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RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜 その③

 

 城内都市パットゥの第五層の最奥を目指し、私は走る。

 隣では、幻想の栄が並走してくれている。


『茉裕に勝ててよかったな。これで俺の方に集中できる』

「うん。栄も協力してくれてありがとう」

「──。おう」


 ──イマジナリー栄は、智恵の肉体を乗っ取ることを画策し、後一歩のところまで行ったのだけれど智恵の「栄を助けたい」という気持ちに負けて乗っ取ることに失敗した。

 イマジナリー栄は再度、智恵の肉体を乗っ取る機会を模索するけれども見つけられないまま最奥まで辿り着いてしまった。


「ここが最奥……」

 一際大きな扉が開かれており、中から光が漏れている。少し暗い廊下にずっといた私は少し眩しく感じる。

 だけど、私がそこで足を止めなかったのには理由がある。何故なら──


「智恵!梨央が!」

「梨央」

 イマジナリー栄の叫ぶような声を聴いて私が顔を上げると、そこに見えたのは百鬼夜行に襲われる梨央だった。

 燃え盛っている百鬼夜行の手には大剣が持たれており、その左右にいる純介と紬の魔法での進路妨害も意味を成していないようだ。


 このままじゃ梨央が死んでしまう──。

 そう思った矢先、私の体は動いていた。茉裕を倒すことができた私であれば、梨央を救うことはできる。

 私の心には栄もいるし、大丈夫。


「──〈焔天の月(ルナ・イグナイト)〉」

 私は、すっかり得意技になった〈焔天の月(ルナ・イグナイト)〉を使用して百鬼夜行と梨央の間に入る。そして、梨央のことを一刀両断しようとする大剣が持たれている百鬼夜行の右腕を斬り落とす。


 ──きっと、茉裕との戦闘が無くレベルが上がってなかったらこれほどの威力はでなかっただろう。

 ──きっと、これが普通の剣だったら百鬼夜行の腕は斬れなかっただろう。


 茉裕との戦闘を経てレベルが62まで上昇しており、尚且つ私の剣がトリカブトで魔法関連の剣術の攻撃力が2倍に上がっていたからこそ斬れた。私のこれまでの努力は全部繋がってる。そう思うと、充実感で満たされるような感じがした。


「「「──智恵!」」」

 私の乱入に驚いたのか、この部屋にいる百鬼夜行以外の全員が声をあげる。

 入り口の近くにいた魔法使い3人組──梨央と紬と純介以外にも、百鬼夜行を追いかけるようにしてこっちに走ってきていた稜と健吾、それと弓を構えている美緒の姿があった。そして──


「──栄」

 天井の中心に、吊るされている小さな檻。その中に、栄の姿が見えた。

 栄が生きている。ちゃんと、私の恋人は生きている。

 そう思うとなんだか安心しちゃって、私はその場に崩れ落ちるように落下する。


 それにビックリしたのか、すぐに純介が動いて私の手を引いて百鬼夜行から距離を取る。

 だけど、私は今百鬼夜行どころではなかった。


「腕

 を

 斬

 ら

 れ

 た

 か」

 痛みを感じないのか、傷口を眺めながら他人事のようにそんなことを口にしている百鬼夜行をよそに、私は檻にいる栄の真下へと駆け寄る。


「栄!栄!」

 見上げながら走るから、足元が覚束ない。足がもつれて転びそうになりながらも、私は栄の方へと向かう。栄。栄。


『──よかったな、会えて』

 ふと後ろの方でそんな声がした。私はその声にびっくりしてつまずいてしまう。そのままゴロンと一回転して後ろを見ると、幻想の栄が霧消しそうになっていた。


「栄……」

 私は幻想の栄の名前を呼ぶ。本物の栄に会えたら、次は頭の中の栄が消えてしまう。


『俺の役目は終わったみたいだ。後は本物の俺に任せるよ。幸せにな』

 そう口にして、イマジナリー栄は微笑みながら消えていく。悲しいけど、きっと言うことはそうじゃない。


「──ありがとう」

 私がイマジナリー栄に感謝を伝えると、栄はニッコリと笑みを浮かべて拳を私の方へと向ける。


 ──ちゃんと本物の俺を助けてくれよ。


 言葉は無くても、そう言っているのが私にはしっかりと伝わった。

 私は涙がこぼれそうになるのを堪えて、剣を握って立ち上がる。


「面俺

 倒は

 な最

 の強

 がだ

 一。

 人だ

 増か

 えら

 た、

 な負

 。け

 だる

 がこ

 、と

 問な

 題ど

 なな

 いい」

 百鬼夜行がそう口にすると、私の方へ体を向ける。だけど、さっきは百鬼夜行の右腕を斬れた。だから──


「──え、右腕が復活してる!」

 斬ったはずの右腕がくっついて、しっかりと大剣を握っているのが見えて思わずビックリしてしまう。


「復俺

 活は

 で斬

 はら

 なれ

 いて

 。も

 再再

 生生

 だす

 。る」

「プラナリア?」

「どちらかと言うとトカゲの尻尾斬りじゃない?」

 私の疑問に答えてくれるのは、近くまで来てくれた美緒だった。

 気付けば、イツメンの8人が全員いて安心する。やっぱり、栄を助けるならこの7人だ。


「よーし、再生するとかしないとか関係なく、たくさん斬れば問題ないでしょ。栄!もうすぐ助けてあげるから、待ってて!」

 私は、真上の牢屋に捕らえられている栄に向かってそう声をかける。そのまま、私は百鬼夜行の方へと走り出した。


「来

 い

 。

 小

 娘」

 百鬼夜行もそう口にして、両腕に1つずつ持たれている大剣を振って風を起こし智恵を迎え撃つ。


「──〈流星斬り(メテオスラッシュ)〉!」

「〈

 (ダブル)

 (ダブル)

 (スラッ)

 (シュ)

 〉」

 2人の、合計3本の剣が重なり『古龍の王』と勇者一行の戦いは再開したのだった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
役者もそろいましたね。 百鬼夜行がここからどう動くか、見物です。
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