで追いかけて。


グラシアーナが葬儀の段取りを考え始めている。


その光景を見ていると――。


……。


やっぱり無理かな☆

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