4月2日 その③
「え、えっと。柏木拓人君...だっけ?」
「あぁ、そうだけど?」
少しぎこちないながらも、健吾が声をかけている。
「これから、1年よろしく...ね?」
「あ、あぁ。よろしく」
「えっと...どちら様...ですか?」
俺らが誰か、聞いてきたのは可愛い少女───ではなく少年の東堂真胡であった。
顔は少女のように可愛いし、スラッとしている細い手足は女性のようだ。だが、身長は180cm以上ある。
男子でもイケメンだと思う柏木拓人と、男子なのに美少女に見える東堂真胡が2人仲良く話している姿は、美男美女カップルのようにも見える。
「あぁ、すまん。名乗ってなかったな。オレの名前は安倍健吾。健吾って呼んでくれ」
「俺は稜。山田稜。稜って呼んでね」
「俺の名前は池本栄。栄って呼んでくれ」
「ぼ、僕は...西森純介...です」
「オレは柏木拓人だ、声をかけてくれてありがとうな。お好きなように呼んでくれ」
「わ...私は、東堂真胡です。真胡って呼んで...ください」
それぞれの自己紹介を終える。
「んで、なんか用か?」
「いや、友達を増やしておいたほうがいいかな...って」
「あぁ、そうか。なら、仲良くしようと試みているのに用なんて聞いて悪かったな。生憎、このデスゲームで若干ピリついていいるもので」
「そうだな、この状況で平然といられる方がおかしいもんな」
真胡はコクンコクンと静かに頷いている。
「ってか、拓人の席ってオレ以外の周り全員女子じゃない?」
「そうなんだよ!だから、健吾に話そうと思ったけどメガネの子と昨日は喋ってたから話す人がいなかったんだよ」
「あぁ...それは、すまなかった」
メガネの子とは、岩田時尚のことだろう。喋ってたと言うより、一方的に話を聞かされていたが正しいような気もするけれど。
「オレの周り女子ばっかりなんだけど、望まないハーレムは唯の罰ゲームだからなぁ...」
そんなことを言っている。
今思えば、このクラスの男女比率は1:1だ。男女共に18人だ。金髪の少女が生きていたら女子は19人と、一人女子の方が多かったが今は均等になっている。
「健吾とは話す機会も必然的に増えそうだよな」
拓人はそう呟いていた。拓人の周りは本人が言っていたように右斜後ろ───健吾以外の7方向全員女子なのだ。
その健吾が、俺と話してしまえば事実上の八方塞がりになってしまう。拓人を会話仲間に入れるのもありだろう。
「わ、私も会話に入っても...いいかな?」
右手の人差し指を下唇に当てながら、真胡がそう質問してくる。男なのに、仕草は女性らしかった。
「あぁ、もちろん良いぜ!」
健吾は、親指を立てて見せる。
「やった」
真胡はかわいい声で喜び、嬉しそうに微笑んだ。本当に、男なのか怪しいくらいだ。
「そうだ、他の拓人と真胡の他のチームメンバーは誰なの?」
「えっと、そこに座ってる成瀬蓮也と奥で寝てる山本慶太だ」
拓人が指差したのは、陰鬱とした雰囲気の若干紫がかった髪をした少年だった。彼が、成瀬蓮也だ。
そして、窓際の席で寝ていたのはスポーツ刈りの少年───山本慶太だ。
「へぇ、そうなんだ。仲良くできてる?」
「あぁ、2人とも、仲良く出来てるぞ」
「そうか」
”ガラガラガラ”
「みんな、おはよー!」
そんな挨拶をして、教室に入ってきたのは岩田時尚と津田信夫の2人だった。
「みんな、元気にしとるか?朝はやっぱし元気やないといかんな」
そんなことを言って、津田信夫は自らの席に鞄を置いた。
「おいおい、朝から教室で寝やがって。少しは起きなあかんでぇー?」
先程、話題に出た山本慶太が津田信夫によって叩き起こされる。
「え、あ、すみま...せん?」
叩き起こされた、山本慶太は津田信夫に謝った。
「まぁ、わかればええんや。わかれば」
そう言うと、津田信夫は満面の笑みで席に戻った。
「栄達、おはよう」
「あ、あぁ。おはよう」
声をかけてきたのは、俺の席の後ろの岩田時尚だった。まぁ、津田信夫と一緒に教室に来たのだしいるのは当たり前だ。
「栄達が、同じチームにならなかった理由に今気付いたよ。あれだろ?デスゲームで、仲良い人が固まってると、情報が集まらないからでしょ?いやー、流石だね。でも、そのことを教えてくれるともうちょっと嬉しかったかなぁ...」
いつの間にか、俺らは時尚に仲がいい認定をされているのだが、そんな訳ではない。
もちろん、時尚が言っていることも全て見当外れだ。ただ、俺らは寮の安寧のためにチームに入れなかったのだ。いじめだのなんだの言われるかもしれないが、チームでデスゲームを行う場合足手まといになる可能性があるなら排除するべきなのはすぐに考えればわかることだ。
自分が死ぬのも嫌だが、誰かを犠牲にして自分がのうのうと生きるのも嫌だ。
我儘かもしれないが、自分が生き残れるには、共に支えられる味方とチームになることだ。
「時尚...だっけか?よろしく」
「よ...よろしく」
「うん、よろしく!えっと拓人くんと真胡ちゃんだっけ?」
時尚は、拓人と真胡の片手を握る。
「え、あ、私、男です...」
「え、そうなの?」
「はい...あ、えっと、紛らわしくてすいません...」
真胡が、時尚に謝る。
"ガラガラガラ"
「はいはーい、おはようございまーす!皆さん自分の席に座ってくださいねー!」
マスコット先生が教室に入ってきた。
色んなクラスメートに焦点を当てたいと思ってます。
一応、全員分の過去回想は入れたい。凄惨な過去も平凡な過去も。





