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【BL】くしゃみのラブラブSS集め  作者: 城山リツ
05 おてて繋いで散歩しよ

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22/30

(アニー×ミチル)「オレンジ色の悪魔」

 二人っきりになれる場所がある。

 アニーはそんな事を言いながらミチルの手を引いて歩く。

 もうすぐ日が沈みそうな時間になって、たどり着いたのは海が見える通りだった。


「ふわあ、海風が気持ちイイ……!」


 アニーの手の温もりを感じながら、潮風を頬に受け、ミチルは海辺のお散歩コースを堪能していた。


「良かった。ミチル、気に入った?」


「うん……ん、うへへ……♡」


 ご機嫌で見上げたアニーの顔。

 夕暮れのオレンジ色の日差しを受けて、なんかもうそれはもう、カッコイイ。

 ミチルは思わずぽっと頬を染めて、照れながら俯いた。


「ふふふ。家の中にいればいつでも二人っきりだけど、それも閉塞的でしょ? たまには外もいいよね」


「そうだねえ。確かに外の空気を吸うのはイイよねえ」


 なんとなくアニーと家にいるばかりだと、ちょっと危険な思考に陥りそうになる。

 引きこもる、とか。

 閉じこもる、とか。

 そんなプレイに耽ってしまう事があるので、外には積極的に出たいミチルであった。



 

「でもさ、なんで海辺だと二人っきりになれるの? 外なのに」


 ミチルは素朴な疑問を投げた。二人っきりになりたいから外出する、と言うのは矛盾を感じる。

 ところが、今現在、誰ともすれ違わないのも事実。

 この場所は何なんだろうか、とミチルは不思議に思っていた。


「それはねえ、この海岸の今の時間ならでは、なんだよ」


「うん? どゆこと?」


 うふふ、と笑いながらアニーはスラスラとこの海岸の()()()を語る。


「ここら辺ではね、黄昏時にこの海辺にいると橙色の悪魔ディアブル・オランジュに攫われるって伝承があるんだ」


「オレンジ色の……悪魔?」


「そう。だからね、地元の人は夕方は絶対に海辺には近づかないの」


「ははあ……」


 なるほど、それで、誰も見ないという訳だ。ミチルは納得した。

 だが、ちょっと待ってよ。


「じゃあ、オレ達も来たらヤバいじゃん!!」


 焦るミチルをアニーは笑い飛ばした。


「アハハ! そんなのに俺が負けると思う?」


「勝てるモンなの!?」


「──フッ、そんな悪魔でさえも、俺のミチルへの愛を消すことは不可能さ……」


 キザったらしい精神論だった。だがそれがアニーらしい。

 まあ、伝承(いいつたえ)という事は、御伽話に近いんだろう。とミチルは思い直した。

 地元の人はそれを信じているので出てこない、というだけの話だろうと。



 

「どんな悪魔が出て来ても、君のこの手は離さない……」


「ふにゃ……あぁ」


 夕陽の海をバックに、映えるアニーの顔面の良さ。

 ミチルは握られた手以外から力が抜けそうになる。

 だめよ、こんなトコロで腰砕けたら! ダメなのよー!!


「ああ……見てごらん、ミチル」


 アニーは砕けそうになるミチルの腰を引き寄せて、海辺に視線を移した。

 この動作でミチルの腰はすでに砕けている。


「ふわ……」


 そんなミチルの眼前には、オレンジ色の光を放って堕ちていく太陽の姿が。


橙色の悪魔ディアブル・オランジュのお出ましだ……」


「これが……?」



 

 ああ、そういう事か。

 海面へ堕ちゆく太陽の、あまりの美しさに誘われる。

 これに魅入られた者はきっと水底(みなぞこ)へ吸い込まれてしまうのだろう。


「悪魔が……堕ちていくよ」


 その後には、真っ暗な宵がやってくる。

 アニーの心にいつまでも燻る、宵闇が。


「ミチルも……堕ちる?」


「え……」


「……俺に」


 甘いキスで惑わせて。

 アニーはミチルを己の心の中に堕とそうと企てる。



 

「うん……」


 いいよ。

 堕ちてもいい。


 でも。


「アニーは、このままでもいいよ」


 わざと暗がりに行かなくていい。

 無理して陽当たりを目指さなくてもいい。


 ミチルはそう願って手を伸ばす。つま先を立ててアニーの唇に触れた。



 

「オレの側にいるだけで、いいよ」


「ミチル……」


 ああ、そうだね。

 ここが何処かなんて関係ない。

 君の隣が俺の居場所。


 陽が落ちて、宵闇が来て、また光が昇る。

 その全てを君と見られたら、それでいい。






 ◇ ◇ ◇


 PS ギャグがほぼ無かったことをお詫びします(笑)

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― 新着の感想 ―
キザなセリフもアニーが言うと、似合うしキュンとしちゃう♡ いつもと雰囲気違うのが更にキューーン♡♡♡ ミチルがアニーにキスして「オレの側にいるだけで、いいよ」が良すぎる~。 本当素敵でした!
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