(チルクサンダー×ミチル)「フルパワーはどこで出す」
オレ達は、この世界でどう生きていくべきなんだろう。
そんな哲学的な事をたまに考えるんだけど、毎日の楽しさで忘れちゃうんだ。
「魔法の練習?」
ミチルがお昼ご飯を食べながら、目の前の鉄壁カレピに聞き返している。
メニューはパンとサラダと茹でた鶏。デザートにあんこを乗せたアイスクリーム。
「うむ。近くに採石場の跡地があると聞いてな」
チルクサンダーはすでに大好きな黒くて甘いあんこを頬張ってご機嫌だ。
忙しなく口に運んでいたスプーンを持つ手を止めて、今日の計画を口にする。
「我、以前なら世界が壊れるほどの魔力を有していたが、今はカリシムスとなって人の身。フルパワーがどれくらいで、実務的な魔力はどの辺りなのか。きちんと知っておかねばなるまい」
「つまり、魔法でドッカンドッカン暴れても大丈夫な場所で、ぼっかんぼっかん魔法を使ってみるって事?」
「そうだな」
チルクサンダーの頷きで、ミチルの瞳はキュピーンと輝く!
「オレも行く!」
この世界に来てから、魔法的なものはたまに見た。だが、どれも戦いの最中だったし、命のやり取りの中で魔法そのものの体験感覚は薄い。ミチルはせっかく「剣と魔法」的な世界にいるのだから、絶対安全な場所で、派手なドッカン魔法を至近距離で見てみたいのである。
だが、そんなミチルの希望をチルクサンダーはあっさり跳ね除けた。
「ダメだ。我のフルパワーが炸裂しまくるのだぞ、危険過ぎる」
「ええー! チルクサンダーがオレを傷つけるワケないじゃーん」
ミチルもなかなかの自信で言う。愛されていると信じているからこその物言いだ。
だが、その自信は時にワガママでチルクサンダーを振り回す。
「絶対、ダメ」
食後の黒いコーヒーを啜りながら、チルクサンダーは伏目がちで突っぱねた。ミチルのおねだり顔を見てしまったら、決心が揺らいでしまうので。
「という訳で、行ってくる」
「ぶーぶー」
口を尖らせながら、それでもミチルは出かけるチルクサンダーを見送ろうとする。
不貞腐れた様子も可愛いので、チルクサンダーは努めてミチルを見ないようにしていた。
「チルクサンダぁ、行って来ますのチューしてえ♡」
「……むっ」
抗えないその魔力。ミチルの方が極大ラブ魔法の使い手かもしれない。
チルクサンダーはミチルの腰を引き寄せて、あっついキッスをその小さな唇にぶちかます。
むっちゅうううぅう……♡
すると次の瞬間、ミチルの腕がチルクサンダーの胴をがっつりホールドしてきたのである!
「ふはははっ! かかったなチルクサンダー!」
ミチルはチルクサンダーの腰回りにひっついて離れない。
「ミッ、ミチル……!?」
見ないようにしていたため、チルクサンダーはミチルが顔に出るほど「企んで」いた事がわからなかった。はっきり言って不覚。
「離さないもんねー! オレはこのままくっついて、ドッカン魔法ショーを見るんだもんねー!」
「危険だと言っただろう」
普段はイケメン至上主義で、チルクサンダーに従順なミチルであるが、たまにこういうワガママで困らせる。
ミチル曰く「オタク心に火がついちゃうの!」らしい。チルクサンダーには意味不明な言葉のひとつ。
「ミチル……ぅ」
チルクサンダーの腰に抱きついて、ミチルはすりすり頬擦り。テンションが上がって貴重なセクハラを言い出した。
「へっへっへ、この身長でこの細腰、たまんねえな」
そのセリフが全ての始まり……いや、終わりだった!
「……仕方がない」
チルクサンダーはミチルを抱き返し、足を床から浮かす。
「ふにゃあ!」
そのまま寝室へGO!
「にゃにゃー!!」
チルクサンダーのフルパワーが炸裂!
「にゃあー!」(※可愛らしいニャンコの声でお送りしています)
ドッカンドッカン!
「にゃにゃーん!」(※代替テキストは可愛いニャンコです)
ぼっかんぼっかん!
「にゃ、ああーん!」(※ニャンコの声でお楽しみください)
ミチル、ほぼ失神。足腰立たず。
チルクサンダーはその隙に……
「チ、チル、くう……ん」
か弱き細指でミチルが引き止める。
なんか、こう、すんごい表情を想像してください。
「行っちゃ、らめえ……♡」
チルクサンダーが採石場でフルパワーを出せる機会は今後も訪れない……




