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第三章 第三話 野盗の頭は魔族

「お願いします。同胞を助けるために力を貸してください」


 エルフのクレアさんが俺に頭を下げる。


 まぁ、元々から主人公サイドの行動を取るつもりだったから断るつもりはなかったけど、改めて頭を下げられると、本当に断り辛い雰囲気になるな。


「頭を上げてくれ。俺は話を聞いたときからルドルフ伯爵を倒すことを決めていた。お願いされなくとも、伯爵邸に向かっていたさ」


 俺の言葉を聞いたクレアさんが頭を上げると、彼女は顔を綻ばせた。


「ありがとうございます。私も一緒に伯爵邸に向かいますので」


「とにかく、この森の中に居続けるのは危険だ。ここにいるエルフは馬車で安全な場所まで送り届けよう。カリン、ミレニアのところまで案内してやってくれ。そして俺に代わって事情を話すんだ」


「わかりましたわ」


「お兄様、私はお兄様について行きます。優秀な魔法使いのバックアップは必要になるかと思いますので」


 セリアの魔法はいざと言う時には役に立つ。万が一クレアさんと分断されたときのことを考えると、彼女も一緒にいた方がいいだろうな。


「ああ、頼んだ」


「何かがこちらに向かっています」


 クレアさんが何かが近づいていると言い、俺は彼女たちの前に立つ。すると森の奥の方から大柄な男がゆっくりとこちらに向かって歩いていた。


「中々戻って来ないと思ったら、邪魔者がいたのか。それにしてもこいつらを倒してしまうとはな。中々やるじゃないか」


 あの大男の口振りからして、どうやら野盗の頭のようだな。でもあの男、普通の人間とはどこか違うような気がする。


 まずは敵の正体から探るところから始めた方が良さそうだ。


 俺は脳内でイメージを膨らませる。人の目は、物質が電磁波を吸収した波長を色として見る。


 野盗の頭に対して電磁波の吸収、散乱が生じないようにさせ、俺にだけ透けて見えるようにする。こんなものだな。


「パースペクティブ」


 魔法を唱えると、野盗の頭の内部を見ることができた。


 男の内部には灰色の肌に黒い眼球が特徴の魔族がいた。


 どうやら人間に擬態していたわけか。それなら音に敏感なエルフがやられるのも頷ける。


「お前魔族だな。人間に擬態していても俺には分かる」


「ほう、まさかこの俺の正体を見破るとはな。なら、わざわざ薄汚い人間の姿でいる意味がない」


 野盗の頭がパチンと指を鳴らすと、男は黒い霧に包まれる。そしてその霧が晴れると中から魔族が姿を見せた。


「カリン、早くエルフたちを避難させてくれ」


「ええ、皆さんこっちですわ」


 カリンがクレアさんを除いたエルフたちを馬車がある方に連れて行く。


 これで少しは安心して戦えるな。


 魔族との戦いはこれで二回目だが、やつの背中には翼が生えていない。つまり、あのダンジョンで出会った魔族よりも弱いということになる。


 今の俺なら楽勝で倒せるはずだ。


「セリア、クレアさん。あの魔族は俺一人で倒す。だから手を出さないでくれ」


「分かりました。お兄様」


「本当に大丈夫ですか? 相手は魔族なんですよ」


「クレアさん、安心してください。お兄様は強いです。あんな魔族、あくびをしながらでも倒しますよ」


 セリアの言葉が癇に障ったのか、魔族の男の額には青筋が浮き出ていた。


「舐めやがって! 人間如きが魔族に勝てると思うなよ! 俺の自慢の怪力でお前の頭を握り潰してくれる!」


 魔族の男がデカイ図体で俺に迫ってきた。


 なるほど、あの男は力が自慢のようだ。それなら、その力を弱めたらどんな反応をするのだろうな。


 さて、魔法のイメージを膨らませるとするか。筋肉の元となる筋タンパク質の分解が、筋タンパク質の合成を上回せる。それにより筋肉の量を減少。


 すると、全身の筋力低下が発生し、攻撃力、防御力、素早さが著しく低くなる。


 こんなものだな。


「サルコペニア」


 これでよし、今の魔法であの魔族は弱体化した。


 まずはどれくらい能力が低下したのかを見させてもらう。


「食らえ!」


 魔族が俺に向かって拳を放つが、腕の瞬発力がない。


 筋肉が激減したことで、攻撃にキレがなくなっている。


 これなら、わざわざ魔法を使わなくても容易に躱すことができる。


 身体を九十度回転させて敵の攻撃を避けると、魔族の背後に立つ。


「俺の攻撃が躱された!」


 攻撃に関してはイメージどおりに弱体化している。今度は防御の方を確認してみるか。


 魔族が振り返るよりも早く、俺は男の背中に拳を叩き込む。


「ガハッ!」


 俺の攻撃が当たった直後、魔族は吹き飛ばされて地面に転がる。


「ウソだろう。この俺が人間如きにここまで翻弄されるなんて」


「悪いが俺は羽付きを倒したことがある。あいつよりも階級の低い魔族が、俺に敵うなんてことがあるわけがないだろう」


「くそう。こうなったら奥の手だ。狂化!」


 魔族が叫ぶと、やつの筋肉が倍に膨れ上がる。


 あの魔族、バーサークモードを使いやがったか。


 魔族にはピンチに陥ったときに秘められた力を解放することができる。この魔族の秘められた力はバーサーク。


 肉体を強化する代わりに理性を失う。


 次に理性が戻るのは、暴れ疲れてからだ。


「グヘヘ、これでお前は終わりだ。全員ぶっ殺す」


「ぶっ殺すとは随分物騒なことを言うな。倒されるのはお前の方だって言うのに」


「いきがっていられるのも今の内だ! 一瞬にしてお前の頭蓋骨を砕いてやるよ!」


 狂化状態の魔族が地を蹴って俺との距離を縮めてくる。


 なるほど、これが本来のこいつのスピードってわけか。そこそこ早いじゃないか。


 だけど狂化してこの程度と言うことは、サルコペニアという弱体化の呪文はかなり強いな。


「こいつで終わりだ!」


 魔族が腕を伸ばす。


 宣言どおりに俺の頭を狙っているな。バカ正直なやつめ、だけどお陰で攻撃の軌道が見えて簡単に避けることができる。


 体勢を低くして敵の攻撃を避けると右手を上げた。


 今が攻撃のチャンス! 脳内でイメージだ!


 瞬間的に神経による運動制御の抑制を外し、自分の筋肉の限界に近い力を発揮させる。


「エンハンスドボディー!」


 肉体強化の呪文を唱え、脳のリミッターが外れた状態で狂化状態の魔族の顔面を殴った。


 俺のアッパーを食らった魔族は上空に吹き飛ばされ、数秒後に重力に引っ張られると地面に落下した。


 地面に激突した魔族は肉体が耐えきれなかったようだ。血が地面に広がり、やつが死んだことを物語っていた。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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