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『剣聖』たる所以 その②

 

 初代『剣聖』アイソールド・ガラニュートは800年前を生きた人物であるにもかかわらず、現代にも通ずる技量を持っている。

 原点にして頂点、そう呼ばれるほどの天才である傑物である彼は、800年前の王国戦争での相手が鳳凰でなければ龍種を1体討伐することができたとも言われており、今回の歴代『剣聖』の中でも一目置かれる人間で──


「──すが、僕にかかればこの通り」

 初代『剣聖』の体を刻み、そのまま霧消させるのは当代『剣聖』の剣。「最強」と称され研究され尽くした初代『剣聖』の剣技を現代に顕現させても、それはもう「完成された初歩」に過ぎない。

 脈々と受け継がれた「最強」の2文字は、『剣聖』という二つ名のお供でしかなかった。


 バッサリと初代を斬り伏せた当代に続いて迫るのは、第30代『剣聖』にして『逆転劇』の愛称で親しまれたエスカノール・ユミルと、第19代『剣聖』アルバ・グレゴロであった。


 ──が、当代の剣によって瞬く間に2人の首は胴体と泣き別れになり、血を模したMPを噴き出しながら霧消していく。

 2人にも数えきれない程の覇業と伝説が存在しているが、そんな歴史の教科書の一節を当代は軽々と斬っていった。


「次は──」


 第15代『剣聖』二ークス・ガブリアルの双剣が、当代の首の方へと伸びる。

 当代はそれを見て、腰を低くして双剣を回避する。そして、そのまま二ークスの腰に強烈な蹴りを入れて姿勢を崩す。


「──〈星屑(スターダスト)斬り(スラッシュ)〉」

 後ろに退きながら剣を振るい、防御も回避もできない二ークスの体に傷を彫る。そして、直後に軽快なステップ前方に再突進し、二ークスのトドメを刺した。


 着実に数を減らしている現在だが、まだ残りは27人──いや、たった今第22代『剣聖』ピャーリル・ヒッターが殺されたので26人に減った。だが、それでもまだ26人もいるのだ。


『剣聖』の命を狙う剣が減ったとはいえ、その濃度はほとんど誤差の範囲で──


「──と、この乱雑な剣の振り方はギャバン・タタラスさん!」


 第23代『剣聖』ギャバン・タタラスの剣の振りは、とにかく大雑把で乱雑なことで有名だった。

 周囲の被害を考えず全てを薙ぎ倒しながら魔獣を倒していき、剣が無くなっても拳で戦って、そっちの方が結果的に強かったから『剣聖』のくせに『徒手空拳』だなんて二つ名を付けられたのは不名誉な話だ。


「拳闘士は間合いに入られると面倒なので、剣を持ったままやられてもらいます」


 ──残り、25人。


「──で、次は」


 第5代 アストラル・ヴォルグ。残り24人。

 第9代 マグリス・ヘルソフィア。残り23人。

 第26代 ハルド・ガルガンディア。残り22人。

 第18代 イアリス・ランティス。残り21人。

 第12代 ポグトス・ジャージャー。


「──残り、20人!」

 額にやっと浮かんできた汗をぬぐいながら、当代は残りを数え上げる。

 気付けば、頬に切り傷ができ軽鎧に傷も増えていた。この激戦の中で、致命傷を与えられることもなく相手を2/3ほどまで減らせていることは褒められるべきだろう。


「──次は誰が来るんでしょう」

 第3代『剣聖』オーストレール・アンプルを斬りながら、次に迫ってくる相手を見定めて剣を構える。

 当代の命を狙って剣を向けてきたのは──


「──カグラ・チャムリエルさん!」

 第6代の剣を自らの剣で受け止めながら、当代は目を輝かせて名前を呼ぶ。

『禍玉』の異名で恐れられた第6代は、剣と魔法の二刀流で広く知られており、当時の『魔帝』──第2代『魔帝』とも拮抗した実力を持つ。


「──ですが、残念なことに魔法杖を持っていない。できれば魔法の実力も観たかったなぁ。やっぱ、カグラさんの本領が発揮されるのは剣と魔法とのマリアージュなんだから」

 自分の勝ち目が減ってでもいいから、相手に本領を発揮してほしい──そう願えてしまう当代『剣聖』は、やはり最強だ。

 瞬きするよりも速く第6代『剣聖』の体をバッサリと袈裟切りし、霧消に追い込む。


 そして、そのまま流れるようにして第21代と第4代を斬り、第11代を霧消させる。

 あっという間に第28代の首が空を飛び、第16代の四肢が爆ぜた。当代は次へ次へと視線を歴代『剣聖』の方へと向けながら剣を振り続ける。


「──っと!」

 後方から、第32代『剣聖』ヴィザーズ・ラクリモサの剣が迫った時、勇者の前方には第20代『剣聖』エリック・ヘイズが剣を振り降ろさんとしていた。

 前にも後ろにも逃げれない袋小路に追い詰められたと思った当代であったが、咄嗟にエリックの剣を払って弾き飛ばしたのと同時にエリックに抱きついた。


「──」

「すごい筋肉!やっぱり皆、努力していて凄いなぁ」

 当代も脱げば筋肉で満ち満ちているのだが、生憎彼は細マッチョの類だ。それと比べれば、体が大きく体格のいい正に「漢」という感じのエリックの筋肉は素晴らしいものだっただろう。

 後ろでヴィザーズの剣が空振る音を聴くのとほぼ同時、エリックは当代『剣聖』のことを絞め殺そうと腕を動かすけれども、いつの間にかエリックの首は消えていた。

 そのまま、エリックの筋骨隆々とした肉体を足場に、当代はヴィザーズの方へ跳んで剣を振るう。


 ちなみに、先程弾き飛ばしたエリックの剣は第29代の頭を貫いていた。これすらも当代『剣聖』の卓越した技量の範疇のようだった。


「──残りは10人か。仕方ない、一気に片を付けようかな」

『剣聖』はそう口にして、額に浮かぶ汗を拭う。そして──


「──〈剣士の称号(カルマ・グルーゲル)〉」

 第33代──先代の『剣聖』であり、当代の師匠の名を冠したその技を放ち、9人を一斉に斬り殺した。

 唯一、残ったのは当代と同様に〈剣士の称号(カルマ・グルーゲル)〉を使えた男──そう、先代『剣聖』にして、当代『剣聖』の師匠であった男、カルマ・グルーゲル本人だった。


 ──当代『剣聖』vs先代『剣聖』の、10年ぶりの師弟対決が開始する。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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