第三章 第五話 エルフ性奴隷計画
現れた階段を降りて俺たちは地下に向かう。
地下は牢獄となっているが、牢屋の中には誰一人捕らえられている者はいなかった。
「牢に誰もいない! 同胞はいったいどこに!」
「クレアさん、落ち着いて。捕らえられたエルフはこの先にいる」
原作では、エルフたちはこの先にある隠し扉に捕らえられていることになっている。だけど正直に言って、個人的にはこの先に行きたくないし、セリアを連れて行きたくはない。
もし原作どおりなら、隠し扉の中に入った瞬間、ルドルフ伯爵が下半身を曝け出している。
はっきり言って、AV以外で勃起している男の股間なんか見たくない。
この先に進みたくない気持ちもあるが、先に進まなければならない。
ここは覚悟を決めるしかないな。
俺は妙な緊張感に包まれるも、意を決して奥へと進む。
「お兄様、この先は壁ですよ」
「確かに行き止まりに見えるかもしれないが、実は魔法で壁に見えているだけだ」
壁に手を添えようとすると、俺の手は壁の中に入った。
「ほらな」
「本当です。私はまったく気付いていなかったのに。さすがお兄様です」
「この先に同胞がいるのですね」
「ああ」
俺たちは壁の中をすり抜け、先に進む。
通路を歩くと、奥に扉があるのが見えた。
「この奥に捕らえられたエルフたちがいる。そしてルドルフ伯爵もいるはずだ。前もって言っておくが、これから見る光景を目の当たりにしても、自分を見失うなよ」
警告をすると、二人は無言で頷く。
俺も覚悟を決め、思いっきり扉を開けた。
「誰だ貴様は! どうしてここの隠し部屋を知っている!」
部屋に入るなり、男が叫ぶ。
茶髪の髪に口髭は横長に伸ばして左右を上に上げ、顎の中央部分の髭だけを伸ばす、インペリアルと呼ばれる髭をしている。
間違いない。ルドルフ伯爵だ。
彼は服を着ており、まだ下半身を露出していなかった。
部屋の中にあった牢屋をチラリと見る。
クレアさんの仲間たちが捕まっていた。
「ルドルフ伯爵! 同胞を返していただきます!」
「くっ、エルフの差金か。これからエルフを性奴隷として調教しようとしていたときに!」
ルドルフ伯爵は歯を食い縛った。
「この部屋と秘密を知られたからには、お前たちを生かしておくわけにはいかない! ここで倒してくれる!」
ルドルフ伯爵は剣を抜くと俺に斬りかかろうする。
まったく、相手の力量に気づかないで突っ込んでくるなんて愚策にもほどがある。
「一瞬で終わらせる。ショック!」
「ガハッ!」
体内の神経を活性化させることで、心臓に戻る血液量が減少したルドルフ伯爵は、意識を失しなって床に倒れた。
これでよし、それにしても呆気なかったな。
まぁ、ザコ戦のイベントのようなものだし、こんなものだろう。
逃げないようにする物がないか周辺を見渡すと、机の上にロープが置かれているのを見つけた。
ちょうどいい。こいつを使って、ルドルフ伯爵を拘束するか。
「お兄様危ない!」
机の上に置かれてあった縄を掴んだ瞬間、危険を知らせるセリアの声が耳に入る。
直ぐに振り返ると、伯爵が剣を振り上げていた。
ウソだろう。いくらなんでもルドルフ伯爵程度の人間が、俺の魔法を受けて直ぐに立ち上がるなんて有り得ない。
直ぐに防御魔法を使わなければ。
そう思った瞬間、ルドルフ伯爵は予想外の行動を起こす。
彼は自分の胸に剣を突き刺し、自ら命を絶った。
自殺をしただと?
どうして自ら命を絶つ必要があった。何か知られてはいけないことがあったのか。
伯爵に近づいた瞬間、彼の握っていた剣が独りでに動き出した。
『キキキキキ!』
この奇妙な声はまさかミミック!
『キキキキキ』
ルドルフ伯爵が使っていた剣が魔物だったことに驚いていると、魔物は急いでこの場から離れて行く。
「待て!」
俺は通路に逃げ出したミミックを追いかけるも、隠し通路の間にあった壁をすり抜けたところで魔物を見失ってしまった。
逃げ足の速いやつだ。ルドルフ伯爵が持っていたことを考えても、やっぱり魔族と何らかの関係性があったと思った方がいいだろう。
引き返してセリアたちのところに戻ると、クレアさんが牢の鍵を開けて捕らえられていたエルフを出していた。
「クレア様、ありがとうございます」
「なんとお礼を言ったらいいのやら」
「いいえ、ここまでこられたのはこちらのアスランさんのお陰です。礼を言うのでしたら彼に」
彼女たちが助かったのは俺の功績だとクレアさんが言うと、捉えられていた女性エルフたちは目を輝かせる。
「アスラン様、ありがとうございます」
「伯爵を一瞬で倒す姿を目の前で見ました。お強いのですね」
美人なエルフたちから礼を言われるのは何だか悪くないな。彼女たちの笑顔を見ると、助けに来て良かったと思う。
「お兄様、ルドルフ伯爵の遺体はどうしますか?」
「流石にこのままにしておく訳にもいかないし、連れて返って埋葬をしよう。認識阻害の魔法を使えば、バレることはない。伯爵は行方不明になったとなれば、色々と問題が起きるかもしれないが、今の俺たちには関係がないからな」
「さすがお兄様です。女の敵であってもそのまま放置しないできちんと埋葬をするその優しさを、私も見習わないといけないですね。私の場合だったら、そのまま放置してネズミの餌にしていました」
セリアの言葉を聞いて、頭の中でネズミに食べられている伯爵の姿を思い浮かべてみる。
中々グロいな。
俺はルドルフ伯爵の亡骸を持ち上げた。
「とにかく今はこの屋敷から脱出しよう。長居は禁物だからな」
「わかりました」
「皆さん、アスラン様の指示に従います。絶対に勝手な行動は取らないように」
「「「はい」」」
うーん。何だか引率の先生の気分だな。
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