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第四章 第三話 キーファとの再会

「さてと、そろそろ俺たちは帰るとしようか」


「そうですわね。もう遅い時間ですし」


「親父はどうするんだ?」


「俺はまだここで飲んでいる。お前たちの支払いもしておいてやるから、御前試合に備えて身体を休めておいてくれ」


「ありがとう助かるよ」


 俺はアスランの父親に礼を言うと、酒場から出て行く。


 さてと、御前試合は明後日だ。それまでに対戦相手のことを思い出さないといけないなぁ。


 えーと、原作では、ミミックに寄生されたアスランが瞬殺して勝ち進んでいたよな?


 しかも対戦相手の描写は殆どなかった。


 うん? ちょっと待てよ。それなら相手の情報が何一つない状況じゃないか。


 こいつは参ったなぁ。まぁ原作のように俺がスキルで瞬殺すればいいか。


 そんなことを考えていると、俺たちは宿屋に戻ってきた。


 まぁ、細かいところは明日考えるとするか。


 部屋に入った俺は、着替えることなくベッドに倒れると、そのまま両の瞼を閉じて眠りに就いた。






 そして特に作戦を考えないまま時は経ち、二日が経過した。


「アスラン、今日が御前試合の日ですわね」


「お兄様なら勝てると私は信じています」


「優勝して賞金が入ったのなら、今日はわたしがアスラン様にご馳走を作って差し上げましょう」


「ありがとう。優勝目指して頑張るからな」


 とは言ったものの、特に作戦を考えていなかったんだよな。


 一回戦の相手も誰になるのか分からない。もしかしたら一回戦で敗北なんてことも……。


 そんなことを考えている自分がいることに気付き、俺は首を左右に振る。


 って、俺はなんてことを考えているんだ。


 そんなことになったら、俺はざまぁされることになる。


 ざまぁを回避するためにも、絶対に勝って優勝しなければならない。


「アスラン、大丈夫ですか?」


「さっきから難しい顔をしていますよ」


 カリンとセリアの言葉が耳に入り、俺は我に返る。


「あ、いや……ちょっと御前試合のことを考えていた。もう大丈夫だ。心配してくれてありがとう。それじゃあお城に行こう」


 俺は二人に礼を言い、部屋を出た。


 外に出ると、相変わらずカリンとセリアが俺に引っ付いてくる。


 仕方がないとはいえ、本当に歩き辛いな。早く城の受付に行って、二人から解放されたい。


 両手に花の状態で俺は、城に向かう。


「選手参加の人はこっちで受付をしてください」


「観客の方はこっちです」


 城の門の前で二人の兵士が王都の民たちを誘導しているのが見えた。


「ほら、俺は受付をしてこないといけない。だからここら辺で、離れてくれ」


「名残惜しいですが、そのようですわね」


「お兄様、絶対に女の人に話しかけてはいけないですからね」


 どっかのネット小説の裏ルールかよ。


 俺は苦笑いを浮かべ、二人から解放されると選手の受付に向かう。


「御前試合の参加者だ」


「では、招待状を見せてください」


「分かった。ちょっと待っていろ」


 えーと、確かポケットの中に入れていたよな。


 上着のポケットの中に腕を突っ込み、招待状を取り出す。


 雑に扱っていたから皺があるけどまぁ、問題ないだろう。


「これでいいか?」


 招待状を取り出すと、兵士は俺の持っている紙に目をとおす。


「はい、問題ありません。案内の看板がありますので、それを見て選手控え室のほうに向かってください」


「分かった」


 兵士の横を通り過ぎ、看板を見る。


 ここが控え室か。多分全員が集まることになるから、キーファとも出会うよな。


 まぁ、別に今更あいつのほうから声はかけてこないだろうし、試合のときだけ軽く挨拶する程度でいいだろう。


 キーファと会ったときの方針を決めると、俺は選手の控え室に向かう。


「ここだな。さてどんな選手がいるのか楽しみだ」


 ドアノブを握って回し、扉を開ける。しかしその瞬間、俺の動きが止まってしまった。


 目の前には、白銀の短髪に赤い瞳の男の子がいた。


 出会い頭に合うパターンは考えていなかった! どうしてこのタイミングでキーファの顔を見ることになるんだよ!


 キーファのやつも俺のことに気付き、苦笑いを浮かべていた。


 まずい、なんとも言えない微妙な空気感になってしまったぞ。


 こうなったら仕方がない。流石に無視するわけにはいかないから、声でもかけるか。


「久しぶりだなキーファ。元気にしていたか?」


「一応元気だよ」


「そうか」


 会話終了したじゃないか! せっかく話しかけてやったのだから、もう少し会話を広げてくれ!


 まぁ、キーファの立場からしたら、追放されていやな気持ちになっているだろうから、これ以上関わりたくないのだろう。


「声をかけて悪かったな。久しぶりにお前の元気な姿を見て嬉しかった」


 ポツリと言葉を漏らすと、キーファは怪しむように俺を見てくる。


「お前本当にアスランなのか? なんか変じゃないか?」


 ギクッ!


 図星を刺され、俺の鼓動が激しくなる。


 まさか俺の正体に気付いているのか? 頭の中がパニックになりそうだが俺よ落ち着け。


 ここはアスランになりきるんだ。


「あー? テメー何言ってんだ? クソザコキーファの分際で、俺の心配なんかするんじゃねぇぞ! たまたま気の迷いで話しかけてやっただけなのに、変な勘違いをしているんじゃねぇ! ぶっ飛ばされたいのか!」


 俺はキーファの胸ぐらを掴むと思いっきり持ち上げる。


「わ、悪かった。俺の勘違いだったようだ。謝るから許してくれないか?」


「チッ、今後俺を舐めやがるとこの程度では済まさないからな! クソザコキーファ!」


 キーファの胸ぐらを掴んでいた手を離すと、彼は床に落ちる。


 あー、緊張した。少しやり過ぎた感じがするけど、どうにか誤魔化せたようだな。


 それにしても、キーファの胸ぐらを掴んだ時、寒気がしたぞ。


 決勝でやつと戦う時は気を付けなければならないな。


 そんなことを考えていると、俺は多くの視線を集めていることに気付く。


 これは少しやばいかもしれないな。注目を集めすぎてしまった。これからは大人しくしておくとしよう。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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