41.あの日の事は忘れない(アーミー蜂 → エアリアルビー)
整列。飛行。警戒。排除。
それが俺たちの“任務”だった。考えるまでもない、機械的な行動の繰り返し。
だが――「それでも、俺たちは見ていた」
冒険者たちの警戒する視線。向けられる武器。
敵意ではない。ただ、恐怖だ。こちらに向けられる本能的な拒絶。
確かに、針は鋭く、俺たちの動きは脅威に見えたかもしれない。
だが、ただ守りたかった。仲間の巣を、営みを、平穏を。
「じゃあ、見せてあげようよ。君たちが”守る存在”であるってこと」
ご主人様の言葉とともに、俺の外見はみるみるうちに変わっていった。
ストライプ模様は目に優しいマットな質感へと変わり、羽は光を受けてきらきらと輝いた。
何より、針は“収納された状態”を明示することで、緊張感を和らげた。
俺の変貌ぶりに驚喜した仲間はその後に続いた。
今、俺たちは「エアリアルビー隊」として、迷宮内の巡回を担っている。
羽音を響かせて空中を巡り、迷った冒険者を安全なルートへ導く。
光るシグナルで意思を伝えると、相手は笑って手を振ってくれる。
“警戒される存在”から“信頼される存在”へ――
その違いが、どれほど心を軽くするものかを初めて知った。
「……誰かを導けるって、気持ちいいな」
小さくつぶやいたその声は、羽音にかき消されて、空に溶けていった。
必要とされること、受け入れられること。
それは、どんな存在にとっても生きる意味になる。
紅葉との出会いを通して、居場所と役割を取り戻していった。
変わったのは見た目だけではない。
彼らの心にも、確かな“再生”の光が差し込んでいた。
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紅葉によってかわいく愛される姿へ変貌をとげた三匹。
同族の虫たちも今では同じ形態へ種族変更されている。
ほどなくして、SNSを中心に、「#ふわもこお蚕」「#ラブリースパイダー先生」「#空飛ぶビーガイド」などのタグが徐々に伸び始めていた。
「え、あの蜘蛛が先生やってんの!? 怖くて一回ぶった切ったことあるけど……すげえ丸くなってる……」
「ビーに案内されてルート回ったら、安全なうえにレア素材拾えたんだが!? どういう訓練してんの?」
「ふわふわお蚕ぬいぐるみ、マジで癒し。 お腹に小型ヒーター内蔵してるらしいよ」
徐々に、「迷宮のモンスター=敵」という固定観念がほぐれていく。
冒険者たちの間でも、「害ではなく共にある存在」としての認識が広がる。
『来夢迷宮』は肩の力を抜いて楽しめるテーマパークかも……知れない。
最後までお読みいただきありがとうございました。




