第31話 公開オーディション
BLUE HAWK設立から数か月。
ついに、その日がやってきた。
これまで水面下で進められてきた選手獲得。
競技シーン最大の謎だった天城蓮。
日本屈指のタンクプレイヤー白河大牙。
圧倒的な存在感を持つ鳳堂響。
そして元日本代表サポートの桜庭美羽。
BLUE HAWKのロスターを、初めて正式に発表する日だった。
午後八時。
Shinの公式配信チャンネル。
配信開始前にもかかわらず、待機人数は十五万人を突破していた。
コメント欄は止まることなく流れ続ける。
『始まるぞ』
『今日は絶対ヤバい』
『選手発表だろ』
『誰が来るんだ』
『BLUE HAWK本気すぎる』
『楽しみすぎる』
本部の配信スタジオ。
モニターに映る数字を見ながら、Shinは小さく息を吐いた。
「相変わらず凄いな」
「期待されてる証拠だろ」
鳳堂響が笑う。
「俺のおかげやな」
「違う」
天城蓮が即答する。
「即答やめぇや」
「事実だから」
「冷たいなぁ」
そんなやり取りをしながらも、全員の表情はどこか引き締まっていた。
今日はただの発表ではない。
BLUE HAWKが本格的に競技シーンへ名乗りを上げる日だ。
午後八時。
配信開始。
画面にShinが映し出される。
「こんばんは」
その瞬間、待機していた視聴者が一気に流れ込み、同時接続は二十万人を突破した。
『きたああああ』
『待ってた!』
『発表だ!』
『誰が来る!?』
『頼むぞ!』
Shinはコメント欄を見ながら笑う。
「今日はBLUE HAWKから正式な発表があります」
コメントの勢いがさらに加速する。
「まずは動画を見てください」
画面が暗転した。
静かな音楽。
暗闇の中を、一枚の青い羽が舞う。
やがて文字が浮かび上がる。
――BLUE HAWK
――空の先へ。
映像が切り替わる。
最初に映ったのは、一人の青年だった。
静かな表情。
鋭い視線。
日本ランキング一位。
競技シーン最大の謎。
天城蓮。
Rei。
「待っていた仲間を紹介します」
蓮の言葉と同時に映像が切り替わる。
巨大な盾を構え、最前線を押し上げるプレイ。
味方のために道を切り開くタンク。
敵チームを蹴散らしながら進む圧倒的な存在感。
そして最後。
一人の青年が振り返る。
――TIGA
――白河大牙
――TANK
『うおおおおおお!!』
『TIGA!?』
『マジかよ!!』
『あいつ獲ったの!?』
『ヤバすぎるだろ!』
コメント欄が揺れる。
だが動画は止まらない。
次に映るのは、攻撃的なプレイの数々。
観客を沸かせる派手なエイム。
大胆な立ち回り。
そして勝利を確信したような笑み。
画面いっぱいに名前が映る。
――KING
――鳳堂響
――DPS
『うわあああああ!!』
『KING来た!!』
『本当に加入したの!?』
『絶対面白いチームじゃん』
『Reiと同じチームとか熱すぎる』
そして最後。
映像の雰囲気が変わる。
仲間を支える回復。
危機を救う判断。
誰かを輝かせるためのプレイ。
派手ではない。
だが、チームを勝利へ導くために欠かせない存在。
やがて映し出される世界大会の舞台。
敗北。
悔しさを押し殺しながら前を見る女性。
そこから再び歩き始める姿。
そして。
カメラへ振り返る。
――ANGEL
――桜庭美羽
――SUPPORT
『ANGEL!!』
『日本代表!!』
『マジで来た!!』
『これは強い』
『世界大会経験者いるのか』
『本気すぎるだろ』
映像が終わる。
画面が切り替わった。
そこに並んでいたのは四人の選手たちだった。
中央に立つ天城蓮。
その右に白河大牙。
左に鳳堂響。
そして桜庭美羽。
初めて揃ったBLUE HAWKのロスター。
コメント欄は完全に祭り状態だった。
『強すぎる』
『新設チームとは思えん』
『優勝候補だろ』
『マジで世界狙ってる』
『ロスター豪華すぎる』
その時だった。
画面の中央へ佐藤誠司が歩み出る。
自然とコメント欄の勢いが落ちる。
「本日はBLUE HAWKの選手を発表しました」
落ち着いた声。
だが力強い。
「ですが」
視聴者がざわつく。
「まだ終わりではありません」
『え?』
『まだ何かあるの?』
『嘘だろ』
『まさか追加選手!?』
誠司は静かに続けた。
「BLUE HAWKは世界一を目指しています」
「そのためには、まだ仲間が足りない」
そしてモニターへ新たな映像が表示される。
SUPPORT
FLEX
残る二枠。
「本日より公開オーディションを開催します」
一瞬。
コメント欄が止まった。
そして次の瞬間。
爆発する。
『は!?!?』
『公開オーディション!?』
『マジで!?』
『誰でも受けられるのか!?』
『夢あるぞこれ!』
『ヤバすぎる!!』
誠司はカメラを真っ直ぐ見つめた。
「必要なのは知名度じゃない」
「実績でもない」
「肩書きでもない」
スタジオが静まり返る。
選手たちも黙って聞いていた。
「欲しいのは覚悟です」
その言葉にコメント欄の流れが少し変わる。
「世界一を本気で目指せる人間」
「人生を懸けられる人間」
「勝つために努力を続けられる人間」
誠司は一度言葉を切った。
そして力強く言う。
「覚悟がないなら来なくていい」
「中途半端な気持ちなら来なくていい」
「だが――」
数秒の沈黙。
全員が次の言葉を待つ。
「本気なら来てください」
「BLUE HAWKで、一緒に世界を目指しましょう」
コメント欄が再び爆発した。
『熱すぎる!!』
『受けたい!!』
『人生変わるぞ!!』
『社長かっけぇ!!』
『夢あるな!!』
『本気のチームだ』
その配信を、日本中のプレイヤーたちが見ていた。
現役プロ。
アマチュア選手。
学生。
配信者。
そして――
まだ誰にも知られていない才能たち。
BLUE HAWK。
世界一を目指すチーム。
残された最後の二枠。
その座を巡る戦いが、今まさに始まろうとしていた。




