7月26日 その⑩
俺は、皇斗と愛香の2人と解散した後に自分の寮に一度戻る。
リビングに顔を覗かせると、そこにはゆっくりしている3人の姿があった。
「あ、おかえり」
俺に気が付いた純介が、低反発クッションの中から挨拶してくれる。その声で俺に気が付いた稜と健吾の2人も、首を俺の方に向けて「おかえり」と続く。
「ただいま。智恵は?」
「こっちには来てないよ」
「じゃあ、チームFの寮か」
荷物をリビングに置いて、チームFの寮に行こうと踵を返そうとしたその時だった。
「待って」
稜が俺を呼び止める。
「──どうした?」
「智恵はチームFじゃなくてチームHの寮にいると思う。歌穂が朝探してたからさ」
チームHの寮に行く──ということは、きっと九条撫子に呼ばれたのだろう。そうなると、十中八九「七つの大罪」についてのことだと予想が付いた。
「わかった、ありがとう。じゃあ、チームHの寮に行くよ」
「おっけー」
俺は稜にそう挨拶をすると、チームHの寮に向かう。
第8ゲームで俺は牢屋に捕らえられていたが、3日目くらいから運動不足で上手く寝付けなくなっていた。
そのため、それを誤魔化すように牢屋の中でできる筋トレをしていたのだ。
だから、体が鈍るようなことはなかったし、歌穂から提案──というか強制されたメニューで悲鳴を上げることもなかった。今の俺には、腹筋も腕立て伏せもスクワットも200回どころか500回だろうと悲鳴を上げずにできる。1000回は微妙だ。10000回は無理。
そんなことを思いながら、俺はチームHの呼び鈴を鳴らす。すると──
「なんだ、何か言い足りない事でもあったか?」
珍しく玄関の扉を開けたのは愛香だった。いつもはこんな雑用に手を貸さない彼女だが、今日は出てくれたようだ。
「いや、目的は愛香じゃない」
「──知っている。貴様のことだから智恵のことだろうと思った。栄のお姫様は、この中で栄のことを待っている」
愛香は俺のことを寮の中に招いてくれる。俺は愛香の横を通って、寮の中にお邪魔した。
そして、俺達がリビングの方へと向かうと──
「あ、栄!」
唐突に、智恵が俺の胸の中に飛び込んできたものだから俺は少しびっくりしてしまう。俺は咄嗟に智恵を抱きしめて受け止めた。
そして、智恵の奥には歌穂と紫陽花の2人によってなんとか抑えられている撫子の姿があった。
「──なんとなく状況は掴めた」
きっと、第8ゲームで智恵が「七つの大罪」を暴走させてしまったから撫子が智恵に怒ったのだろう。
そして、暴力沙汰になろうとしたから2人が必死に抑えている──という感じに違いない。
「栄、智恵から離れなさい!紫陽花と歌穂は私から離れなさい!」
リビングの床に抑えられている撫子がそう吠える。
「智恵、暴走のこと喋ったの?」
「ううん。勘が鋭くてバレちゃった」
智恵がそう口にして、申し訳なさそうにそう口にする。
まさか、九条撫子にバレるとは思わなかった。もしかしたら、智恵に鎌をかけたのだろうか。智恵は純粋だから、そういうのにすぐに引っかかりそうだった。
「栄、そろそろ限界だから一回そこに座って。逃げないで!」
歌穂の悲痛な叫びが聴こえてきて、俺と智恵はその言葉に従う。リビングの中に入って、抑えられた撫子の前に座る。
「撫子も一回落ち着け。妾も撫子を傷付けたくはない」
撫子の上に乗る紫陽花が、宥めるようにそう口にする。2人は、第3回生徒会メンバーだ。
紫陽花はマスコット先生に四次元を追い出されてここに住んでおり、撫子は智恵の七つの大罪を抑えるためにここに滞在している。
「──俺にも話を聞かせてくれ。そして、弁明させてくれ」
俺は、必死に撫子に対してそう口にする。怒りに燃える彼女であったが、思考力は残っているのか動くのを止めた。彼女の体から出ていた赤いオーラが消えたから、きっと意図的に憤怒を発動させたいたのだろう。そう考えると恐ろしい。
「──智恵は七つの大罪を暴走させた。私は前に許さないって言ったよね」
撫子はキツい視線を飛ばしてくる。上に乗っていた2人がどいたから、撫子は地べたに座る俺達の前に立ち上がった。
「待ってくれ。智恵は暴走させたくて暴走させたんじゃない」
「わかってるわよ。暴走させたくてさせたわけじゃなくてもダメなものはダメって話をしてるの。核爆弾のスイッチを押しかけたのよ。それに、今回は完全に世界が壊れかけてた。あのまま智恵が強欲を暴走状態にさせたままなら、智恵の意識は乗っ取られて世界は壊れていたわよ」
「そんな、私は乗っ取られてなんか……」
「だから!強欲を発動させてる時は乗っ取られてる自覚無く乗っ取られていくから細心の注意が必要なんだって!」
智恵が怒られている理由の詳しい法則はわからないが、どうやらかなりヤバい状態に入っていたらしい。
智恵の話では、イマジナリー栄と一緒に茉裕を倒した──って感じでまとめられていたからわからなかった。
そして、怒り心頭の撫子の口から告げられたのは、約束を破った俺達への罰──、
「──本当に許せない。これは当初の約束通り、智恵と栄は一週間隔離!」





