RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜 その④
智恵の炎を纏った剣と、炎を纏った百鬼夜行の大剣がぶつかる。
剣同士が擦れて火花が散り、それが火種となり巨大な獄炎を生む。
「──〈表裏一閃〉!」
智恵と百鬼夜行が真っ向からぶつかっている隙を突いて、健吾が縦に剣を振り降ろす。
背中を襲う剣の冷たさに反応した百鬼夜行は、そのまま腰を回して後方の健吾の方へと大剣を振るう。
「遅ェよ!」
そう健吾は、背中を捌く剣と共に、重力に任せて落下する。屈む健吾の上を大剣が通過していったが、健吾に外傷はない。そして、ヘイトが智恵から健吾に移る前に──
「──〈橙菖蒲〉!」
美緒の弓から3本の矢が放たれて、百鬼夜行の方へと進んでいく。そのまま、百鬼夜行の太い腕に3本とも突き刺さった。
「多一
勢人
にず
無つ
勢確
は実
厄に
介殺
だす
。か」
そう口にして、視界の方にいた健吾に向けて2本の大剣を振るい──
「──〈衝撃吸収〉!」
間に駆けつけてきた稜に、大剣の攻撃を無効化されてしまう。そのまま、稜と健吾の2人は百鬼夜行から距離を取った。後方にいる智恵から後方が来るのか──そう百鬼夜行は察して後ろを見てみるけれども、後方に智恵はいない。
「魔
法
か」
「当たり。でも、もう遅いよ。〈雷炎の楔〉!」
「〈絶対神の憤慨〉!」
「〈暴雷の雄叫び〉!」
百鬼夜行が魔法だと勘付いた刹那、魔法使い3人組から雷魔法がお見舞いする。天から前から後ろから、百鬼夜行を追い詰めるようにして接近してくる掴むことのできない魔法が襲う。
百鬼夜行は雷撃を避けることもせずに、ただそれを一身に浴びた。が──
「小
虫
共
め
が」
百鬼夜行はそう口にだけで、目に見えたダメージは無さそうだった。
「再生持ち、いざ相手にするとこんなにウザいとはな……」
健吾が、隣で盾を構えたままの稜にそう口にする。
今のところ人数の差で有利に立てているが、それも現状ってだけでいつでも逆転される可能性はあった。
「安定して再生力を上回るペースで攻撃し続けないいけないんだけど、今のところ智恵が右腕を斬ったこと以外目立った戦績はないからなぁ……」
「さっきオレも背中に一閃入れたけどな」
智恵の斬った右腕も、健吾の加えた一閃も、今は既に再生されている。ヒットアンドアウェイと不意打ちを繰り返して傷を増やしても、百鬼夜行の再生速度を上回ることはない。
「やっぱり必要なのは、多少再生されても問題ないような大ダメージを与えること」
百鬼夜行を回り込んで合流した智恵がそう口にするのを耳にして、稜と健吾の2にんは頷く。
今のところ、百鬼夜行の体にダメージを与えられているのは剣だけだ。美緒の矢や3人の魔法はヒットしているが、すぐに再生されてしまってあまり意味が無い。
「──いや、違うな。意味がないわけじゃない」
そう口にする稜は、何か作戦を思いついたようだった。そして、健吾と智恵の2人に作戦を伝える。
「──成程。それなら問題の再生に対処できそうだ」
「私も同感。それをやるなら他の皆にも伝えないとね」
「あぁ。だから、健吾は美緒に、智恵は梨央と純介と紬に伝えて来てくれるか?」
「あぁ」
「わかった」
そう口にして、智恵と健吾の2人は各々の方向へと走り出していった。だから、百鬼夜行の目の前に残ったのは稜一人で──。
「お無
前駄
一死
人に
でか
何、
が犬
で死
きに
るか
??」
「火だるまに煽られてもなんとも思わないな、再生が無かったらアンタは今頃死んでたぜ?」
稜はそう口にして、盾をインベントリにしまい代わりに剣を取り出す。
「笑攻今い
わ撃、る
せを俺か
る喰にら
ならは攻
。っ余撃
余た裕を
裕んが喰
がじ有ら
なゃりっ
いな余た
かいっん
ら。てだ」
百鬼夜行がそう口にして、右手の体験を肩に載せて左手の体験を稜の方へと向ける。
「仕本
方気
がで
なは
いな
。く
半、
気半
を気
出だ
しけ
てだ
やけ
るど
。な」
その言葉を虚空に残すと、一瞬にして稜の視界から百鬼夜行は消える。
「──後ろ!」
集中していた稜は、それが誰の声かわからなかった。純介の声のようにも、美緒の声のようにも聞こえた。いや、もしかしたら栄の声かもしれない。
わからない。わからなかったが、稜は咄嗟に後ろを振り向く。そこには大きな影が出来ており、稜に被さっていた。
「──ッ!」
「〈
開
闢
〉」
聞いたことのない技を百鬼夜行は放つ。稜にはその技ただの大振りに見えたが、それと同時に本能が警鐘を鳴らしていることに気が付いた。
──この技に当たったら、死ぬ。
だが、回避するのも間に合わない。大剣の間合いから抜け出すことができない。
「死」
稜が数秒後の未来を口にした後、咄嗟に体を宙に浮かす。要するに、小ジャンプだ。
体に体験がめり込まないように剣を前に向けて、小ジャンプをする。
──足で踏ん張っていたら、足腰の骨が砕けるようにした。
だから、ジャンプをした。すると──
自分はホームランボールにでもなったのか、と錯覚する程飛ばされる。体験の力が全て稜に伝わり、稜は吹き飛ばされる。
だが、これは壁の追突を回避できればなんとかなる。
部屋の中止だから壁にはまだ余裕が──。
稜の思考は、硬いものに衝突することで中断する。
「残
り
6
人」
すぐに2度目の衝突がやってきて、半身の感覚が無く意識が朦朧とするの中、稜の耳には百鬼夜行のそんな声だけが聴こえた来たのだった。





