第3話 注目される者の宿命
応援グッズ発表配信は予想以上の反響を呼んだ。
ユニフォーム、マフラータオル、選手グッズ。配信終了後もSKYLINEでは関連投稿が流れ続け、トレンドにはBLUE HAWKの名前が並んでいる。
ただ、盛り上がりが大きくなれば意見も増える。
応援の声だけではない。
『またBLUE HAWKか』
『最近どこ見てもいるな』
『リーグ始まってないのに話題多すぎ』
そんな投稿も少しずつ増え始めていた。
休憩スペースでスマホを見ていたアリサは、その画面を見ながら小さく眉を下げる。
「結構言われてますね……」
隣ではKuroが飲み物を片手にタイムラインを流していた。
「そらそうやろ」
あまりにも普通の反応だったので、アリサは思わず聞き返した。
「気にならないんですか?」
「気になるで」
即答だった。
だがKuroは特に深刻そうな顔をしない。
「でもな、誰にも興味持たれへんより全然ええ」
スマホを置きながら続ける。
「俺なんか昔は褒められもせんし叩かれもせんかった。配信しても反応ない。そっちの方がよっぽどキツいで」
アリサは少し黙った。
その感覚は分かる。
登録者五千人だった頃の自分も同じだった。
コメントが一つ来るだけで嬉しかった。誰かが見てくれていること自体が特別だった。
今は違う。
応援も批判も届く。
それだけ見られる立場になったということだった。
同じ頃、広報会議ではSNS分析の報告が行われていた。
「リーグ開幕前としては異例の数字です」
担当スタッフが資料を映す。
認知度、話題量、関連投稿数。どの項目もリーグトップクラスだった。
ただし、好意的な意見だけではない。
注目度の上昇と共に否定的な投稿も増えている。
説明を聞き終えた誠司は資料を閉じた。
「順調だな」
新人スタッフが思わず苦笑する。
「順調なんですか?」
「もちろん」
誠司はあっさり答えた。
「期待されなければ応援も批判も生まれない」
そして少しだけ真面目な表情になる。
「プロは注目される仕事だ。好きと言われるのも、嫌いと言われるのも仕事のうちだろ」
その言葉に会議室は静かになった。
誠司は元々ゲーム業界の人間ではない。
だが、人が集まる場所を作ることに関しては誰よりも経験があった。
注目を集めれば反発も生まれる。
それは会社経営でも同じだった。
夜になるとShinの雑談配信でもその話題が出た。
『最近アンチ増えてない?』
コメントを読んだShinは笑う。
「増えてると思いますよ」
『気にしないの?』
「気にしますよ」
意外な答えだった。
コメント欄も少し驚く。
だがShinは続けた。
「気にするけど、それでやること変えたら終わりでしょ」
配信画面の向こうで肩をすくめる。
「俺たち今、一番見られてるチームなんだから」
応援も批判も、その結果として生まれている。
だったら答えは一つだった。
「結果出しましょう」
短い言葉だった。
だがコメント欄はすぐに流れ始める。
『それはそう』
『開幕楽しみ』
『勝ってくれ』
『期待してる』
その頃、練習室ではReiたちが黙々とスクリーンへ向かっていた。
SNSの話題も。
トレンドも。
応援も批判も。
知らないわけではない。
ただ優先順位が違う。
開幕まで残り十七日。
必要なのは言葉ではなく結果だった。
BLUE HAWKは注目を集めるチームになった。
次に証明しなければならないのは、その注目に値する実力があるということだった。




