拗ねるキミに夢中な俺。
「樋口、寒いんだけど」
学校の登校中。
カレンダーは二月に入り、一段と寒さが増す。
樋口と晴れて恋人同士になって二ヶ月が経つ。
俺が少しでも、『寒い』と言うと、手を伸ばしてくれた樋口は――……。
「いやや、自分で持ってきたらええやん」
冷たくなった。
というよりも、照れている。という方が正しいのかもしれない。
耳まで真っ赤に染まっている。
顔も若干俯き加減だ。
これは、単に寒いからというわけではなさそうだ。
可愛いんだが、俺としては、以前のように樋口の体温を感じたいわけで……。
「大切な恋人が風邪で倒れてもいいのか?」
少し拗ねたふうを装って、言ってみる。
「吉澤はそんなヤワやないやろ」
樋口は相変わらずそっぽを向いて、そう言った。目を合わせてもくれない。
いくらなんでも、これはあまりにも素っ気なさ過ぎだろう?
ちょっとイラってしてきた。
「手くらい、今まで繋いでただろう?」
「…………」
返事がない。
無視するつもりかよ。
良い度胸だな。
俺の片想い歴をなめんじゃねぇぞっ!!
こうなったら、樋口が返事するまで付きまとってやる。
決意した俺は、前を歩く樋口の横に並び、覗き込む。
顔は、やはり真っ赤だった。
小さな唇が引き結ばれる。
とても可愛らしい。
だけどな? 俺、樋口と手を繋ぎたいんだよ。
俺は駄々っ子のように、樋口の名を呼ぶ。
「ひ~ぐ~ち~。寒い」
「……………」
「ひぐちく~ん。寒いんですけど~、凍えそうっ!!」
「うるさいなあっ!! もう、わかった! これでええんやろっ!」
とうとう折れた樋口は、俺の手を掴んだ。
どこか偉そうに、言った樋口の唇がツンと尖っている。
……ああ、マジで勘弁して。
樋口が可愛すぎてどうにかなりそうだ。
俺は身を乗り出し――。
チュッ。
可愛らしい唇を啄んだ。
「っよ、しざわっ!!」
赤い顔が、さらに赤くなる。
小さな唇が開閉を繰り返し、何やら意味不明な言葉を口にする。
ああ、やばいな~。
可愛すぎて困る。
寒空の下、だけど心の中はあたたかい。
俺と樋口の今年の冬は、もう少し続く。




