794話 終わりなき日々
ありとあらゆる方法でゴミを掃除する。過程はどうあれ、まっさらにすると言う話は変わらない。本来なら自身も消して何もない空間でもあればいい。寧ろ、こんなところでド突き合わなくて済む分、極々少数の可能性としては考えていた。
なんなら底を誰も知らないなら、掃除する者は実は倒されていて蠱毒と化した空間でモンスター達が喰らい遭うなんてことも。ただその願いは儚く消え去り、こうして戦っている。
掃除する者が今あるモノを消すと言うなら、俺はその先に進みある事を確定させてて叩く!他に頭のいい方法があるのかもしれない、膨れ上がった人類で考えればなにか別の糸口があったのかもしれない。ただ、あったからと言ってそれが俺に実現可能化は分からないが・・・。
「ほら!どうした!」
服もなく身につける物なく、今ある躯体のみでモノリスをぶん殴る。お前は知らないだろう・・・、ここで過ごし来たモノを消すだけで触れ合うことさえ知らないのだから、ここに込められた力も思いもそれを乗せて打ち出す衝撃も。
攻撃が差し込まれて身体が消える・・・。ただ、その先には変わらず身体があり、癇癪を起こした子供の様に更に殴打する。何度殴ればいいのか?そんな事ははなから考えず、止まるまで殴り続ければ済む話だ。
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「どこまでも野蛮だね。」
「あら、いいじゃない。私達も過去にはそうあった。他を平らにして進んで今になった。そして、ほとんどが意味をなくしてシステムに落ちた。だからこうして他の感情を・・・、精神を観測して過去を懐かしむ。」
「ギャラリーねぇ。その道しかなくなって、それでも僕達はそこにあろうとした・・・。姫・・・、今見ている光景は確かに可能性としてはあった。『誰が』や『何が』ではなく、最後に身を持って残った君の可能性として。・・・、あれが倒されてもいいの?彼の手で。」
「さぁ?私は既に端末よ?本体が何を考えるかなんて知らないもの。それに、広い広い闇の中での小さな小さな出来事じゃない。暇ならまた別の方法を考える、でも愚物はゲートをなくさないし、私達はそこに力を貸す。困るのは彼等じゃなくて愚物のソーツよ。」
「確かに。交渉を拒否して次の目標も見つけられず、ズルズル先延ばしにしてきた底の掃除が今なされてる。あれを倒す、それも作品を作る動機の1つだったけど、その動機が消えたらそれこそ使いっ走りにでもされるんじゃない?」
「別にいいじゃない。死の商人になって混乱を振りまこうと、本人達は頼まれたから作るだけ。代価は確かに貰うのでしょうけど、その後その作品をどう使うかは貰った者達次第。まぁ、主様が『倒したからずっと言うこと聞け!』なんていい出したら、原生生物は一気に段階をすっ飛ばして滅亡するんじゃないかしら。」
「するだろうね。今貸してる力だって、微々たるものなのに大混乱があったし。その後に無限に手に余る物を作ってくれる愚物を従えたなら、必ずするのは自滅兵器のオーダーだろうし。」
先を見通しても過去を視ても、指標と言うものを欲した時に何を選ぶのか。答えは明確なんだよね。自分達の想像しうる限界は自分達の未来でしかない。そして、それを想像した時にどうすれば越えられるのか?競争して勝てばいい、他の誰でもない同族に。
そうやって滅びた種もあれば、疲れて衰退して過去に縋る何かになった者達もいる。僕達だってその衰退した側なのかもしれない。同族は眠り微睡み、姫に縋り先を見る。その先もまた、他の種族の先でしかなく、身体もなくして自由を得ても繋がっている感覚だけ。
「ええ。でも、主様様はくだらないと言うでしょうね。同格や格下、格上、この星の原生生物はそんな幻想に囚われてるけど、比べること自体が間違いなのよ・・・。」
「御高説どうも。でも、アレ・・・、君の本体の一部でしょ?」
「いいわよ。痛みがあるのも本体なら、アレを視て憤っているのも本体。私は既にこの中にずっとある。主様がそう決めて、賢者が言うように失敗した者の末路なんてこんなものよ。」
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既に数えるなんて事はやめてひたすら殴る。なにで出来てるかなんて関係ない。ただ、今までの思いを込めて殴る。それがなんになるのか?考えること自体がナンセンスだ。底に来た時点で、コイツを壊す。それしか考えていないのだから・・・。
「青山!後どれくらいだ!」
「まだです!まだ・・・!」
(奉公する者!早くどうにかしろ!なんで抜いても抜いてもなくならない!)
