(チルクサンダー×ミチル)「シルバーレシオは緑がお好き」
これは着ぐるみではない。断じて。
ましてやオレの願望がバグった末の妄想でも……ないっ!
「ちっ、ちっ、チルくーん♪」
ここは教会ペルスピコーズ。ミチル達はいまだ居候を続けている。
法皇のマゴなので、どこに行ってもどエライ扱いをされるミチルは、今日もまんまと僧正からおやつをもらった。
「チルクサンダー? おやつ食べよー、チョコレートまんじゅうだよー」
教会の各所を回ったが、チルクサンダーの姿がどこにもない。
「チルクサンダー?」
知識を蓄えるのが好きなチルクサンダー。歴代法皇の手記やら資料やらを読み漁るのが最近のお気に入り。法皇しか入れない秘密の書庫……と言っても本棚は少なく、居心地のよいリビングのような部屋をミチルは覗く。
そこにいるかと思ったら、やはりいない。いるのは大きなパンダのみ。
「なあんだ、パンダしかいないや」
ミチルが踵を返そうとすると、愛しきカレピのボイスが聞こえてくる。
「ミチル、どこに行くのだ」
「あれえ? チルくん、どこにいるの?」
もう一度部屋を見回しても、いるのは大きなパンダだけ。
「我はここだ」
「うん?」
窓辺に立って逆光なため、よくわからなかったんですが。
このパンダ、人の顔があるぞ。しかもかなり美しいぞ?
「チルくんがっ!!」
まさかまさかの。
「ミチル、我、何かおかしいぞ」
「パンダになってるぅうううー!?」
その形状を説明します。
チルクサンダーは人面パンダになった訳ではありません。
そうですねえ、幼児用の着ぐるみパジャマってあるじゃないですか。動物のフード付き、全身つなぎの。あんな感じです。
でも、細身のチルクサンダーが着たら細パンダでは? って思うじゃないですか。
大丈夫です。胴体は何故か膨らんでおり、カワイイと感じる白銀比(1:1.414)を再現しています。
言葉は悪いかもしれませんが、ずんぐりむっくり的胴体なのです。
「解説はいいっ!」
ミチルは脳内?に流れる何かを振り払った!
「どおーしちゃったの、チルくん! そんなに可愛くなってえ!」
「いや……我にもさっぱりわからぬ」
「まさか、歴代法皇の……呪い!?」
ミチルは青ざめていたが、動転した気分を紛らわせたくて半分冗談を言ったつもりだった。
「うむ……とある法皇の手記に白黒熊の記述があってな。それを読んでいたからかもしれぬ」
「どうしよう、えぇじいちゃん、今日は出張で帰らないよ」
ミチルの頼みの綱はいつだって曽祖父である法皇エーデルワイス。
だが、チルクサンダーも今は人の身であるが、かつてはカミの子息。今の状態が危険かどうかくらいはわかる。
「なに、焦ることはない。特に邪悪な魔力は感じない。法皇の帰りを待っても遅くはあるまい」
「ほんとにい? じゃあ、とりあえずおやつ食べる?」
ミチルの切り替えも早い。異世界の不思議に慣れきってしまっている。
カミの子息であったチルクサンダーの判断なら、誰よりも正しい。
……というのは建前で、もふもふパンダになったチルクサンダーをひとときの間でも堪能したいのだ。
「ふむ。今日のおやつは黒くて甘いチョコレートまんじゅうか……」
チルクパンダーはミチルの手の中を覗いて、少し嘆息した。
「我、なんだか今は、緑を食したい気分だ……」
「緑? あっ、パンダだから笹的な事かな?」
ミチルの理解が早すぎる。異世界に慣れきってしまっている証拠である。
「わかった。なんか、緑色の食べ物もらってくるね!」
そうしてミチルは一旦部屋を出ていくのである。
「チルくーん! 緑の食べ物、もらってきたよー!」
期待にほっぺを膨らませて、ミチルはカゴいっぱいの野菜を手に戻ってきた。
緑と言えば、ほぼ野菜カラー。甘くないけど大丈夫かな? とか思いつつ、最初の野菜を手渡す。
「はい、笹的に持って食べられそうなセロリはどう?」
「うむ」
バリバリ、むしゃむしゃ……
チルクパンダーの顔は曇ってしまった。
「我、緑、おいしくない……」
「だよねー。じゃあ、キューリはどうかな?」
(※セロリは栄養豊富な美味しい野菜です)
パキパキ、ボリボリ……
チルクパンダーの顔はやっぱり曇ったまま。
「我、緑、おいしくない……」
「そっかー、やっぱりねー」
(※キューリも美味しい野菜です)
チルクパンダーは悲しそうにしている。おいしくない、と感じるものを食べさせられたのだから当然だ。
だが、ここまではミチルの想定内。チルくんにはごめんやでだけど、ミチルはちょっと遊んでみたかったのだ。
おかげでしょんもりしたチルクパンダーの、かわゆい佇まいを心のアルバムに収められた。
「ふっふっふー! 安心おしよ、チルクパンダー♡ 真打は別にアリだよ!」
「おいしい……? 緑、おいしい?」
首を傾げるしょんもりパンダ。可愛さの極致。
ミチルは悶える心を抑えて、とっておきのブツを取り出した。
「ジャーン! 緑で甘いメロン♡ 大僧正(※教会のナンバーツー)のデザート、かっぱらってきたあ!」
「緑……良き匂い」
チルクパンダーは興味津々!
「はい、あーん♡」
メロンをスプーンで掬って、ミチルはチルクパンダーに食べさせた!
──開・眼ッ!
「我、緑、うまい! これはおいしい緑!」
メロンにメロメロー♡
「良かったねえー♡ チルクパンダー♡」
美味しいものを一緒に食べて、すっかりご満悦の二人。
今宵、ミチルは何故か膨らんだチルクパンダーのもふもふお腹♡の上で寝ました。
そしたら別のところも膨らんだそうです。




