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ゲームは下手だけど、世界一のチームを作りたい!!  作者: 龍崎
第1章 世界一のチームを作ろう

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第3話 最初のスカウト候補

翌日。


佐藤誠司は自宅ではなく、SEIZE NEXT本社の会議室にいた。


目の前には大型モニター。


隣には朝比奈美月。


昨日、世界大会の会場で口にした「世界一のチームを作る」という言葉は勢いだけのものではない。何かを始めるなら、まず相手を知る。創業以来変わらない誠司のやり方だった。


「これがSTRIKE FRONTIERです」


「まずはゲームを知れって話だったな」


「そうです。昨日は雰囲気しか見てませんから」


「反論できないな」


美月はノートPCを操作しながら苦笑する。


世界一を目指すと言いながら、誠司はルールも知らない。選手も知らない。チームも知らない。


普通なら無謀だ。


だが美月は知っている。


この男はいつもここから始める。


知らないから学ぶ。


分からないから調べる。


そして気付けば誰よりも深く理解している。


だから十年前の小さな会社が、今のSEIZE NEXTになった。


「今日は配信を見てもらいます」


「プロ選手か?」


「いえ、配信者です」


画面に表示された名前を見て、誠司は小さく目を細めた。


Shin。


国内トップクラスの人気配信者だった。


そして画面の端に表示されている数字を見て思わず声を漏らす。


「三万人?」


「平日の昼なので少ない方ですね」


「それで少ないのか」


誠司は思わず笑った。


地方都市なら十分に成り立つ人口だ。


それだけの人間が一人の配信者を見るために集まっている。


ゲーム業界を知らない誠司でも、その価値の大きさだけは理解できた。


「なるほどな」


「何か分かりました?」


「既に巨大な市場だ」


その答えに美月は頷く。


少なくとも誠司は、もうゲームを子供の遊びだとは思っていないようだった。


         ◇


STRIKE FRONTIER。


世界的人気を誇る五対五のチーム対戦FPS。


だが単純な撃ち合いゲームではない。


選手たちはそれぞれ異なる能力を持つヒーローを選び、役割を分担しながら勝利を目指す。


巨大な盾で味方を守る者。


高火力で敵を倒す者。


味方を回復する者。


索敵能力で戦況を支える者。


高速移動で敵陣をかき乱す者。


能力も戦い方もまったく違う。


だからこそ重要になるのがチーム構成だった。


「役割は大きく三つです」


美月が資料を表示する。


「タンク。

ダメージ。

サポート」


誠司は真剣な表情で画面を見つめる。


「タンクは前線を維持する役割か」


「はい」


「ダメージが得点役」


「そうです」


「サポートは組織を支える裏方だな」


「理解が早いですね」


会社経営と似ている。


誠司はそう感じていた。


優秀な人材だけ集めても勝てない。


役割が噛み合わなければ組織は機能しない。


それは会社も競技も同じだった。


さらに美月が説明を続ける。


「そしてSTRIKE FRONTIER最大の特徴がアルティメットです」


その直後、画面の中で大規模な必殺技が発動した。


敵チームが一気に崩壊する。


試合の流れが一瞬でひっくり返った。


「おお」


「これ一つで試合が変わることもあります」


誠司は思わず身を乗り出す。


ルールはまだ完全には分からない。


それでも面白さは伝わってきた。


個人技だけでは勝てない。


五人が噛み合った瞬間に爆発的な力を発揮する。


だから世界中で人気なのだろう。


         ◇


試合が進む。


Shinは雑談を交えながらプレーしていた。


だがその動きは明らかに素人目にも上手かった。


味方と連携する。


敵の隙を突く。


決定的な場面で仕掛ける。


そして勝負所では必ず結果を出す。


コメント欄は常に流れ続けていた。


『うますぎる』

『今の判断やばい』

『世界レベル』

『やっぱシンだわ』


誠司はゲーム画面よりも、むしろコメント欄を見ていた。


そこに集まる人の数。


熱量。


反応速度。


経営者として気になるのはそちらだった。


Shinが話す。


コメントが増える。


プレーが決まる。


さらに盛り上がる。


失敗しても笑いになる。


そこにいるだけで人が集まる。


それは簡単には手に入らない才能だった。


「美月」


「はい」


「こいつはプロなのか?」


「違います」


「チーム所属は?」


「ありません」


その瞬間だった。


誠司の目が変わる。


美月はその変化を見逃さない。


新しい事業を思いついた時の顔だ。


「登録者数は?」


「百二十万人です」


「SNSは?」


「総フォロワー二百万人以上ですね」


「なるほど」


嫌な予感しかしなかった。


昨日も似た顔をしていた。


そして数時間後には三億円の計画が出来上がっていた。


「社長」


「ん?」


「また何か考えてますよね」


誠司は笑う。


そして当然のように言った。


「選手探しは後回しだ」


「え?」


「まずはこいつを獲る」


モニターの中のShinを指差す。


美月は思わず聞き返した。


「チームのエース候補ですか?」

「違う」

「じゃあ何です?」

「広告塔だ」


美月は完全に固まった。


普通なら強い選手を探す。


優秀なコーチを探す。


競技力を上げる。


だが誠司の発想は違う。


「強い選手を集めても誰も知らなければ意味がない」


会議室を歩きながら続ける。


「スポンサーは来ない。

ファンも増えない。

話題にもならない」


その考え方は完全に経営者だった。


競技知識はまだない。


だが組織作りなら誰よりも経験がある。


「まず知名度を作る。

人が集まる場所を作る。

そこから強い選手を集める」


その方が成功確率は高い。


少なくとも誠司はそう考えていた。


美月は小さくため息を吐く。


だが否定はできなかった。


実際、その考え方でSEIZE NEXTは成長してきたのだから。


誠司は再びモニターを見る。


画面の向こうではShinが楽しそうに配信を続けていた。


まだ本人は知らない。


日本有数の経営者に目を付けられたことを。


誠司は静かに笑う。


「世界一のチームを作るなら、まず世界一人が集まるチームにする」


世界一への挑戦。


その最初のスカウト候補は、一人の人気配信者だった。

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