(当たり前だろう!過去より今に至るまでで、どれほどエネルギーを溜め込んでいると思っている!)
(ならどうする!これ以上クロエさんが消滅するのも復活するのも・・・、それを繰り返し続けるのは見たくない!)
(見たくなくとも領分がある!我とて見たくない!見たくないが、これ以上の法もない!)
(・・・、我の得意技は入れ替えと話したな?)
(それは知ってる!だが、それが今何になる!)
近づけない!触れない!矢面に立てば死に、なにも残せないまま消える!歯がゆい!選んでもらってここまで来て、なんと言う体たらく!なにかないのか!後ろに隠れてエネルギーを抜き続けるだけの俺になにかないのか!
死ぬ事なんて怖くない!本当に怖いのは役立たずとして消え去ること!既に1度死んだ!なら、更に死んでいいからなにかないのか!人が小さく他から見れば塵芥だと言うのは知っている!それでも・・・、それでもその塵に考えるだけの頭があるなら、なにかを残したいと願って何が悪い!
(青山よ・・・、お前と引き換えになら一手打てる。)
(引き換え?やれ!今すぐやれ!既に死ぬ覚悟も、他の誰かに奉公する者が行くのも分かっている!分かっているからこそ、俺が死んでもその後を任せられるお前がいる!だからやれ!すぐにでもやれ!)
(・・・、お前を認めよう。同じ方向を見て別の者に使える我々。歪ながら、それでもこうしてここへ来た。原生生物からすれば死ぬのは・・・、終わるのは嫌なのだろう?だが、その忌避する選択をしたお前を認めよう。)
初めて見たのは動画だった。美しい娘に心奪われ、役に立ちたいと願った。同じ県に住むと分かり探したが、その時は東京にいて、おまけに既婚者だと知った。
別にそれはよかった。ただ、証を残し幸せであれと願い、支えられるならなんでもよかった。そして、そのなんでもの部分に奉公する者はあった。洗脳?どうなのだろう?誘導?どうなのだろう?
そう感じて嫌なら多分、俺はここにいないだろうし、最初から奉公する者も俺を選ばないだろう。なら、これは俺の意思で俺が選択した事。・・・、悔しいなぁ・・・。奉公する者はこの後もクロエさんに奉公して側にいられる、俺は死にそこで終わる。でも、俺が仕事をこなさない限り、アレは回復する!
だからこそ、俺は入れ替わって終わって消えても・・・。クロエさんなら怒るだろうなぁ・・・、勝手にいなくなるなって・・・。このワガママは俺のワガママで、あの人は何一つ悪くない。そう、だからなにも言わずにやるとしよう。
(認められた俺はなにをすればいい?)
(お前の存在、それを全て使って我の一部と入れ替わる。そして、入れ替わった我がアレを喰らう。全ては多分食えん。だが、それでもクロエもあの御方も楽にはなる。)
(分かった、やってくれ。)
(うむ・・・、ちょうどいい事にヒビが入った。)
(そうか・・・、なら・・・、あ・・・、とは・・・、頼んだ・・・ぞ。)
(然り。青山・・・、その名は忘れぬ。)
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いつか貫ける。それが信念なのか物理的なのか、或いは明日の先なんて言う不確定な未来の先なのか?答えはでないが、動くしかない。そう、ここにある限り動いてエネルギー減らして消滅させる。長かった、それこそ普通の人が生きて死ぬだけの時間を使って、ようやくここに立って・・・、掃除する者の表面?にようやくヒビが入った。
そうだろう。いくらなにもなくそうと動いても、いくら俺を削ってなくそうとしても、先に進むと言う意思と明日の先を見据える目は奪わせない!他の誰でもない、これは俺の仕事だ!
「ほら・・・、もう一発!」
目の前にあるモノリスに殴りかかる腕が消え、それでも振り下ろす先には腕がある。明日の先にある腕・・・、いつか必ず振り下ろすはずの拳。まだ折れるな、心にかのひまわりは未だに咲き誇り、最後のモニターだけがどんどんヒビ割れて行ったとしても、ここで引くことは・・・、ない!
青山は無事か?彼奴がエネルギーを抜いてくれなければ、コイツの可動限界はどこにあるかも分からない。いや、既にそんな事を考えるのが間違いなのか?互いに仕事をこなしている。なら、最前線の俺は止まらず殴ればいい。
「っ!あれは・・・?」
脇をすり抜ける様になにかが掃除する者に突き刺さる。ヒビ割れた表面よりさらに深く・・・。最後に青山が使っていた武器は糸と最初に戻りスポイトの様な武器だった。そのスポイトの様な物が深々と突き刺さり、糸で固定されている。いや、握られている?
