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ゲームは下手だけど、世界一のチームを作りたい!!  作者: 龍崎
第1章 世界一のチームを作ろう

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第30話 敗北を知る者

数日後。


東京。


BLUE HAWK本部近くのカフェ。


佐藤誠司は窓際の席でコーヒーを飲みながら待っていた。


普段なら人を待つ時間も仕事に使う。


メールを返し、資料を確認し、次の予定を整理する。


だが今日は違った。


視線は何度も入口へ向かう。


少しだけ落ち着かない。


それも無理はなかった。


Rei。


TIGA。


KING。


これまで獲得してきた選手たちは全員重要だった。


だが今日会う相手は少し特別だった。


BLUE HAWKという構想がまだ形になる前。


チーム名すら存在しなかった頃から連絡を取り続けてきた相手だからだ。


世界大会。


日本代表。


そして敗北。


あの日、誠司は会場の熱気と歓声の中で現実を見せつけられた。


世界との差。


才能だけでは埋まらない壁。


日本チームが敗れた後、選手たちはインタビューへ向かった。


涙を流す者もいた。


言葉を失う者もいた。


その中で一人だけ、悔しさを押し殺しながら前を向いていた選手がいた。


その姿が忘れられなかった。


だから誠司は連絡した。


何の繋がりもない一般人として。


ただ話を聞いてみたかった。


そして気付けば半年以上もやり取りを続けていた。


その時だった。


入口のドアが開く。


誠司は自然と顔を上げた。


店内へ入ってきたのは一人の女性だった。


黒髪。


落ち着いた雰囲気。


派手さはない。


だが不思議と視線を引き付ける。


競技シーンでは知らない者がいない名前。


ANGEL。


本名、桜庭美羽。


二十二歳。


元日本代表サポート。


世界大会経験者。


そして誠司が最も早く声を掛けた選手だった。


「お久しぶりです」


美羽が軽く頭を下げる。


誠司も笑った。


「久しぶりだな」


初対面のはずだった。


だが初めて会った気がしない。


半年以上も連絡を取り続けてきた相手だからだろう。


二人は向かい合って席に着く。


少しの沈黙。


やがて美羽が小さく笑った。


「本当に作ったんですね」


「何をだ?」


「チームです」


その言葉には驚きが混じっていた。


世界一のチームを作りたい。


初めて聞いた時、美羽は半信半疑だった。


むしろ信じていなかった。


夢を語る人間は多い。


実際に動く人間は少ない。


だが目の前の男は違った。


気付けば本当にチームを作り、本当に選手を集めていた。


「俺もここまで来るとは思わなかった」


誠司が肩をすくめる。


美羽は少し笑う。


「嘘ですね」


「分かるか?」


「分かります」


二人とも笑った。


空気が少しだけ和らぐ。


だが次の瞬間、美羽の表情は真剣なものへ変わった。


「Rei」


「TIGA」


「KING」


一人ずつ名前を口にする。


競技シーンを知る人間だからこそ分かる。


その価値が。


「凄いメンバーです」


「そうか?」


「そうですよ」


即答だった。


特に天城蓮。


Reiという存在は特別だった。


「正直、Reiを獲得した時点で驚きました」


美羽は苦笑する。


「本当に無理だと思ってたので」


「みんな同じこと言うな」


「だって本当に無理だと思ってましたから」


それほど有名だった。


どこのチームも手に入れられなかった才能。


その男がBLUE HAWKへ加入した。


競技シーン全体が騒然となった理由も理解できる。


だが美羽が驚いたのはそこだけではない。


「少し羨ましかったです」


その言葉に誠司は眉を上げた。


「羨ましい?」


「はい」


美羽は静かに頷く。


「私もああいうチームで戦いたかった」


店内の雑音が遠く感じられる。


その言葉は本音だった。


世界大会へ出場した。


日本代表として戦った。


だが理想の環境だったとは言えない。


スタッフ。


分析。


設備。


練習環境。


海外との差は想像以上に大きかった。


だからこそ誠司の言葉が心に残った。


環境がないなら作ればいい。


あの日、画面越しに聞いた言葉が。


「後悔してるんです」


美羽が静かに言った。


誠司は黙って聞く。


「世界大会で負けたことか?」


そう聞くと、美羽は首を横に振った。


「違います」


少しだけ視線を落とす。


そして小さく笑った。


「負けたことじゃないんです」


「じゃあ何だ」


数秒の沈黙。


その後、美羽はゆっくり顔を上げた。


「もう一回挑戦しなかったことです」


誠司は何も言わなかった。


その気持ちが理解できたからだ。


世界を見た人間は忘れられない。


あと一歩届かなかった景色を。


届くかもしれなかった未来を。


だから前へ進めなくなることもある。


美羽もそうだった。


世界大会後、多くのチームから誘われた。


だが心は動かなかった。


どこへ行っても同じだと思ったからだ。


だが今は違う。


「だから」


美羽は誠司を真っ直ぐ見つめた。


「もう一回だけ挑戦したいんです」


その瞳には迷いがなかった。


「あの舞台に」


「世界へ」


誠司は自然と笑っていた。


答えはもう聞くまでもない。


「BLUE HAWKでか?」


美羽も笑う。


穏やかに。


だが力強く。


そして静かに頷いた。


「はい」


「今度こそ勝ちたいです」


その言葉には覚悟があった。


世界で負けた者だけが持つ覚悟。


悔しさを知る者だけが持つ執念。


誠司は確信する。


ようやく見つけた。


このチームに必要だったサポートを。


仲間を支える頭脳。


世界を知る選手。


敗北を知る者。


そして、もう一度世界へ挑戦する覚悟を持つ人間。


桜庭美羽。


プレイヤーネームANGEL。


BLUE HAWK四人目の選手が、今まさに誕生しようとしていた。

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