(ジェイ×ミチル)「有閑ミチル」
【注意 ミチルとジェイはオンボロアパートよりもちょっといい家に暮らしている設定です】
ミチルはとってもヒマだった。
「むうう〜……」
ジェイは仕事。ミチルは留守番。いつもの昼間である。
ミチルのする事といえば、家中の掃除くらいしかない。
毎日やっているとあまり汚れないから、すぐ終わる。
「なんだかなー……」
こんなに有閑マダムでいいのだろうか、いや、良くない。
ジェイが出世したおかげで、その稼ぎで二人が暮らしていくのは十分である。
つまりミチルは働く必要がない。若干十八歳でそんな事でいいのか、いや、良くない。
「これじゃあ、オレ、ヒモかツバメじゃあん……」
大変だ。こんな状態が近所にバレたらジェイの肩書きに傷がつく。
『あそこのぽんこつ騎士、たいして可愛くもない少年を囲ってるらしいわよ。物好きねえ、変態なのねえ』とか陰口を言われるに違いない!
大変だ、ジェイが変態なのは夜だけでいい!
ミチルは急に焦り始めた。
オレも地に足つけて、自立した何かをしなければ。
何か、なんでもいい。とりあえずバイトくらいが丁度いい。
ここでは求人情報って何から得るんだ? 新聞か?
ミチルは文字が読めないが、ジェイは職業柄、新聞を取っている。
確か今朝も読んでいたはず、とダイニングのテーブルを見る。あった。だが。
「読めねえよ、こんちくしょー!!」
ならば文字の勉強だ! ミチルの決断は早かった。
本棚は見た事がないが、ジェイは騎士になる時に学校に通っている。本くらいはどこかにあるはずだ。
ミチルは今まで家を掃除してきたのを思い出す。そうだ、開けたことがない納戸があった!
「ここだあ!」
ミチルは勢いよく納戸の扉をズバーンと開けた。
そこから飛び出してきたのは、ドバーンと本のなだれ。
「ぎゃああああっ!」
哀れ、ミチルは本の山の下敷きに。
「うぴゅう……」
ミチル、全然動けない。
どれくらいの時間が経っただろう。ジェイが帰ってくる夕方になっていた。
「ただいま……ミチル?」
ジェイは玄関先で首を捻る。
帰るとまっさきに胸に飛び込んでくる、愛しい天使がやって来ない。
「ミチル、どこだ?」
家中を探す。段々と不安になって来た。
まさかミチル、何者かに攫われた? そんな不安が脳裏によぎった時、目の前に崩れた本の山が。
そしてその下には愛しい天使のかわいいあんよがピクピク動いている。
「むぴゅぴゅう……」
「ミチル! 今助ける!」
あっという間にジェイは本を掻き分けてミチルをレスキュー。
ミチルは頭がクラクラしたまま、ジェイに抱きしめられた。
「ああ……良かった、ミチルがいてくれて」
「ふにゃあ……ん♡」
ジェイの匂いでますますクラクラします!
ミチルは何故こんな事になったのをすっかり忘れて、ジェイにすりすり甘えた。
「ごめんねえ、大丈夫だよぉ」
「いや、今夜は大事をとるべきだ」
ミチルは一人で立ちあがろうとしたが、先にジェイに抱えられてしまった。
オヒメサマ抱っこで!
「ふわああ、興奮するぅ♡」
「ミチル、今夜はベッドで安静にしていて欲しい」
「はうう……」
そんな、もう、ちょっとジンジン♡してるのに。
ミチルの興奮をよそに、ジェイはベッドの側で優しく微笑んだ。
「待っててくれ、夕食を買ってこよう」
「……行っちゃヤダ!」
ミチルはなんだか悲しくなって、ジェイの上着の裾を掴んで引き留めた。
「ミチル?」
「帰ってきたばっかなのに……オレ、一人にしないでぇ」
いつも笑顔で送り出してくれるから。
ジェイはミチルに甘えていたと思い知る。
本当は淋しくて、我慢していたのだと思い知った。
「……わかった、ミチル。どこにもいかない」
ジェイは再びミチルを優しく抱きしめる。
「ふう……うん」
それでミチルはようやく満足気に目を閉じた。
ジェイの胸元に頭を押し当てて、呟く。
「あのねえ、ジェイ……」
「うん?」
「オレもね、なんか、したいなあ……」
「そうだな……」
二人の世界は家だけじゃない。
もっと広げていこう。互いが支え合える世界を。
「共に、探そう……」
ジェイはミチルが眠りにつくまで、その小さな体を抱きしめていた。
「一緒に……いるんだぁ」
ミチルは夢心地で、ジェイの温もりに安心する。
同じものを、彼にもあげたいから。
「二人でがんばろ……」




