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第20話『挨拶で職員室を破壊する天災少女』


「――――編入ですか?」


 

「ああ。あんたの帰る場所がわからないってのはわかった。

だが仮に帰る場所や彼氏さんが見つかったとしても、帰った後が問題。

あんたが帰った後、中学も出ていなくていちゃあ彼氏も困るだろ?」

 うぐ……。

 トカゲさんをノックアウトしてから3日。

 歯向かってくるのは偶然遭遇したチンピラや巨大モグラさん、凶暴化した人参型モンスターさん、二つ首の小型のワンちゃんとかだった……。

 そんないつもと変わらない日常を過ごしていると、店長さんが話しかけてきた。

 店長さんたちにはすでに私の事情を話しており、その話をした翌日だ。

「その後の人生の方が圧倒的に長いんだ。

その時、彼氏が君の夫になったとして中学校も出ていないお嫁さんになったとしたら嫌われちまうだろう?

嫌われなくても周囲の目から窮屈な思いを、彼も背負うことになっちまうかもしれないぜ?」

 サイムが私の夫……旦那……私の男……私がお嫁さん……。

 ブえへへぇ……。



 ――――じゃなくて……店長さんの言うことはもっともな気がする。

 自信を持って嫁を名乗るからには、しっかりと中学は卒業しなきゃ。

 だって私、昔サイムに勉強教えていた気がするし…………。

 あいつより下は嫌だ!

「その編入!受けて立ちましょう!!」

「さすがだぜ!嬢ちゃん!!」

 私と店長さんは固い握手を交わす。

「ちなみにその編入のための試験とか手続きはいつですか?」

「今日だ!

コネを使って願書はすでに受け付けられている!

イチジクと共に登校してこい!!」

「私の返答を聞く前に、すでに願書を出しているとは……。

店長さんなかなかのやり手ですねッ!」

「だろうッ!」


 

「朝飯の時になにしてんだい!2人とも!

イチジクが引いてるじゃないかい!

ほら!あんたはそれ食べてスープの仕込み!

ヒトメちゃんも、朝ご飯を食べて身だしなみと整え、筆記用具をカバンに入れて準備しなッ!!」

「なー!」

「「はーい。」」

 ミツおばさんとテキメツちゃんに怒られちった……。

 イチジクちゃんは味噌汁をズズっとすすりながらこの茶番をシラケ顔で見ていた。

 ちなみにだが、みーさんはあれからあまり会わない。

 たまたま出会っても、軽く遠くから手を振りあいお茶をする程度だ。

 妙に忙しそうだ。

 だからか、みーさんとイチジクちゃんをまだ互いに紹介できていないのだ。

 絶対に面白いことになるのにッ!!

 もどかしいぃ~~ッ!!



「「ごちそうさまでした!」」

 朝ごはんを食べて、言われた通りに支度をする。

「イチちゃーん(くし)ない?」

「わかった。髪とかしてあげるね。」

 ココ最近、私以下の人間なら異世界トラックさんに数回引かれる程度の事故に巻き込まれたせいか、それとなくイチちゃんと仲が良くなった!!

 まぁ事故と言っても私からすれば日常の範疇で、『コロッケを少し古い油であげちゃったー。』とか『焼きそばのソースを少し濃すぎたなー。』程度のものだけど。

 台所で飛翔するゴキとか不意にタンスの角に小指をぶつけるクラスの、大きな事故にはまだ至っていない。

 この調子なら、学校に巨大隕石とかぶつかってこないだろうしきっと大丈夫だろう。



 そんなこんなで2人で準備をして玄関へと行く。

「「行ってきまーす!」」



 ◇◇◇



 さぁって!学校の校門前に来ましたよぉ~!

 今まで遠くに見ていたけど、だいぶ大きな校門じゃん。

 こういうのすごくワクワクするザ・青春って感じ!!

 ふへへ~!盛り上がってきましたよぉ~!

 学校=セーラー服=私=青春!

 このまま編入試験をボコボコのボコにすればココの生徒だ!



 


 イチちゃん曰く、どうやら編入試験ってのはあくまで学力を図るための物らしい。

 で、学力がどれくらいあるかどうかで高等部にエスカレーター式で上げてよいかの、内申とかの査定に影響してくるらしい。

 中等部に入ることは簡単らしいけど、私が受ける中等部3年は高等部前の関門らしいから、この編入試験は大事らしい。

 まぁ編入試験がどうであれ私には、サイムのお嫁さんという誰にも負けない永久就職先があるから問題ないね。

 


 イチちゃんに案内され、学園の中央棟?とやらに着いた。

「じゃあアタシは教室行ってる。

恐らく校長室とか職員室行けばいいから、この中央棟1階の突き当りにあるから。」

「うん。わかった!」

 こうしてイチちゃんと別れた。

 そういえば年齢違うんだったな……。

 普段はサイムっぽい服装をさせてジェネリックサイムとして友達していてくれたから忘れていた。


 

 さて……えーっと突き当り……。

 この中央棟の廊下、ものすごくきれいだなー……。

 金属質のシルバーカラーの廊下だ。

 ホコリもない……。

 人の行き交いも結構多く、電光掲示板が怪しく光る。

 この時代には黒板やチョークは無いのだろうか?

