第三章 第七話 魔剣売りの青年
「お待たせしました。ご注文は魔剣ですか?」
注文を聞きに来た給仕を見て、俺は苦笑いを浮かべていた。
これまで何度も原作とは違った展開があったが、ここまで予想外の出来事は初めてだ。
「何を言っているのですか。魔剣なんてものは入りません。早くオーダーを取ってください」
相当お腹が空いて気が立っているようだな。セリアは彼を睨みつけると早く注文を聞くように要求した。
「濃厚クリームパスタとペペロンチーノ、それに日替わりをお願いします。お兄様は何にしますか?」
「俺はウッシーナのステーキで」
「魔剣ダーインスレイヴに魔剣ティルフィング、そして魔剣グラムとカラドボルグですね」
「違います。クリームパスタにペペロンチーノ、そして日替わりとウッシーナのステーキです。ふざけていると魔法で消し炭にしますよ」
「畏まりました。完成するまで少々お待ちください」
男が離れて行くと、セリアはため息を吐いた。
「はぁー、あの従業員はいったい何なのですか。まともに客の話を聞かないなんて。後でクレームを入れる必要がありますね」
「確かに変わった給仕さんでしたわね」
「お客さまに対してのあの態度は、給仕としては赤点です。ワタシが教育者であれば、絶対にあのようなふざけた接客はさせません」
さすがに三人は原作であいつに合わないから、そんなふうに思ってしまうのだろうな。俺からしたら、あのふざけた性格はそのままなのかと言った感じなのだが。
十数分経った頃、俺たちが頼んだ注文の品が運ばれてきた。
「よかったです。あの男がちゃんとオーダーを伝えていたのか不安でしたが、注文の品が来て安心しました」
「ある意味、待っている間ドキドキしていましたものね」
「念の為に、変なものが入っていないか。ワタシが調べましょう」
ミレニアが自分の料理に異物が混入していないかを調べる。
「ワタシの料理には特に変なものは入っていませんね。多分大丈夫でしょう」
「ミレニアが言うのなら、多分大丈夫でしょうね」
「ですが、念のために気をつけながら食べた方がいいかもしれませんね」
セリアの言葉に、俺たちは頷いた。
気をつけながら食べていたが、蓋を開ければ異物は混入されておらず、普通に美味しかった。
「美味しかったですね。カリンさん」
「そうですわね。クリームパスタもペペロンチーノも逸品でしたわ」
「さて、そろそろ支払いを済ませるとするか」
カップの中に入っている紅茶を飲み干し、俺は席を立とうとする。
「お待ちください。お客さま」
椅子から立ち上がると、オーダーを取りにきた男が声をかけてくる。
その瞬間、セリアたちも警戒した。
「そんなに警戒しないでください。先ほどは少々ふざけすぎたと反省をしております」
男は苦笑いを浮かべると頭を下げた。
「こういうのはインパクトが大事ですからね。印象に残るように僕なりに考えたのですよ」
「前置きはいいです。私たちにいったい何の用なのですか」
「それは――」
「装備品を売りにきたのだろう」
俺が代わりに答えると彼は驚く。目を大きく見開き、空いた口が塞がっていなかった。
「どうして僕の目的がわかったのですか?」
「俺は未来を予知する力があるからな。ある程度のことはわかる」
本当は原作での予備知識があるからなんだけど。
「そうだったのですか。それは凄い能力ですね」
男はニコッと笑みを浮かべるが、内心は焦りまくっているだろう。
俺はこいつの目的を知っている。未来を予知する能力があると言い、彼が装備を売りにきたことをピタリと当てたのだ。
牽制されてやつは諦めることになるだろう。
「まぁ、とりあえず売り物を見せてくれ。話はそれからだ」
「い、いいのですか!」
商品を見せてもらうと言うと、男は驚きと喜びが入り混じったような顔をした。
原作では、この男から装備を買うことでざまぁフラグは成立してしまう。回避するのであれば、買わないのが正しい選択だ。
だけどやつの売る装備品は特殊なもので、これが第三者の手に渡れば、大惨事を引き起こす可能性が出てくる。
まだざまぁを回避することは可能だ。なら、この男から装備品を買い、誰にも迷惑のかからないところで処分するのが一番だ。
「テーブルの上にある食器は片付けます。少々お待ちください」
テーブルの上に置いてあった空の食器を男が片付けて調理場の方に持って行くと、今度は大きな皮袋を持ってくる。
袋の縁からは収まりきれない剣などがはみ出ていた。
男は皮袋から剣を取り出すと、テーブルの上に置く。
原作では、細かい描写はなかったが、とりあえず調べてみるか。
俺は適当に剣を取ると、鞘から少しだけ刀身を出して直ぐに閉じる。
こいつだな。原作では一本しか出ていないが、念のためにほかも調べてみるか。
テーブルの上に置かれた剣を一つずつ調べる。すると合計三本の剣が危ないものだった。
「この三本の剣を貰おう。いくらだ」
「こんなにたくさん買っていただけるのであれば、特別にお安くしましょう。全部で十五万ギルでどうでしょうか」
「分かった。カリン、支払いを頼む」
「わかりました」
カリンが魔剣の代金を払うと男はニコッと笑みを浮かべ、テーブルに置かれた剣を回収すると俺たちから離れた。
「アスラン、剣を三本も買ってどうするの?」
「これから三刀流で戦うのですか?」
「いや、これはちょっとした人助けだ」
俺の言葉に二人は首を傾げる。
「とりあえずは料理の代金を支払ってこの店から出よう」
仲間たちに店から出ることを言うと、カリンが支払いを済ませて俺たちは店から出た。
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