至福の再会
その日の夜、懐かしい香りがした。
「こ、これは…」
「間違いない!」
ゴクリと、唾を飲み込み、香りを頼りに王都を歩く。
幻臭では無いと思いたい。
この香りは間違いなく、日本のラーメンスープの香りだ。
勇者になり5年…、向上した身体能力の中には、嗅覚も!
ベースは豚骨だ!
その香りの奥深くに、かすかに魚の香り…
これは、和風豚骨スープだと確信を持つ。
5年だ!
その間、何度も夢に見て来た。
過酷な身体訓練に、魔法訓練。
それさえもマシだと思えるような、戦闘の日々。
平和になれば帰れると言う希望、そして帰れる方法など無いと言う絶望。
中世ヨーロッパ風の異世界は、致命的に飯が不味かった。
各国をさ迷い、日本食を探し回ったが、見つからない日々に諦めが…。
比較的治安が良く、パンが旨い帝国に今は滞在している。
パンは、この世界にしては旨いと思えるが、日本のふっくらしたパンや、惣菜パンや、菓子パンが恋しい。
今、日本の食べ物や飲み物の1つをくれると言うなら、僕らは魔王の手下にだってなると思う。
あ~、日本の物が食べたい…。
匂いをたどり、行き着いた先には…
「「車!?」」
何で日本車が?
でも、そんな事より今はラーメンだ!
今、この世界に、ラーメンを食べるより重要な事などない!!
チャーシュー麺を食べながら、涙が止まらない。
食べる口も止められない。
息が止まりそうだが、必死に食べた。
スープも全て飲み干した。
旨かった。
今まで食べた、どんな料理よりも。
今日まで生き延びて、本当に良かった。
このチャーシュー麺は、至高である。
心から、そう思った。
隣で、味噌バターコーンラーメンを食べた幼馴染みも、きっと似たり寄ったりな事を思っているんだろうな。
まあ、味噌バターコーンも旨いからな!