第19話 託された役割
スコアは2-2。
会場の熱気は既に限界を超えていた。
BLUE HAWK。
BLACK WOLF。
無敗同士の首位決戦は、ついに最終第5マップへともつれ込む。
観客席は総立ち。
配信視聴者数もリーグ記録を更新していた。
「フルセットォォォ!!」
朝倉の絶叫が会場へ響く。
「勝つのはBLUE HAWKか!!」
「BLACK WOLFかぁぁぁ!!」
歓声が爆発する。
ミラー配信中のアリサも落ち着いていられなかった。
「無理です無理です!」
「心臓が持ちません!」
Lunaも大きく頷く。
「私もですー!」
コメント欄も大騒ぎだった。
『神試合』
『決勝だろこれ』
『どっちも強すぎる』
『頼むフルパワー見せてくれ』
そして。
運命の第5マップ。
大型モニターへBLUE HAWKの最終構成が映し出される。
会場がざわついた。
TIGAが雷虎。
ReiがKai。
KINGがFrost。
ANGELがOracle。
そしてNOVAがVolt。
ベンチへ下がるのはSAGEだった。
「えぇぇぇぇ!?」
アリサが思わず立ち上がる。
「NOVAちゃんサポート!?」
Lunaも目を丸くした。
「本当に何でもできるんだ!」
コメント欄も一気に流れる。
『またロール変更!?』
『何ロール目だよ』
『FLEXやばすぎ』
『ここでNOVA!?』
『ミンジュン攻めたな』
実況席でも朝倉が驚いていた。
「まさかの変更です!!」
「SAGE選手に代わってNOVA選手投入!!」
村瀬は納得したように頷く。
「面白いですね」
「BLACK WOLFの爆発力に対抗する構成です」
「NOVA選手の柔軟性を最大限活かしています」
その頃。
BLUE HAWK選手席。
NOVAは深く息を吐いていた。
緊張していないと言えば嘘になる。
相手はBLACK WOLF。
しかも最終マップ。
負ければ今までの流れが全て消える。
そんな舞台だった。
「大丈夫か?」
隣でKINGが聞く。
NOVAは少し笑った。
「多分です」
「多分かい」
KINGも笑う。
その時。
Reiが前を向いたまま言った。
「やれる」
短い一言。
だが不思議と力が抜けた。
雷神戦。
途中交代。
悔しかった。
本当に悔しかった。
だから今日ここにいる。
NOVAは小さく頷いた。
「はい」
試合開始。
第5マップ。
最初から激しいぶつかり合いだった。
BLACK WOLFも全力。
BLUE HAWKも全力。
誰も引かない。
集団戦。
BLUE HAWK勝利。
次の集団戦。
BLACK WOLF勝利。
また次。
BLUE HAWK。
さらに次。
BLACK WOLF。
完全な殴り合いだった。
会場は一瞬たりとも静かにならない。
アリサも叫び続けていた。
「やばい!」
「やばいですこれ!」
Lunaも笑いながら叫ぶ。
「面白すぎる!」
残り時間一分。
スコアはほぼ互角。
次の集団戦で決まる。
観客全員が理解していた。
その時だった。
BLACK WOLFが動く。
白狼。
Raven。
裏取り。
狙いはANGEL。
Oracleを落とせば勝ち。
誰もがそう思った。
だが。
最初に気付いたのはNOVAだった。
視界の端。
ほんのわずかな違和感。
普通なら見逃す。
だが見逃さなかった。
「右!」
NOVAが叫ぶ。
その声が飛んだ瞬間。
ANGELが振り向く。
Oracle。
索敵発動。
白狼の位置が暴かれる。
そして。
Reiが動いた。
Kai。
超高速移動。
白狼の前へ飛び出す。
会場が揺れる。
『きたぁぁぁ!!』
『最後だ!!』
『Rei!!』
『白狼!!』
アリサも立ち上がる。
Lunaも息を呑む。
再び。
Rei。
白狼。
日本最高峰の一騎打ち。
撃ち合い。
読み合い。
反応速度。
全てが極限。
ほんの一瞬。
白狼の視線がズレた。
その瞬間。
Reiが踏み込む。
一閃。
白狼撃破。
会場が爆発した。
「うわあああああああ!!」
アリサが絶叫する。
Lunaも叫んでいた。
「Reiさん!!」
エースが倒れた。
その瞬間。
BLACK WOLFの陣形が崩れる。
KINGが撃つ。
TIGAが押し込む。
ANGELが索敵を続ける。
そして。
NOVAがVoltの強化を全員へ回す。
「行け!」
自分でも驚くほど大きな声だった。
BLUE HAWK全員が前へ出る。
誰も止まらない。
誰も迷わない。
一人。
また一人。
BLACK WOLFが倒れていく。
そして。
最後の一人が消えた。
大型モニター中央。
ACE。
会場が揺れた。
「決まったぁぁぁぁぁ!!」
朝倉が絶叫する。
「BLUE HAWK勝利ぃぃぃぃぃ!!」
歓声。
拍手。
悲鳴。
全てが混ざり合う。
アリサはそのまま椅子へ崩れ落ちた。
「無理です……」
「疲れたぁ……」
Lunaも同じだった。
コメント欄は完全にお祭り状態になっている。
『神試合』
『今年最高』
『Rei最強』
『白狼も強すぎ』
『NOVA成長してる』
『BLACK WOLFやばい』
『決勝レベル』
ステージ上では選手たちが立ち上がる。
KINGが拳を突き上げる。
TIGAが吠える。
ANGELが笑う。
Reiは静かに息を吐く。
そして。
NOVAは少しだけ空を見上げた。
雷神戦で交代された自分。
あの日の悔しさ。
全部覚えている。
だからこそ。
今日の勝利は嬉しかった。
まだ追いついてはいない。
Reiにも。
KINGにも。
SAGEにも。
だけど。
少しだけ近付けた気がした。
その感覚だけは確かだった。




