第三章 第八話 魔剣の処分 前編
昼食を終えた俺たちは、宿屋を探した。
原作どおりの道を歩いて行くと、宿屋の看板が見えてくる。
「アスラン、あそこに宿屋がありますわ」
「お、やっと見つかったか」
「早く部屋を取って休みたいです」
「セリア様、もしかしてお腹が一杯になって眠くなったのですか?」
「別にそんな理由で言ったわけではないですよ」
雑談をしながら宿屋の前に来ると、扉を開けて中に入る。
受付には四十代くらいの女性が帳簿らしきものを書いており、俺たちには気付いていない様子だ。
「すみません。宿をとりたいのですが」
「あら、いらっしゃい。何名様?」
「四人です。一人部屋と四人部屋を借りたいのですが……」
「いえ、四人部屋を一部屋貸してください」
俺がふた部屋借りようとすると、横からカリンが四人部屋を要求してきた。
「おいカリン。どうして全員で同じ部屋に泊まろうとする」
「何か問題があります?」
「大有りだろうが。いくら俺たちの中とは言え、男女が同じ部屋に泊まるのはどうかと思うぞ」
「お兄様、今更じゃないですか? これまで同じ部屋に泊まっていたじゃないですか?」
それはアスランが決めたことだ! 俺の意思ではない!
だけど、一度同じ部屋に泊まっていたという事実がある以上は、何を言っても説得力に欠ける。
こうなったら最後の手段だ。
「今回は俺たちだけじゃなく、ミレニアもいるじゃないか。ミレニアも男と同じ部屋なんて嫌だよな!」
俺はメイドに視線を向ける。
頼む。俺の意を汲んでくれ!
ミレニアは俺とカリンを交互に見た。
「ワタシは全然構いませんよ。アスラン様はワタシの将来のご主人様です。なので同じ部屋でも嫌とは思いません」
くっ、ミレニアがカリンに屈した。こうなったら諦めるしかないか。
カリンはそんなに俺と同じ部屋がいいのか。
「分かった。四人部屋にしよう」
「良かったですわ。アスランが剣を三本も買ったので、懐事情があんまりよろしくなかったのですの。もし、それでも別の部屋が良いと仰ったのなら、何か依頼を受ける必要がありましたわ」
カリンの言葉に、俺は何も言えなくなった。
すまない。せっかく買ったこの剣、後で破壊するんだ。
この剣の代金分は、俺がどうにかして稼がないといけないな。
俺たちは四人部屋を借りることになり、宿泊料を支払って鍵を受け取ると部屋に向かった。
「ここだな」
部屋の鍵を開けて中に入ると、さすが四人部屋だけあって、なかなかの広さだった。
魔剣を壁に立て掛けてイスに座ると、俺は今後について考える。
一人部屋だったのなら、一人で行動しやすかった。だが、四人部屋になった以上は行動に気をつけないといけない。
決行するなら、みんなが寝静まった深夜がいい。
ベッドの方を見る。
キングサイズのベッドが二つ。つまり寝る時はカリンかセリアのどちらかが俺の隣で寝ることになる。
カリンならおそらく問題はない。だけどセリアの場合は、寝相で俺に密着してくる可能性が高い。
そうなると、起こさないようにするのが少し面倒になるな。
まぁ、その時はその時で考えるとするか。
その日の夜、予想外のできごとが俺に起きた。
「アスラン様、それでは失礼します」
「あ、ああ」
まさかミレニアが俺の隣で寝ることになるとは思わなかったな。こうなるのなら、ジャンケンなんかしなければよかった。
数分前、カリンとセリアがどっちが俺と同じベッドを使うのかで揉めたのだ。
そこで俺はジャンケンをして、俺と同じものを出した人が隣で寝ると提案したのだ。
その結果、今のような現状になっている。
まぁ、ミレニアなら変な心配をする必要はないだろう。
俺は瞼を閉じると、寝たふりを始める。
あれからどれくらい時間が経ったのかは分からない。俺の隣で横になっているミレニアから寝息が聞こえてきた。
そろそろ良い頃合いかもしれないな。
隣で寝ているミレニアを起こさないように気をつけながらベッドから出ると、俺は壁に立て掛けていた三本の剣を持った。
「さて、行くとするか」
足音を立てないように気を付けつつ、部屋から出て行く。
廊下は暗かったが、足元は見える。
これなら変に転んで、物音を立てるようなことにはならないだろう。
玄関へと向かい扉を開けた。
「どちらに行かれるのですか? アスラン様?」
「!」
扉を開けた瞬間、目の前にミレニアがいた。
俺は思わず叫びそうになったが、手で抑えて我慢した。
「ミ、ミレニア。眠っていたよな? それにどうして外にいる?」
「ベッドの軋む音が聞こえたので目を覚ました。アスラン様がお嬢様には内緒でワタシに夜這いをしにきたのかと思いましたら、コソコソと出て行くので、窓から出て先回りしまった」
ニコッと笑みを浮かべながら、彼女は俺に説明をする。
あれだけ物音を立てないように慎重に動いていたのに、それでも起きてしまうなんて。やっぱり彼女は現役時代はアスランだった可能性が高いな。
「それでどちらに行かれるのですか? 娼婦のところに行かれるのでしたら、ワタシが相手をしてさしあげますよ?」
「どうしてそんな発想に至るんだよ」
俺は頭が痛くなり、額を抑える。
「こいつを処分しに行くんだ。だから一旦町から離れて、暴れられる場所に向おうとしたんだ」
腰に帯刀させた三本の剣をミレニアに見せる。
「それではワタシもお付き合いしましょう。馬車を使えば短い時間で戻ってくることができます」
ミレニアは今のセリフで察したのだろうか? まぁ、彼女が馬車を出してくれるのはありがたい。
「分かった。それなら頼むよ」
「畏まりました」
俺とミレニアは剣を処分しに馬車を停めているところに向かった。
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