第四章 第五話 第一回戦開始
「それではアスラン選手、ゲスラ選手、次が対戦になりますので準備の方をよろしくお願いします」
とうとう俺たちの番になってしまったか。
「とうとうこの時がきたわね。あたしワクワクするわ」
俺の方はゾッとするよ。この男に接近される訳にはいかない。遠距離で倒さなければ、色々な意味で俺の身が危なくなる。
とにかく、一秒でもこの男と同じ空間には居たくない。
「俺は先にゲートの方に向かわせてもらう」
選手控え室から出ると、廊下を歩いて闘技場の方に向かう。
ゲート前にたどり着き、俺はゲートを見た。ちょうど決着が付いたようで、観客席から歓声が上がった。
どうやら終わったみたいだな。
「くそう。まさかこの俺があんなガキに負けるなんて」
勝負に負けた男が愚痴を零しながら俺の横を通り過ぎる。彼が向かったのは控え室とは真逆の方だ。
この御前試合には敗者復活戦なんてものはない。負ければ即退場がこの御前試合のルールだ。
続いて勝者である銀髪の男がやって来た。彼は疲れた表情など見せずに涼しい顔をしている。
やっぱりキーファは手強いな。
キーファに視線を向けていると、彼と目が合う。
「次はアスランなんだね。頑張ってね。応援しているから」
キーファが白い歯を見せて笑みを向けてくる。
主人公に応援された。めちゃくちゃ嬉しい! だけど今の俺はアスランだ。ここで変に礼なんて言えば、再び怪しまれる。
ここはアスランらしく振る舞わないと。
「うるせー、テメーなんかに応援なんてされたくない。いいか! お前のようなクソザコを倒すのはこの俺だ! 決勝で当たるまでは負けるんじゃないぞ」
うーん、こんな感じでよかっただろうか? なんか一度敗北して仲間になったやつのセリフぽかったが……。
「そうだね。君がそう思っているのなら、それでいいよ。それじゃあ決勝で会おう」
キーファが返答してくれたが、彼の言葉を聞いて少しだけイラッとしてしまった。
キーファのやつ完全に舐めているな。今の俺も魔法が使えないクソザコだと思っていやがる。
まぁ、それならそれでいいさ。第一試合に可憐に勝ってあいつの鼻を明かしてやる。
俺はゲートから出ると闘技場のリングに上がる。
すると至るところから歓声が上がった。
「アスラン! 頑張ってください!」
「お兄様、ファイトです!」
「アスラン様! ワタシの未来の主人として相応しい戦いをしてください」
ミレニア、お前の主人に相応しい戦い方ってなんだよ! アサシンみたいに戦えってか? そんなの嫌だからな。今回に限ってはなおさらそうだ。
俺はゲスラが来るのを待つ。
それにしてもゲスラのやつ遅いな。何かあったのか? あまり遅いと俺の不戦勝になるぞ。
まぁ、俺的にはそれが一番ありがたいがな。
「来ませんね? あと一分で姿を見せなければ、アスラン選手の勝ちとさせてもらいます」
よしよしいいぞ! このまま来ないで不戦勝で勝たせてくれ。
「あと十秒!」
カウントダウンが始まった。これはもう、俺の不戦勝で決まったようなものだろう。
「九、ハ、七、六、五、四、三、ニ、一」
「お待た! ゲスラちゃんの登場よ!」
残り一秒でゲスラはゲートから姿を見せるとリングに上がる。
しかし彼が現れた瞬間、この場の空気が凍りついた。
彼は俺たちの世界で表現するとするならば、サンバカーニバルなどで着るような感じの衣装を身に付けて登場したのだ。
「お、お前、その格好はいったいなんだ!」
「いいでしょう。これがあたしの戦闘衣装よ!」
こいつ、最初は格闘家のイメージだったけど、もしかして大道芸人なのか?
「さて、それでは始めましょう。審判! 号令をお・ね・が・い」
ゲスラが審判に向けてウインクをすると、彼は顔を青ざめる。
まぁ、ある意味威力の高い攻撃だよな。
「で、では、これよりアスラン選手対ゲスラ選手の試合を始めます。試合開始!」
「それじゃ行くわよ! たっぷりとあたしにあなたを感じさせて!」
審判が試合開始の合図を出した瞬間、ゲスラが両手を広げて接近してきた。
「く、来るんじゃねぇ!」
接近されては色々な意味で危ない。急いでイメージして魔法を発動する。
空気中にある水分子が集まって水となり、三角錐に形を変える。そしてその水に限定して気温が下がって氷となる。
「アイシクル!」
五本の氷柱が現れ、ゲスラに向けて一斉に放った。
「いやーん! そんなのに当たったら串刺しになるじゃないのよ! そんなことをする悪い子にはこうしてあ・げ・・る」
ゲスラは腰に差してあった小樽を口に持っていく。そして口から離した途端に炎を吐き出した。
火吹き芸とは、大道芸人らしいことをしてくれる。
俺の氷柱はやつの炎で溶かされ、水となってリングの上に落ちる。
「なかなか面白い魔法を使ってくるのね! 次は何をやってくれるのかしら? 楽しみだわ」
余裕な笑みを向けやがるな。俺はある意味、いっぱいいっぱいなんだが。
だけど今のでやつの足を止めることができた。
こいつはさっさと倒さないと、色々な人の目の毒になるかもしれない。
「悪いが、次の一手で終わらせてやる」
「へぇーそれは面白いわね。どんな方法であたしを一発でいかせてくれるのかしら?」
だからいちいちセクハラしてくるんじゃねぇ!
「ショック!」
「あん!」
俺は脳内で失神魔法をイメージして魔法を発動させた。
ゲスラの神経を活性化させたことにより、心臓に戻る血液の量を減少させた。それにより意識を失ったゲスラはリングに倒れる。
「ゲスラ選手戦闘不能! アスラン選手の勝利!」
審判が俺の勝利を告げた瞬間、観客が一斉に湧いた。
ふぅ、第一試合は勝ったな。決勝まではまだまだあるけど、このまま勝ち進んで行くとするか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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