第四章 第二話 酒場での再会
その日の夜、俺たちはアスランの父親がいるかもしれん可能性にかけ、酒場の前に来ていた。
「まぁ、いない可能性のほうが高いけど、そのときはただの飲み会としよう」
「アスラン、言っておきますが無駄使いは禁止ですからね」
うっ、釘を刺されてしまったな。だけど、俺もバカみたいに飲むつもりはない。
ドアノブを回して扉を開けると、店内には数人に客がいた。
「マスター、もう一杯くれ!」
「私としては、大変ありがたいのですが、本当に大丈夫なのですか? もう一週間も閉店時間まで飲み続けていますよ?」
「いいからお代わりをよこせ! 俺は客だぞ! 客の言うことが聞けないって言うのか!」
「はい、はい。分かりました。でも、あんまり飲みすぎないでくださいよ」
カウンターから客と酒場のマスターとの会話が聞こえてきた。
俺は苦笑いを浮かべながらカウンター席に向かう。
「親父、来たぞ。まさかずっと酒場に入り浸りしているとは思わなかた」
アスランの父親に声をかけると、彼は直ぐに俺の方に振り向く。
「アスラン、お前は今まで何をやっていた! お前に招待状を渡してから一週間以上経っているんだぞ! どこで道草を食っていた!」
酒で気が大きくなっているからか、アスランの父親は声を張り上げた。
「遅くなったのは悪いと思っている。だけど、転移石が売り切れだったから馬車で移動するしかなかったんだよ」
遅くなった理由を話すと、彼は罰が悪そうにそっぽを向く。
「だったら、リピートバードを使って連絡すれば良いだろうが」
「簡単に言ってくれるなよ。リピートバードを使って連絡を取り合う店は限られている。道中の町にはないのだからしょうがないじゃないか」
「だったら野生を捕まえてメッセージを送れば良いじゃないか」
ダメだこの男、酒のせいで頭が働いていないみたいだ。
仮に野生のリピートバードを捕まえたとしても、調教には時間がかかる。
そんなことをするくらいなら、馬車で移動したほうが早い。
まったく、この男ときたらそんなことも考えられないほど酒のせいでバカになっているのかよ。
だけど、ここで反論をするとまた面倒臭いことになる。不本意だが、ここは自分たちが悪いことにして、話を進めよう。
「はい、はい。それは悪かった」
「分かれば宜しい。一週間の遅刻はこれで大目にみてやる」
俺はアスランの父親の態度にお苦笑いを浮かべた。
「マスター、酒を三人分。あとアルコールのない飲み物を一つくれ」
「アルコールなしだとミルクしかありませんが?」
「それでいい」
「畏まりました」
酒場のマスターに注文を伝えると、セリアが俺の腕を引っ張っる。
「セリア、どうかしたか?」
「お兄様、私もお酒を飲んでみたいです」
「ダメだ。来年まで待っていろ」
「どうしてダメなんですか?」
「そうだぞ! どうしてダメなんだ」
どうしてアスランの父親が話に割って入ってくる!
「セリアはまだ十六歳だ。成人していない以上は、酒を飲ませるわけにはいかない!」
「一歳なんて誰でもサバを読んでいるじゃないか。お前だって十五のときは俺と一緒に酒を飲んでいただろう?」
「お兄様」
セリアがジト目で俺のことを見てくる。
アスラン、お前年齢制限を破っていたのかよ。まぁ、俺も高校のときは普通に十八禁コーナーに入ってエロ本を買ったり、社会人になってから先輩の付き合いで酒を飲んでたりしていたから、人のことは言えない。
「と、とにかく。セリアはこんな俺のような人間になってはダメだ」
自分のことを棚に上げていると、セリアの表情が悲しみに満ちていた。
目尻には涙が溜まっており、今にも泣きそうになっている。
「わ、わかった。一口だけ飲ませてやる」
一口だけなら許すと言うと、セリアの顔が綻んだ。
「ありがとうございますお兄様。大好き!」
セリアが俺に引っ付く。
まぁ、セリアのことだ。多分一口飲めばもう飲まないと言うだろう。
「お待たせしました」
しばらく待っていると、テーブルの上に酒が置かれた。
「いいか。一口だけだからな。一気に口に含もうとするなよ」
「分かっています」
セリアの前に酒の入ったジョッキを置くと彼女は両手で持ち、ゆっくりと口に近づける。
酒を一口飲んだセリアの顔色は次第に悪くなっていった。
「おい、大丈夫か?」
「に、苦くて辛いです」
やっぱり思ったとおりだ。セリアの舌はまだ子どもだからな。
「ほら、お前のミルクだ」
「ありがとうございます。お兄様」
ミルクの入ったコップをセリアに渡すと、彼女は一気に飲み干す。
「こんなに辛いのを、お兄様たちはよく飲めますね」
「まぁ、大人だからな」
この世界には酎ハイなんってものはないけど、それだったらセリアも飲めれるかもしれないな。
「さて、そろそろ本題に入ろうか親父。俺たちを待っていたと言うことは、それなりに大事な話があったのだろう?」
「ああ、御前試合のことでだな。キーファと言う人物を知っているか?」
親父の言葉に俺は一瞬動きが止まってしまった。おそらくカリンたちも同様に動きを止めたかもしれない。
「ああ、知っているさ」
何せ、アスランが追放した人物だからな。
「キーファと言う少年はここら一帯では有名人だからな。やっぱり知っているか」
いや、俺が知っているのはキーファが有名人だからではなく……まぁいいや。
「そのキーファ君だが、王様に気に入られて御前試合に参加することになった」
「それは本当ですの! アスランのお父様!」
「これは驚きですね」
アスランの父親のセリフにカリンとセリアは驚くが、別に俺は驚くことはなかった。
まぁ、原作では御前試合で戦うことになっているからな。前情報を知っている以上は特に驚くことはない。
「ほう、キーファ君が出場するのに、アスランは動揺すらしていないな。こいつは頼もしい」
「あいつとはまたどこかで合いそうな気がしていたからな。別にキーファの姿を見ても、今更驚きはしないさ」
「そうか。そいつは何よりだ。キーファ君の名を聞いて参加を辞退した人もいるからな」
参加を辞退している奴らもいるのか。なら、思っていたのよりも早くキーファと戦うことになるかもしれないな。
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