4月3日 その①
以下の文字を入れ替えてできる文の答えが部屋の鍵の解除ナンバーである。
i h u d r a r y w s h i t b n y o e
hint1:GGAGCBGGAGDC
hint2:4月3日15時に配信
答え _ _ _ _
俺が目を覚ましたのは、23時48分。もうすぐ、日付が代わり4月3日になろうとしていた頃だった。
先程まで、起きたばかりで視界がぼやけていたがヒントを見たことによりすぐに目が覚めた。
「GGAGCB...これもアナグラムか?」
───いや、違う。アナグラムだとしると文字が限定的過ぎる。
「使われてるのは、ABCDGだけ...か」
EとFが使われていない。これは、アナグラムではないまた別の暗号だ。
「えっと...これもどうやって解けばいいんだ?」
EとFが使われていない理由がわからない。
「うーん、15時のヒントまで待つか?」
そんな事を考えてしまう。
「───いや、これと似たようなヒントだと部屋から出れなくなる。考えないと」
俺は問題とにらめっこをする。
「GGAGCB...GGAGDC...」
GGAGと同じフレーズが使われている。何かの繰り返しなのだろうか。
「同じフレーズが使われてるのだと...何かのダジャレみたいな感じか?それとも何らかの意図により繰り返されたものか?」
何らかの意図により繰り返されたもの───曲の歌詞だ。
「かと言って、数多の音楽から一つの歌詞を当てるってのも無理に等しい...」
ヒントの意味もわからなければ、問題も解くこともできない。
「当てずっぽうで答えを入れてみるか?」
俺は「答え」というところをタップする。すると、数字を打ち込む場所が出てきた。
「答えが数字...でかすぎるヒントを見逃していた...」
4桁の数字になるならば、ある程度は絞ることができる。
「適当に1111と...あぁ、やっぱり外れか」
画面に大きな赤いバツ印が浮かび上がる。
「クソ、ウザったいな...」
と、言うと画面下側に浮かび上がった「↺」のボタン───更新ボタンを間違えて押してしまう。
すると、画面には「更新中♪」と浮かび上がる。
「音符?」
───あ。
俺は、気付いた。気付いてしまった。このヒントの答えを。
「このGGAGCBGGAGDCが表していたもの...それは、音階だ!」
ドレミファソラシドのアレだ。
「音階をアルファベットって考えるのはよくあること!」
確か、ドはAではなくCだった気がする。これを、元に当てはめていくと───
ド=C
レ=D
ミ=E
ファ=F
ソ=G
ラ=A
シ=B
となる。
「これを、ヒントに当てはめていくと...ソソラソドシソソラソレドとなる!」
このこのリズムとなる曲。それは───
「ハッピーバースデートゥーユー」であった。この曲ならば、皆知っているしヒントにもなる。
「最初から音符はあった。既にヒントのヒントはあったって事かよ...」
ハッピーバースデートゥーユーを歌うのはいつか。誕生日だ。そして───
i h u d r a r y w s h i t b n y o e
を入れ替えると…
When is your birthday
となる。
「誕生日!答えは、自分自身の誕生日か!」
俺は、数字に自分の誕生日である1026と入力する。
”ガチャッ”
鍵が開く音がする。俺は、それと同時にコンの言葉を思い出した。
『こんな簡単な問題も解けないんですか?赤子からやり直したらどうですか?です』
「赤子からやり直したらどうですか?って、誕生のことだったのか...」
ヒントをくれたけど、煽りと認識したコンに俺は謝罪を申す。コンは、相変わらず画面の中をトコトコと歩き回っている。
「これで、外に出れるな───」
直後、俺のスマホが振動する。通知が来たのだ。先程までは圏外だったはずのスマホに連絡が来る。
「これって...」
俺は、スマホを見て驚いた。まだ、宿題は始まってすらいなかったのだ。
そう、これは個室の扉を開けるためだけのクイズのようなもの。まだまだこれからだったのだ。
「おいおいマジか...」
誕生日は俺が始まった日。そして、この宿題も始まったばかり。
そして、俺に与えられた宿題。それは───
「純介の夜の騎士に健吾の名前を書かせろ。なお、このメッセージを喋る見せるなどの方法で伝えた場合課題達成にはならない」
と言うものだった。
「そうだ、純介の夜の騎士!」
俺は、急いで部屋を出る。4月3日0時3分。俺はついに個室の外に出た。
「もう、皆は出てるだろうか?」
俺は、リビングに走る。そこにあったのは、1枚の紙。
「これは...」
2つの連絡が書いてあった。
「課題達成のため外に行きます。詮索しないでください 健吾」
「個室の外に出れました。 西森純介」
「これに...書けばいいのかな?」
俺は、「部屋の外に出れました 栄」と書いておいた。
「2人は...もう寝たのかな?」
そう、思いながら部屋の中を少し探索する。他の人の個室は相変わらず開かなかった。
俺は、外に出る。寮を出て目の中に入った景色は、グラウンドを走っている2人の影だった。





