プロ野球選手との淡い恋91
何でもない顔をして部屋を出ると、そよはリビングの椅子にエプロンを外して座って待っていた。
「待たせてごめんね。さあ、食べよう」
「はい」
向かい合わせに座り、頂きます。と、手を合わせる。
光田が箸を運ぶたび、口に運ぶたび、そよは祈るような視線で口元を見つめる。
あんまり必死に見つめるものだから、光田は笑いだした。
「そよちゃん、どれもとっても美味しいよ」
「本当ですか?」
「本当。そよちゃんが作ったのは、みんな美味しいし、嬉しい」
光田はそう言って、どんどん平らげてくれた。
「ごちそうさまでした」
光田が手を合わせる。
すっかりキレイに食べつくしてくれた皿が並ぶ。
そよは思わず「ありがとうございます」と言葉が漏れた。
「僕の方がありがとうです。来てくれて、ご飯まで作ってくれて、ありがとう」
「とんでもないです。こんなにちゃんと食べて下さって、私がありがとうです」
「また、お願いします」
そう言って微笑む光田に、そよは目の前がクラクラする。
またお願いします、なんて。
最低から最高までをシュミレーションした中でも、最上級の答えじゃないですか!
脳内パニックを起こしながらも、悟られないようにそよは答えた。
「こんなのでよければ、いつでも。少しずつ、美味しくなるようにがんばります」
そよはすぐに顔が赤くなるし、表情に出る。
今も耳まで赤くさせながら目が空を泳いでいて、光田は笑い出した。
分かりやすいところが安心出来て、そこがいいと思う。
腹を探りあう関係がすごく疲れることを、菜々との付き合いで学んだからだ。
「がんばらなくて大丈夫です。そよちゃんの料理、好きです」
また、そよは顔を赤らめた。
やはり可愛いと光田は思った。
台所でスポンジに洗剤をつけて洗い物を始めた、そよの脇に立つ。
「すすぐ係やります」
手を挙げた光田に、今度はそよが笑い出す。
「では、宜しくお願いします」
二人で並んで洗い物を終わらせていく。
食器乾燥機のスイッチを入れながら「久しびりだから動くかな」と、大きな体を折り曲げながら首を捻る姿が可愛いとそよは思った。