魔女の差し金?いや、ありえない。ギャラリーとして見ることはあっても、魔女の本体や同族が動くとは思えない。なら、アレは・・・?
(そう・・・。)
(なんだ?)
(奉公する者の一部よ。)
(なんでそんな物が?)
(青山が全てを捧げて一部を呼んだ。それだけよ、そう言う選択を彼はしたのよ。)
(それは!)
青山が勝手に死んだ?魔女達の言う捧げるとは足りないから寄越せと言う事に等しい。なら、青山は全てを差し出してアレを呼んだ?なぜだ!後何万回でも死ぬ用意はある!どれだけ俺が底にいようと、倒し切るまで引かないだけの意思もある!なのにどうして!
(自分の限界を知ったのでしょう?成長する、次へ進む、そして天井が見えて次はない。なら、その天井をどうしても破りたい時には・・・。)
「くっ・・・!」
クソったれと言う叫びは掃除する者に顔ごと消されても言葉として出ない。なら、その罵りを飲み込み青山がやった事を引き継ぎ終わらせよう。
「まるで乞食のようじゃないか・・・。」
撒き散らされた自らの破片さえ消し、突き刺さったモノさえ消そうと足掻く。誰かが来て相手をなくし、そこで初めて自分を定義出来る存在。多分、このモノリスに意思なんてものはない。どんなに殴ってもなんの反響もなかったった。それならまだ、意味探すモンスターの方がマシだ。
一気に駆け寄り・・・。断続的に消される身体も、顔も腕も頭も足も、一切を無視して突き刺さった武器の前に立ち・・・。
「終わらせる!必ずお前を終わらせる!お前に明日の先なんて上等なものは・・・、ない!」
未来奪うと言うのは傲慢なのか?傲慢だろうさ。だが、それを言うならこの世に傲慢でない者などいない!誰かと競い合って、認め合って、反発し合って、話し合って、傷つけ合って今がある。そんな事さえ消す者はいらない!
深々と奉公する者の一部が突き刺さり、回復や再生するよりも早く機能そのものが抜かれ停止する・・・。ただ、ここは足元さえ不明確な白く眩い空間・・・。多分、ドサリと倒れて大の字になっていると思う・・・。
オーロラの様に周囲を鮮やかに見せるものがあるが、いずれは還元変換されて落ち着くだろう。今はただ、こうして・・・。
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底へ向かったクロエが出で来たのは半年後の事だった。誰もが・・・、いや。語弊がある。指導者となるべくして今ある人間達が、その旅立ちを知り誰もがすぐに帰ると考えていたが、その時は訪れず親しい者の中には決死隊と言う言葉が囁かれる様になっていた。
そんな中、クロエはいつ帰還したとも分からないうちに帰り、朝出勤したら本部長室で1人、寝ていたのだからその事実を知った人達の誰しもが文句を言ったのは想像出来るだろう。
本人曰く『知らせたらまたこき使われる。少しくらい休んでも罰は当たらないだろう?』そう話すと同時に、共に向かった青山 空の事を聞けば1言『逝った』との見返した。それ以上のの事は誰も聞かない。
その場に居合わせなかった人間では、なにをどう言っても軽く。深く話せば批判の言葉もあると考えたからだろう。事実として、彼を知る誰しもが軽口の様に親愛を込めてストーカーが本懐を遂げたと笑いながらいい、ゲートにひっそりと献花した。
「グランドマスターファースト。今年も交渉季です。」
「確かに・・・、でもそのグランドマスターってやめない?私はグマラマス首になったんだけど?しがないメッセンジャーには荷が重い。」
「勝手に首にされただけでしょう?」
「いやいや、総意!政府側の総意!揉み消したりなぁなぁでやったり、交渉内容が酷くて知るか!って政府側の役人追っ払ったりしたから全会一致で降ろされたじゃん!」
「ええ、そうですね。だからなんですか?貴女がスーパーヒーローではなく、どこまでも普通の人間だと言い張るのは知っています。ですが、その普通の人間達が世界を導いているのもまた、事実です。」
「はぁ〜、誰かがするであろう仕事の誰かとは、自分で有っても問題ない、か。分かった行くとしよう。」
ゴシックドレスにキセル。紅い瞳に白く長い髪。誰しもがその姿を見たなら本能的に目で追ってしまう。それこそどんなに有名になろうと、どんなに時が経とうと・・・。仮に彼女に目を奪われなくなったなら?多分、その時が人が1段進化したときだろう。
ー完ー
本編は完結となります。
ただ、閑話はまた書くかもかもしれません
長い間追って頂いた方、本当にありがとうございました。




