第13話 隠していた一枚
「それでは第2節第一試合! BLUE HAWK対白虎です!!」
朝倉の声と共に会場が沸き上がる。
開幕戦を勝利したBLUE HAWK。
そして初勝利を狙う古豪・白虎。
第2節屈指の注目カードだった。
試合開始。
第1マップ。
白虎は開幕戦を徹底的に研究してきていた。
狙いは一つ。
Reiを止めること。
集団戦のたびに複数人でマークする。
Kaiを自由にさせない。
誰の目にも分かる対策だった。
だが。
その結果として生まれた隙を見逃すBLUE HAWKではなかった。
「KINGだぁぁぁ!!」
朝倉が叫ぶ。
高台。
Frost。
完璧な射線。
白虎の注意がReiへ集まる中、KINGが次々とダメージを与えていく。
氷結。
追撃。
キル。
さらにキル。
白虎は対応しきれない。
「これは苦しい!」
村瀬も思わず声を上げる。
「Rei選手を見るかKING選手を見るかの二択を押し付けられています!」
集団戦が終わる。
勝ったのはBLUE HAWK。
第1マップ先取。
会場から歓声が上がった。
続く第2マップ。
今度は白虎も修正する。
Reiだけではない。
KINGにも圧力を掛ける。
射線を潰し続ける。
しかし。
それで止まるチームではなかった。
「Reiだぁぁぁ!!」
Kaiが飛び込む。
敵後衛を切り裂く。
サポート撃破。
さらにDPSも撃破。
人数差。
そのまま試合が傾く。
白虎も粘る。
だが追いつけない。
第2マップもBLUE HAWK。
スコアは2-0。
会場も大きく盛り上がっていた。
『強いな』
『完成度高い』
『普通に優勝候補だろ』
『白虎も悪くないのに』
コメント欄もBLUE HAWKの話題で埋まっていく。
そして迎えた第3マップ。
後がなくなった白虎は構成を変更した。
ここで流れを変える。
その覚悟が伝わってくる。
しかし。
会場をざわつかせたのは白虎ではなかった。
BLUE HAWKだった。
「おおっと!?」
朝倉が声を上げる。
「選手交代です!!」
大型モニターへ名前が表示される。
OUT KING
IN EDGE
会場がどよめく。
さらに。
EDGEの使用キャラクターが映し出される。
Mirage。
幻影技術を駆使する特殊型DPS。
会場から驚きの声が漏れる。
「Mirageですか」
村瀬も興味深そうに頷いた。
「プロシーンではあまり見ないキャラクターですね」
「ですが相手によっては非常に厄介です」
コメント欄も一気に加速する。
『Mirage!?』
『久しぶりに見た』
『EDGE専用構成か?』
『何狙いだ?』
『面白そう』
試合開始。
最初は白虎ペースだった。
Mirageの火力は高くない。
そのため白虎も強気に前へ出る。
だが。
時間が経つほど違和感が大きくなっていく。
敵の位置が分からない。
どこから撃たれているのか分からない。
視界の端に映る影。
それが本物なのか幻影なのか分からない。
そして。
ANGELのOracle。
索敵。
情報共有。
位置把握。
BLUE HAWKだけが正確な情報を持っている。
白虎だけが迷わされる。
「これが狙いか!」
村瀬が声を上げた。
「Mirage単体ではなくOracleとの組み合わせです!」
「情報戦そのものを支配しています!」
会場もどよめく。
派手なキルではない。
だが確実に白虎の判断が遅れている。
前へ出るべきか。
引くべきか。
その判断が一瞬ずつ遅れていく。
そして。
その一瞬を逃す選手たちではなかった。
TIGAが押し込む。
SAGEが支える。
Reiが飛び込む。
EDGEが混乱を作る。
五人の役割が噛み合っていた。
そして迎えた最後の集団戦。
白虎も覚悟を決める。
全員で前へ出る。
この戦いを落とせば終わる。
だから全てを賭ける。
「白虎総攻撃ぃぃぃ!!」
朝倉が絶叫する。
その瞬間。
EDGEが動いた。
Mirage。
必殺技。
Desert Phantom。
大量の幻影が戦場を埋め尽くす。
視界が揺れる。
敵味方の位置が分からなくなる。
会場から大きなどよめきが起こった。
そして。
その隙を見逃さない。
Rei。
Kai。
一直線に敵後衛へ飛び込む。
サポート撃破。
DPS撃破。
さらにもう一人。
完全に崩れた。
実況も絶叫する。
「止まらないぃぃぃ!!」
TIGAが前へ出る。
ANGELが情報を流す。
SAGEが回復を回す。
EDGEが幻影で混乱を作る。
そしてReiが仕留める。
大型モニター中央。
ACE。
会場が爆発した。
「決まったぁぁぁぁ!!」
「BLUE HAWK開幕二連勝!!」
歓声が響き渡る。
スコアは3-0。
完勝だった。
だが試合後、最も話題になったのはReiでもKINGでもなかった。
EDGE。
そしてMirage。
『面白い構成だった』
『あれ対策難しいぞ』
『Oracleとの組み合わせ強かった』
『BLUE HAWK引き出し多いな』
『何が出てくるか分からん』
コメント欄はその話題で持ち切りだった。
試合後インタビュー。
ミンジュンがマイクを受け取る。
「Mirage採用の理由は?」
記者の質問。
ミンジュンは少しだけ笑った。
「キャラクターではありません」
会場が静かになる。
「使い方の問題です」
短い言葉だった。
だが十分だった。
会場から感心したような声が上がる。
第2節終了。
BLUE HAWK。
開幕二連勝。
しかしリーグはまだ始まったばかりだった。
龍門も勝った。
BLACK WOLFも勝った。
雷神も勝った。
優勝候補たちは誰も落ちていない。
そして次節。
BLUE HAWK対雷神。
初の上位対決。
優勝争いを占う大一番が近付いていた。