 流石、未来だ……。

 だが青春は変わらない!どんなことがあっても!!

 廊下を堪能していると突き当り……職員室が見えてきた。

 よし!ここだな!!元気よく挨拶して、私が着たことを知らしめよう!!





 ――精一杯全力の肺活量で息を吸い込み、それを音として喉を鳴らし腹から声を出す。







「おはよォーーーございまああああすッ!!

編入しに来ましたアアアッ!!高達ひとめですッ!!

よろしくおねがいしまああああーすッ!!」





 青春の決め手として扉を思いっきり勢いよく開け(破壊し)ながら精一杯挨拶する。

 扉が開いた(粉砕した)衝撃とあいさつと共に様々な書類が宙に舞いガラスにひびが入る!

 一番近くにいた教師が白目をむき鼻血を流して倒れ、別の人物は耳から血を流しきょとんとしている。

 職員室のタイルも多少飛び散り、あいさつの後に静けさが残る。



 よし!!決まった!!これぞ健康優良青春少女である私よ!!



「あ、あ、あ、あ、あいさつ……。」

 中年の女性の教師が出てくる。

「はい!おはようございますッ!!」

「あ、はい、編入のヒ、ヒトメさん……。

よろししくぅおねがいします……。」

 なんだか、朝から言葉がなんていうか、痺れているなぁ……。

 朝は元気よく行くからこそ気持ちよく1日が始まるのに、この学園ではそんなことも教えてないのかな……?

「げ、元気なのねぇ……。すぐ上の空き教室で、まっててね……。」

「はい!!失礼します!!」

 扉を勢いよく閉めようとすると、先ほどの女性の教師が止める。

「あ、自動ドアです……。さ、さっき無理やり開いていたケド、閉めなくて大丈夫……。」

 えええ!?2040年の学校ってまさかすべて自動ドアなの!?

 うそ!?2014年とかドアは手動で開いたり、()()()()()()したはずだけど……。

 進化したなぁ……。

「では改めて失礼します。」

「は、はい……。」

 私はいそいそと職員室を離れ2階の空き教室へと乗り込む。

 

 

 学校久々でワクワクする~~!

 2階って言っても天井が高いせいなのか階段をそこそこのぼった。

 2040年はやっぱり建築様式がすごいきれいだなぁ~~。

 しかも歩いてみた感じ、床がつるつるしていて少しこけそうだけど。

 これ来客用スリッパだから、学生用のスリッパで歩くと楽なのかも……。


 





 空き教室の前に立つと、自動ドアが開く。

 どうやら、私が職員室に来た時は反応する前に扉を開けちゃったらしい。

 


 ――――空き教室で待っているといつか見た、ナオっち……じゃなくてナオト先生がやってきた。

「……あ―――、いた。

こんにちは高達さん。

この前も名乗ったけど改めて、僕の名前は光奈(コウナ) 波音(ナオト)

君の担任で、中等部3年3組を受け持っている。

担当強化は社会科。部活動は新聞部。趣味はゲーム。

()()()()()()()が、いつも僕のところに来るって言うのが最近の悩みの1つかな?」

 可愛すぎる生徒が来るのが悩みなんて先生、贅沢さんだなー。

 でも……。

「私には彼氏がいるので先生は範疇ではございません。」

「はい?あー、まぁいいや。

今日やることが試験5教科、あと軽い面接と学校紹介。

マークシート式じゃないからね。

問題数は多くないから気楽にやってくれよ。」

「はい!!」



 


 先生からテストの冊子を渡される。

 シャーペンを準備し、久々のテストにやる気十分だ!

「では、テストはじめ。」

 テスト冊子をめくる。

※ブックマーク、評価、レビュー、いいね、やさしい感想待ってます!

この物語の『更新』は現状『毎週金、土、日』に各曜日1部ずつとなります。



 ■■■ ■■■

本日のヒトメさんによる被害/買い物

 ■■■ ■■■

職員室の扉や窓:半壊

遭遇したチンピラ:内出血と骨折(2か月入院コース)

巨大モグラ:死滅

人参型モンスター:死滅

二つ首の小型のワンちゃん:死滅

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