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4月9日 その⑪

 

 一通り、宇佐見蒼の驚きの言葉が終わる。そして、チラチラとマスコット先生の方を見て「情報⑤を早く」とでも言いたげな、視線をしている。


「宇佐見蒼君が、早くしてくれってチラチラと視線を向けてくるので情報⑤を発表します!」

 マスコット先生が、ついに情報⑤を発表する。


「情報⑤生徒会に属している人を知っている」


「な、な、な...なんでそれを知ってるピョン?」

「なんやと?」

「津田信夫の情報④と同じやり口か...」

「先程は嘘だったが、今回は本当だと言う可能性もあるのか...」


 宇佐見蒼がいつもの構文で驚くことを始め、森宮皇斗が、表情を一つ変えずに津田信夫の方をチラリと見ながら呟き、森愛香が小さな欠伸をする。


「栄君...本当かな?」

「さぁ、わからない...宇佐見蒼の反応にヒントがないから...」


「───バレてるピョン?そんな...そんな!」

 やはり、毎度同じ反応を繰り返す宇佐見蒼。


 驚きを隠すより、全てをオーバーで驚く方が「本当の驚き」を隠すのは簡単なのだ。だから、宇佐見蒼はそれを実践している。


「どうしてピョン?生徒会のメンバーを...メンバーを知っているって...」

 これで、宇佐見蒼の驚きが終わる。これが、本当の驚きか、偽りの驚きかは判断がつかない。


 全て、全く同じ反応だった。毎度、律儀に顔を青褪めさせるし毎度、体をわなわなと震わせていた。


「───宇佐見蒼、質問だ」

「な、なんだピョン?」

 宇佐見蒼は、森宮皇斗の方を見る。


「本当でも嘘でもいい。生徒会に属している人は誰だ?」

「それは───」


 宇佐見蒼は、キョロキョロと傍観者を見回す。誰か一人に、視線を留めるようなことはしない。一瞬でも、視線を留めればその視線の先にいた人物が生徒会に属しているかもしれない誰かになってしまうからだ。



「───い...いけ...」


 ゾクリ。一瞬、俺の名前を呼ばれそうになったような気がする。だが───


「言えないピョン!ボクは、おんなじクラスメートを売ることはできないピョン!」

 宇佐見蒼は、泣きそうな目でぶりっ子ポーズをしながらそう述べる。


「ボクは皆に仲良くして欲しいピョン!だから、知っていたとしても言わないし知らないとしても嘘はつかないピョン!」

 宇佐見蒼はそう述べる。


 だが、宇佐見蒼の言っていることは半分正解なのだろうが、半分は間違っているのだ。


 ───そう、宇佐見蒼は()()()()()()()()()のだ。


 先程の津田信夫は、焦ってせめてもの責任転嫁をするために、中村康太を売った。もっとも、多数票となり「嘘」と発覚したために中村康太は平塚ここあを殺していないと証明されたのだが。


 宇佐見蒼は、津田信夫とは違い嘘を付く必要がない。全て、驚くという戦法を取っているので誰かに責任転嫁をする必要がないのだ。


 逆に、今嘘を付いて誰かを疑念の標的にすると、その人物から恨まれることになる。ならば、真実でも嘘でも言う必要はないだろう。


 それに、誰かを名指しせず知ってるかどうかも明かさせないことで生徒会のメンバー全員に緊張を走らせることができる。


 津田信夫は言う方が利点があったが、宇佐見蒼の場合は、言わない方が利点があるのだ。


「そうか、ならば追及しないことにしよう」

「妾もだ。無理に話す必要はない」


 森宮皇斗や森愛香も、俺と同じ結論に辿り着いたのであろう。だから、2人も追及することはなかった。


「なんでや!聞いたほうがええやろがい!」

 津田信夫が、そう述べる。津田信夫は、嘘を述べてそれが公開されてしまった。だから、宇佐見蒼にも同じ立場にしてやろうと策略しているのだろうか。


 いや、きっと俺や森宮皇斗・森愛香と同じ結論に辿り着けていないのだろう。


「森愛香さんが言わなくていいって言うなんて珍しいね」

 隣に座ってる智恵が小声で、森愛香が追及しなかったことを不思議に思っていることを教えてくれる。


「今回は言わない方が利点があるんだ。だから、聞いてないんだと思う」

「そうなんだ...凄いね、栄達は。すぐに何が良くて何が悪いとか辿り着くんでしょ?私にはチンプンカンプンだよ」


 智恵はそう述べた。


「私は馬鹿だからさ...梨央や紬からポイントを貰っちゃったけど...私なんかより梨央か紬のどっちかが出たほうがよかったんだよ」

 智恵はそんな事を言う。ちなみに、チームFの最後の一人である美緒は、俺の看病のためにポイントを全て失ってしまったので、智恵にポイントを渡すことができていない。


「そんなことないよ───っていうのはあまりに無責任かな。でも、本戦に出たのは智恵なんだから、俺と一緒に頑張ろう」

 俺はそう言うと、智恵に向かって微笑む。智恵は、顔を少しだけ赤くした。


「───うん、わかった」

 智恵はそう言うと頷く。


「───えないピョン!言えないピョン!」

「言えや!本当でも嘘でも蒼に非はないやろ!」

 俺と智恵がこそこそ話をしている間にも、津田信夫と宇佐見蒼は「言う言わない」と論争を行っていた。


 智恵の声が一秒でも長く聞きたい俺にとっては邪魔だったので、意識中に入れていなかった。


「おい、津田信夫。しつこいぞ。言わぬと言っているのだから言わぬ!貴様は、自分が人を殺したのを少しでも隠すために康太を売ったのだろう?ならば、貴様は文句は言うな!」

「な、なんやと!」


 津田信夫と森愛香の一触即発の雰囲気。


「ボ、ボクの為に喧嘩しないでピョン!」

 宇佐見蒼がそう述べて2人の喧嘩を止める。関西人と、傲慢女王が腹黒兎少年を取り合う姿は、少々見苦しかった。


 ***


「───では、そろそろ投票に行きますか?」

 なんやかんやあって、2人の言い争いが収まったところでマスコット先生の提案。俺達6人は静かに頷いた。


 宇佐見蒼の情報

 ①両親はウサギだ

 ②彼女を殺した

 ③デスゲームならば、人を殺してもいいと思っている

 ④これまで、いじめられていた

 ⑤生徒会に属している人を知っている

『スクールダウト』

情報の公開される順番 津田信夫・森宮皇斗・宇佐見蒼・森愛香・池本栄・村田智恵

現在 宇佐見蒼 投票

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 宇佐見の情報も真意が分かりにくい。 というかもし②が本当ならだいぶヤバい奴ですね。 ①は嘘、③は本当っぽい、とすると②か④、⑤がどうなるか!
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