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第四章 第六話 御前試合決勝

 ゲスラを倒した俺は順調に勝ち進み、決勝進出を果たした。そして優勝候補のキーファも、他の選手を倒して決勝にコマを進めている。


 やっぱり最後はこうなってしまったか。まぁ、決勝でキーファと戦うことは、俺が望んでいたことでもあるがな。


「まさかアスランが決勝に残るとは正直思ってもいなかったよ。本当に俺がいなくなってから頑張ったんだね」


 控え室の中にいるのが二人だけになるとキーファの方から声をかけてきた。


「当たり前だ! 俺はアスラン様だからな! お前なんかいなくとも俺のパーティーはやっていける。次の決勝戦で、俺がお前を追放したことは正しかったと証明してやる!」


 俺はアスランになりきって彼の問いかけに答える。


「そっか。もう見栄だけを張っているだけのアスランはいなくなったのだね。それは安心したよ。お陰で決勝戦は本気でぶつかることができる」


「決勝では絶対に手を抜くなよ。本気のお前を叩きのめした上で、俺が優勝してやる」


「へぇー、本気の俺を叩きのめすか。それは楽しみだ。実現できるといいね」


 軽い挑発をしやがって。だけど俺はアスランではない。そんな挑発に乗ってやるか。


 決勝は明日だけど、既に勝負は始まっている。違いに挑発し合って、ヘイト管理をしている。


「さてと、それじゃあ俺は宿屋に戻るとするか。カリンとセリア、それにミレニアが待っているからな」


 俺はイスから立ち上がると控え室から出ようとする。


「カリンとセリアか。あの二人はいずれ、君に愛想を尽かすと思っていたのにまだ一緒にいるんだ。予想が外れたなぁ。アスランのどこがいいのだろうね。顔だけの男なのに」


 ポツリと独り言を漏らすようにキーファは言う。


 しかしその言葉は、しっかりと俺の耳に入った。


 また悪口を言って挑発するのかよ。ヘイト稼ぎも重要なテクニックだけど、時と場所くらいは考えてほしいものだ。


 俺は聞こえないふりをしてそのまま控え室を出る。


「アスラン、お疲れ様です」


「お兄様、次は決勝ですね。明日も私は精一杯頑張って応援します」


 控え室から出ると俺を待ち構えていたみたいで、カリンとセリアが声をかけてきた。


「カリン、セリア。先に宿屋に戻っていたんじゃないのか?」


「ええ、アスランを一人で帰らせる訳にはいきませんもの」


「そうです。だから待っていました」


 先に帰っていない理由を答えると、二人は俺に抱き付いてきた。


 あー、そう言うことね。


 彼女たちが待っていた理由に納得すると、俺は苦笑いを浮かべながら会場を後にする。


「そう言えば、ミレニアは?」


「ミレニアは先に帰っています。何でも決勝進出祝いをするとかで」


「決勝進出祝いって。普通はそんなことでお祝いはしないだろう」


 まぁ、口ではこんなことを言っているが、本音を言うのであれば嬉しい。


 俺の勝利をミレニアも喜んでくれていると言うことなのだから。


 俺たちは三人で宿屋に帰ると、その日の夜はミレニアの手料理を頂き、楽しい夜を過ごした。






 翌日、俺は闘技場のリングの上に立ち、観客たちからの歓声を受けている。


「では、続いてもう一人の方をご紹介します。今大会の優勝候補であるキーファ選手の入場です!」


 審判役の男がキーファの名を言うと、ゲートから銀髪の男が現れる。


「きゃー! キーファ様!」


「我ら獣人はキーファ様を応援しております!」


 観客席の方からキーファを応援する声が聞こえてきた。


 キーファが獣人を助けた? 獣人が出てくるのは御前試合編の後だぞ。まぁ、イレギュラーはあって当然か。これまで何度も起きたことだ。


 声援を受けてキーファは観客たちに手を振る。


「それでは、これより決勝戦を始めます。お二人とも準備は良いですか?」


 審判の問いかけに俺たちは無言で頷いた。


「それでは始め!」


「ファイヤーボール!」


「ウォーターボール!」


 審判の合図と共に、俺たちは一斉に魔法を発動した。


 キーファの火球は俺の水球に掻き消され、水蒸気となって周辺に飛び散る。


「まさか攻撃が読まれた!」


 よしよし、初手は原作どおりの動きをしてくれたな。


 俺がキーファに勝つには、やはり原作の知識が鍵となる。


 まぁ、イレギュラーは当然起きるだろうが、その時は状況に合わせるまでだ。


「ロック!」


 キーファが魔法を発動するとリングが割れて岩の塊りが出現する。


 原作どおりだ!


「その攻撃の対処方法は知っている!」


 俺はスキルを発動して脳内でイメージする。


 空気の振動が対象物の強度を上回り、音による空気の振動だけで物を壊す。


「パップ!」


 呪文を唱えた瞬間、キーファの生み出した岩が粉々に砕け散った。


「また俺の魔法が相殺された!」


 攻撃をキャンセルされたことで、彼は動揺しているようだ。


 唇を噛み締め、キッと睨み付けてくる。


 いいぞ。このままいけば、俺は勝てる!


「魔法が通用しないのなら、接近戦しかない! ビルドアップ、クイック!」


 キーファが魔法を発動すると、やつは一瞬にして俺の前に移動していた。


 肉体強化の魔法か。さすがにそれは原作とは違う!


 俺は素早く脳内でイメージし、魔法を発動する。


「エンハンスドボディー!」


 肉体強化を使い、俺はキーファの腕を掴む。そしてそのままやつを持ち上げると地面に叩きつける。


 しかし受け身を取られたようで、やつの顔は苦痛で歪むことはなかった。


 リングに倒れるも、キーファは反撃をやめなかった。


 足を俺の腕に擦り付けるように掠ると、俺の腕は熱を感じて掴んでいた手を離した。


 その隙を逃さなかったキーファは、腕の力だけで起き上がると、そのまま後方に飛び距離を開ける。


 靴を擦り付けることで摩擦熱を発生させたのか。


 チッ主人公だけあって、やっぱり強いな。


 だけど、こんなところで負ける訳にはいかない。


「スピードスター!」


 瞬足の魔法を唱え、素早く移動するとキーファに向けて拳を叩き込む。しかし俺の攻撃は躱され、反撃とばかりにキーファも俺を殴ろうとするが、ギリギリまで引き寄せて回避した。


「これはいったい何が起きているの? アスランたちの攻撃が全然見えない」


「ここからではお互いに至近距離で立っているだけに見えますね」


 カリンとセリアの声が聞こえてくる。


 あいつらにはそんな風に見えているのか。


 今の俺たちの状況を一言で言うなら、ドラゴンボ◯ルの戦闘シーンのようなものだろう。


 あまりにも早すぎて、強化していない人間の目では捉えることができていない。


 だけど、これでは観客たちは不満を持つだろうな。


 こうなれば、次の一撃で終わらせよう。


 俺は後方に跳躍して一度下がる。


「キーファ! 次で最後だ! 今から全力でお前に攻撃を叩き込む。それに耐えればお前の勝ちだ!」


 俺の脳よ! 抑制を外し、この一撃に全ての力を注ぎ込め!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 俺は雄叫びを上げながらキーファの胸に叩き込む。


 すると彼は吹き飛ばされ、観客席の壁に激突した。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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